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「ひぃっ…」
危機一髪…顔の上スレスレを刀が通っていく
「こんな狭い所でいつまでも逃げられない…!」
「大人しく死んでよ。一瞬で首落としてあげるから」
「拒否!!!まだ死ねない!!」
全力で部屋のあちこちを逃げ回って刀を避ける。幸いな事に相手も元々疲労しているのか刀を降る速度が遅く、私でも避けられた。
でも
「っ〜〜〜!!!!!」
まずい、まずいまずいまずい。足をやられた。
「クソっ…!足が動かない…!」
かなりざっくりと傷が入ったのか血が溢れ出している。傷口は燃えるように熱くてドクドクとしている。痛い。初めての痛みだ。
「やっと捕まえた」
「このまま死ぬ…のか…」
ゆっくりとゆらゆら刀が近付いてくる。そして私の首の横へ
まだ死にたくない。だってまだこの本丸を救えてない。あの子達にちゃんと主らしく振る舞えてない。
あぁ嫌だなぁ…
そんな時だった
「随分とお楽しみのようだな」
「鶴丸…さん?」
「…っなんでお前がここにいるの。鶴丸国永」
「いやぁ彼女が寝ている間に罠でも仕込んでやろうかと思ってな」
「何しようとしてるんですか…」
「冗談だ。ちゃんと君を助けに来たんだ。」
「はは…そりゃありがたい…」
「…邪魔しないでよ。しっかり結界も張ってたのに」
「すまんな。大事な仲間の大将首をそう易々と渡す訳にはいかない。それに弁当も食えなくなるしな」
空気が張りつめてピリピリとしている。鳥肌が止まらない。そして出血も酷い。
「あ、あの…なんで…こんな事するんです」
「…」
「やっぱりここの皆を取り戻す為ですか…それとも…」
「…違う。」
「じゃあなんで…」
「…かったの」
「な、なんて?」
「羨ましかったの!!!!」
そう言うと突然涙をボロボロと流しながら本体であろう刀を落としてしまった
「へ…?」
「ずっと見てたの母屋の方からアンタ達の事!!ずっと楽しそうに笑ってるし出陣の時だって…!!俺達は帰ってきてもおかえりも何も無くて役立たずだなんだって罵られたのに…!!!」
「…」
「愛されてるあいつらが羨ましかった…!!だからいっそアンタを殺してまた元通りにしてやろうって…」
「…なら貴方もここに来てみなよ…」
「は…?何言ってんの…俺はアンタのこと殺そうとしてたんだよ…?」
「お互い様…私たち人間も貴方を傷付けてしまった。だからこれでおあいこ…です…」
「あっおい!!君!!大丈夫か!!」
ここはどこだろうか
目をゆっくりぱちぱちさせていると横から声がした。
「大将!!目が覚めたのか良かった!」
「や…げん…ですか」
「いっ…」
「動くな大将。左足の太ももにかなり深く傷ができてる」
「私…どうしてここに…昨日は確か自室に…」
「大将は俺達が眠ってた居間の縁側で倒れてたんだ。」
「そっか…」
「なぁ昨日何があったんだ」
真剣で嘘をつかせないとでも言うような目でこちらを見てくる
「…皆には話さないでもらえますか。」
「…あぁ」
「昨日、夜寝ようとしてるところを襲われてしまったんです。」
「…なぜ俺達は気付けなかったんだ…」
「気負わないでください。あの時結界が張られていたんです。気配を消す結界を」
「…なるほど」
「それから一対一で閉じ込められて殺されかけてその時足をやられたんです」
「…同じ刀剣男士か?」
「多分。でもあの刀剣男士さんにもしっかり理由はあったし、きっと頭が混乱していたんです。」
「…はぁ…とりあえず分かった。詳しい話は後でしよう。今は大将の傷の手当てを先にするぞ」
「分かりました。ありがとうございます。…そういえば皆は?」
「あいつら全員夜中に大将を見つけてから治療する為に寝てなくてさっき寝たばかりだ」
「迷惑をかけましたね、本当に色々ありがとうございます薬研。貴方もしっかり寝てくださいね」
