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15. 甘える瞬間
その日、江口と入野は街中でショッピングを楽しんでいた。最初は無理にでも一緒に出かけることにした入野だったが、思いのほか楽しくて、自然と笑顔がこぼれるようになっていた。江口の軽いノリに合わせて歩きながら、ふとした瞬間に二人は楽しげに会話を交わし、まるで昔からの友達のように気楽に過ごしていた。
江口「ほら、あっちに面白そうなカフェがあるよ!」
江口がそう言って、指差した先にカフェの看板が見えた。入野はそのカフェに少し興味を持ちながらも、ちょっとした不安がよぎった。
入野「うーん、どうしようかな…」
入野は少し戸惑って答えたが、すぐに江口が笑顔で肩を軽く叩いてきた。
江口「行こうよ、自由くん。たまにはリラックスしたいだろ?」
江口のその言葉に、入野は少しだけ胸が温かくなるのを感じた。江口は、いつも自分が思っている以上に、気を使ってくれている。
二人はカフェに入り、静かな雰囲気の中でお茶を楽しむことになった。入野は、最初は少し緊張していたが、江口がリラックスした表情を見せるたび、次第に自分も落ち着いてきた。
江口「ね、自由くん。」
突然、江口が真剣な表情で入野を見つめた。入野はその視線に少し驚き、思わず息を呑んだ。
入野「何?」
入野は少し動揺しながら答えた。
江口「自由くん、今日、すごく楽しそうにしてるな。」
江口の言葉に、入野は少し照れくさくなった。普段、江口といるときにはどうしても自分を抑えてしまうことが多かったが、今日は何だか自然に笑顔がこぼれている自分に気づいていた。
入野「そ、そう?」
入野は顔を赤くしながら、少し目をそらした。
江口「うん、なんか、俺も嬉しいよ。」
江口はにっこりと笑って、さらに入野に近づいた。
江口「今日は、自由くんのペースで過ごしていいから、無理しないでね。」
その優しい声に、入野は心の中でじんわりと温かくなる感覚を覚えた。江口の気配りに、どうしても甘えたくなってしまう。
その時、突然入野の頭に一つの衝動が湧いた。江口に頼りたくて、少しだけ甘えたくなった。
入野「江口…」
入野は小さな声で呼びかけながら、恥ずかしそうに江口の肩に頭をちょこんと乗せた。江口は驚いたように目を見開いたが、すぐに優しく微笑んだ。
江口「おいおい、どうしたんだ、急に。」
江口はちょっと照れくさそうに言いながらも、入野の頭をそっと撫でた。
入野「なんか…甘えたくなった。」
入野は素直にそう言い、江口の腕に少し寄りかかるようにした。江口は少し戸惑ったように入野を見ていたが、すぐに優しく言った。
江口「甘えてくれていいんだよ。」
その言葉に、入野は少し驚きながらも、安心感を感じた。江口の温かさに包まれ、普段の自分では見せられないような、少し頼りたい気持ちが溢れてきた。
入野「…ありがと。」
入野はそのまま江口の肩に寄りかかり、少しだけ目を閉じた。江口の温かさが心地よくて、少し眠たくなるような感覚に包まれていった。
江口はそのまま、入野をそっと支えるように優しく腕を回した。
江口「大丈夫だよ、自由くん。俺がついてるから。」
その言葉に、入野は何も言わずに頷いた。江口の腕の中で、少しだけ安心して、甘えることができた自分を感じながら。
時間が経つにつれて、二人の間に流れる空気が、ますます心地よくなっていった。江口は静かに入野の頭を撫で続け、入野もその温かさに包まれて、つかの間の安らぎを感じていた。