「本当だぜ。もうこんな事してくれるなよ大将」
「気を付けます」
「それじゃ俺もお言葉に甘えて仮眠をしてくる。また何かあれば叫んで起こしてくれ」
「大丈夫ですよ、ゆっくり寝てくださいね」
「あぁ」
そう言うと薬研は少しフラっとしながら部屋から出ていった。本当にずっと付きっきりだったのだろう。無理をさせてしまったな
「傷は大丈夫か?」
「うわっ鶴丸さん!?」
「はは驚かせてすまんな」
「なんでここに…離れには来れないんじゃなかったんですか?」
「その件はもう大丈夫だ。それにその足じゃあしばらく弁当も持ってこれないだろ?」
「そんな理由でここに来たんですか…」
「あと君の護衛でもしてやろうと思ってな」
「それはありがたいですけど…」
まるで護衛がついでかのようだな…
「ところで鶴丸さん今何時です」
「んー?そうだな…えーとちょうど正午だ」
「もうそんな時間ですか…お腹すいたな」
「何か軽い物でも作ろうか?」
「料理できるんですか?」
「確かにここの本丸ではほとんど飯を食ってこなかったが多少の知識はある。」
「…」
「心配なら一緒に厨に着いてきてもらってもいいぜ」
「どうやって行けばいいんですか…足使えないのに」
「姫抱きでもしてやろう」
「うわわわやめてくださいよぉぉ」
結局お姫様抱っこで厨にまで運ばれてしまった。
「椅子にいくつか座布団を乗せてるから負担は少ないはずだ」
「…私結構体重あると思ってたんですけどあんな軽々しくやるって腕どうなってるんですか」
「?別に君くらい余裕だが」
「…神様ってよく分からないな」
少しばかりため息をつきながらあちこちを見てまわり料理の準備を進める鶴丸さんを眺める。
「さて…米でも炊こうか」
「米袋なら下の棚です」
「これか?」
「はい」
米袋の紐を解いて2合分の米を釜に入れる。
「よーし」
料理をほとんどしたことない割には手際がいい。
順調に米をといで、あっという間に米が炊かれ始めた。
「随分手馴れてますね。料理してたんですか?」
「んー光坊が主に食事を作るのは見ていたからな。それでかもしれん」
「光坊…燭台切の事ですか?」
「あぁ」
「なんだかその呼び方可愛いですね」
「だろ?」
他愛のない会話もしつつもしっかり鶴丸さんは料理を進めていた
「良い香り…味噌汁ですか?」
「正解。光坊程ではないが作ってみようと思ってな」
「十分美味しそうです…お腹減る…」
「1時間あればできるからもう少し待ってろ」
「あーー新手の拷問だーーー」
「お腹すいたぁ〜」
足の傷が開くといけないので念の為自室で待つようにとまた姫抱きで自室に連れてこられて待機中だ
「おーいできたぜ」
「おっ」
「ばばーん!鶴さん特製おにぎりと味噌汁、それに鮭の塩焼きだ」
「なんか馬鹿デカくないですかそのおにぎり 」
「ふっふっふ驚いたか?」
「驚きましたわ〜〜」
「凄い棒読みじゃないか今の」
「気のせいですよ」
「…まぁいい。とりあえず食べてみてくれ」
「いただきます」
味噌汁から良い香りがする。1口飲んでみると
「あっこの味知ってる…燭台切の味噌汁だ…」
優しくて他にはないと言えるような温かみ…口に入れた瞬間から幸せに溢れるような…そんな味
「どうだ美味いだろ?」
「とっても美味しいです…」
ほとんど料理した事ない者がこんな美味いご飯を作れるわけないだろうと思いつつも味噌汁を啜っていく
「さて…このおにぎり食べてみようかな…」
あまりにもでかい。コンビニとかたまーに💣おにぎりとかあるけど、これは度が違う。倍でかい。
「がぶっと1口食べてみてくれ!自信作だぜ」
「い、いただきます!」
思いっきりがぶっとかぶりつくように白米を食べてみる
「あっ美味」
程よい塩加減、ほかほかの白米、全てがマッチしている
「もう少し食べ進めてくれないか?」
「あぁはい」
言われるままパクパクと食べてみると…
「ん?これ…」
出てきたのは鮭のようだ。
「まだある…」
鮭の他に梅やらたらこやら昆布と色々な具材が入っていた
「よく入れたな…」
「どうだ驚いただろ!」
「凄いですね…これは驚いた」
まさに爆弾だな…と思いながらおにぎりをパクパクと食べていく
「たまにはこういう驚きもいいだろう、明日もまた作ってやろうか?」
「大食い選手じゃないんですからこんなに食べれませんよ」
「はっはっは冗談さ」
そんな風に笑っていた時
「…おい君。少し下がれるか」
「え、どうしたんですか」
「どうやら客人が来たらしい」
そう言われて縁側の方を見ると…
「…貴方は昨日の…」
「…」
「…何しに来たんだ?ちょうど昼餉を頂いている所なんだが」
「…謝りに来たんだ。」
「…謝りに…?」
「…俺、昨日何も考えずに自分の感情だけで行動しちゃってアンタを傷付けて…だから…ちゃんと謝りに来たの」
「…ふむ」
「許されるとは思ってない。でも…」
「大丈夫ですよ」
「…え」
「別に気にしてないですよ」
「な、何言って」
「だから昨日の事は全然気にしてないって言ってるんです」
「は、はぁ?」
「まずちゃんとそこまで反省できて謝ろうと思えた事が素晴らしいことなんです。だから全部水に流してしまいましょう?」
「でも…」
「流しきれないって言うなら…少しこっちに来てくれませんか」
「おい流石にそれはやめといた方が…」
「仲直りする為です。」
「…」
恐る恐る、靴を脱いで部屋に上がってくる。まるで虐待に怯える子供のようだ
「もっとこっちに来てください」
「で、でも…」
「ほらほら」
警戒しつつも私が座っている布団の横に来て静かに座った
「まずはちゃんと名前から教えてくれませんか」
「俺…俺は…加州清光……」
「いい名前じゃないですか。」
「加州清光さん。謝罪の代わりに」
「…っ」
「ご飯食べましょう」
「へ?」
訳の分からないようなそんな顔を浮かべて硬直してしまう加州清光さん
「鶴丸さんがこんなおっきいおにぎり作っちゃって、だから食べるの手伝ってほしいんです。お願い、できますか?」
「え、う、うん。」
「ほらほらもっとこっち来て、そこじゃこぼしちゃいますよ」
「す、すぐ行くから!」
そう言いながらおにぎりを包んでいたラップを少しちぎり、小さいおにぎりを握っていく
「鶴丸さんも食べてくださいよー」
「はいはい俺も食べるさ」
「…」
眉間に皺を寄せながらもほんのひと口白米を口に運ぶ彼
「…!」
「どうです?美味しいでしょ」
「おい…しい…」
そのまま無言でパクパクとおにぎりを食べ進めていってしまった
「おかわり要ります?」
「…うん」
「食欲はあるようで何より。」
「ねぇ」
「なんです?」
「あの…傷…大丈夫なの」
「あぁ大丈夫ですよ。まだズキズキしてるけど薬研が頑張って縫ってくれたらしくて傷はほっとけば塞がると思います」
「…ほんとにごめんなさい。あんな事しなければ…」
「泣かないでください。綺麗なお顔が台無しですよ」
そっと目を擦ろうとする手を握る。その時ふと爪に目がいった
「この爪、自分でやったんですか?」
「え、あっ待って見ないで…ボロボロで可愛くないから…」
「そんな事ありませんよ。凄く綺麗に塗ってたんでしょう?少し崩れてはいますがよく分かります。」
「…そんなジロジロ見るものじゃないよ」
恥ずかしいのかなんなのか下に俯いている
「…ねぇ手入れとか…してみませんか」
「…手入れ?」
「貴方が良ければですけどね」
「…分かった。手入れ、してほしい」
「よしそれじゃ鶴丸さん腕貸してください」
「刀使いが荒いな君。というか傷開いても知らないぞ」
「せっかく来てくれてるんだから今やるしかないでしょ」
「はいはい。腕をあげてくれ」
「またお姫様抱っこですか」
「それしかないだろ」
「うわーーー」
「ほらここだろ手入れ部屋」
「手入れ部屋まで把握してるんですか貴方」
「まぁ見てたからな」
「…ここが手入れ部屋…」
「さぁ入って入って」
「あっ鶴丸さんも手入れします?」
「するほど怪我はないが」
「確か服の汚れも手入れで治ったはずですから」
「分かった分かった。お言葉に甘えよう」
「式神さん本日もよろしくお願いします。あ、これ今日はお礼ちゃんと持ってきたんですよ〜…」
2人を手入れ部屋に突っ込んで式神さんにお礼を渡していく
「…ねぇあの人いつもあぁなの」
「そうだなぁ。いつもあんな感じじゃないのか」
「…ほんと何考えてるのか分かんない」
「よしおまたせ。鶴丸さんの方は式神さんが手入れしてくれるから加州清光さんは私が手入れするよ」
手入れ中はそれぞれの部屋が仕切りで見れなくなっている。余計に狭くなるので少し嫌だな
「それじゃあ刀身、出してもらっていいですか?」
「…」
なんだか出すのを渋っているというか怯えているのだろうか
「…私は貴方達を傷付けたり折ったりなんてしませんよ。」
「…っ」
「約束します。」
「分かった…」
そう言うとゆっくり。手を震わせながら鞘から刀身を出してくれた。
「ありがとうございます。それでは始めていきますね」
優しく、少しの刺激すら与えないように手袋をして刀身に触れる。
何度か霊力を込めてみても何故か他の刀剣よりも手入れの速度が遅く感じる。
「大丈夫。大丈夫です。貴方の傷は全部この私が治してみせます。」
「…どうしてここまでやろうとするの」
「怪我人をほっとけるわけないでしょう。それに…」
「それに…?」
「貴方みたいな可愛くて素敵な人の身体をいつまでも血で汚す訳にはいきません!!」
「可愛い…?」
「えぇそれはもう可愛いですよ本当に。付喪神ってなんでこんな可愛いんでしょう」
「…そんな褒めてもなんもないよ」
「その顔が見られるだけで私は幸せです」
意外と照れ屋というか純粋なんだろう。少し褒めただけでほんのり頬が赤くなってしまうらしい
「ねぇ…アンタは…こんな俺でも…愛してくれるの」
「何言ってるんですか…」
「…っだよね…やっぱり…」
「全部愛しますよ」
「へ…」
何度目か分からないポカン顔。そんな顔も可愛いじゃないですか
「いいの…?こんな俺でも愛してくれるの…?」
「もちろん」
「でもまた傷付けちゃうかもしれない」
「貴方と仲良くなる為なら何度でもその刃を受け止めましょう」
「戦場で役に立てないかもしれない」
「役に立つというのは戦うことだけではありません。戦が苦手なら屋敷で自分の得意を見つけてみましょう。誰にだって得意不得意はあるものです。」
「こんなにボロボロでもいいの」
「ボロボロだとしてもそれでも愛します」
「ちゃんと…俺の事…可愛がってくれる…?」
「もちろん」
段々と手入れの速度が元通りになっていく。身体に着いていた血の塊や傷がほんのり光りつつ消えていく。
「…じゃあこの手入れが終わったら爪紅。塗り直してほしい」
「わ、私不器用だから上手に出来ないですよ」
「それでもいいから。アンタにやってほしいの」
「えぇ…分かりました…」
気が付けば3時間は経っていたらしい。加州清光さんと鶴丸さんの手入れも終わって居間に来ていた
「綺麗になりましたね」
「うん。ありがと」
「んーやっぱり汚れが無くなるとすっきりするなぁ!」
「そろそろあの子達も起きてくるかな…」
「あぁ後数十分すれば起きてくるだろう」
「んーそれじゃあそれまでにおやつでも作ろうかな……」
時間は大体三時。おやつが食べたくなる時間。
「鶴丸さーん運んでください〜」
「俺を移動手段にするんじゃない」
「俺も手伝うよ」
「おぉ良いのか」
「うん。主の世話くらいしてあげないとね」
「今…主って言いました!?言いましたね!?」
「言った言った。だから早く厨行こうよ」
「やったーーー!!!主認定きたーー!!!」
「あっこら君そんな動いたら落ちるぞ!」