1.楠瀬蒼
最近毎日がつまらないと感じる様になった。
生まれが孤児院で、そこから15年間。
孤児院殻外に出た事も無いから、
どんな世界が広がっているのかは知らない。
何時になったら外に出られるのかな?
出られないのなら、一層俺が
逃げだしちゃえばいいんだ。
ガシャンッ
夜の12:00、俺は孤児院の柵を飛び越えた。飛び越えた時にはもう俺がいない事に気付かれていただろうね。
でも、今は逃げる事だけに集中した。
兎に角逃げて、逃げて、逃げて……
誰もいない通り道を全力で駆け抜けて行った。
こんなに走ったのは何時振りだっけ?
とても苦しい、腹が痛い、足が重い……
「はぁ、……はぁ、……」
此処迄来れば誰も追ってこない……、
見つかりもしない。
「………疲れた…、」
さて、コレからどうしようかな……
ノープランで抜け出して来ちゃった…。
雨もしとしと降って来て、体育座りで縮こまる。今は11月、外はとても寒い殻体が冷える。
2 .温もり
『そこの君〜……こんな夜遅くに何しとるん?』突然声を掛けられて心臓が跳ね上がる
「ぇ……?だ、誰……?」俺は恐る恐る顔を上げると、其の声の主は紙袋を被った不思議な男の子だった。
『あぁ、ごめんなぁ……俺は楠瀬鈴やで』
其の男の子は楠瀬鈴と名乗って静かに傘を傾けた。
「……鈴、……俺は蒼…」俺も名乗った。
けど、何されるのか分からない。
こんな夜遅くに俺みたいな子供が薄気味悪い道を彷徨っているんだもの。
誘拐されても可笑しくない。
すると、其の男の子は手を伸ばし始める。
俺は反射的に目を瞑ってしまう。
鈴『あ、ちゃうねん。そんな薄着やと寒いやろ?俺のジャンバーを着な』其の男の子は俺にジャンバーを着せた。とても温かい。
「あ、ありがとう……」
鈴『ごめんな、怖がらせてもうて……俺は何もするつもりは無い殻怖がらんといてな』
「……!、そっか……」
鈴『蒼はこんな夜遅くに何でこんな所におったん?』鈴の表情は紙袋で良く見えないが、優しく微笑んでいるように感じた。
「……えっと、孤児院を抜け出して……」
俺は俯いて正直に話した、この人になら話しても良いかもしれないと思ったから。
鈴『そうなんやね……、なら俺の家に来るか?』
「へ?……」俺は少し不安になった。
鈴『大丈夫、何もしないから』鈴は俺の頭を撫でて俺を立たせた。
「わ、分かった………」
鈴『嗚呼、………そう云えば……蒼は上の苗字は無いん?』
「うん、まぁ……」
鈴『なら、今日殻楠瀬蒼や。』
鈴が急にそう告げた。
「楠瀬……蒼?…」
鈴『せやで』鈴は紙袋を取った。
俺は、其の姿を見て凍り付いた。
だって、首殻上が花なんだもの。
紫色の小さな花が鈴の中で咲いていた。
鈴『俺、昔殻こんな姿やから……皆に気味悪がられるんや』鈴は静かにそう云った。
「……そう、なんだ…」
鈴『俺も元孤児院にいたんやで?』
俺は鈴の云う言葉に衝撃が走った。
元……孤児院………、
鈴『だから、心配せんといてや』
鈴は優しく俺を抱き締めた。
自然と温もりを感じられた。
「……っ」
鈴『でも流石にこの姿は怖いよな、……
俺は人が多い所に行ったら必ず人間に化ける様にしとるんやで』
鈴はそう云って人間に化けた。
「……!、」
鈴の人間姿は暗闇でも輝いている様に見えた
鈴の顔は整っていて、茶髪も綺麗に輝いて見える。
まるで小さな星のようにキラキラと光っていた。
鈴『此処にいても寒い殻そろそろ俺の家に行こうか。コレからは一人にさせへんからな。』
鈴は人間姿の儘俺を傘の中に入れて優しく背中を摩ってくれた。
「う、うん……」
向かっている途中、何気無い会話が飛び交った。
鈴『………、今日も寒いなぁ…』
「そう、だね…………」
鈴『あ、そう云えば……蒼の猫耳綺麗やなぁ……』鈴はそう云うと微笑んでくれた。
「え……あ、ありがとう……」
鈴『ふはは、緊張せんでもいいのに……
其れと、俺は蒼と同じ位の歳なんや殻
安心せぇよ』
「へ……?そうなの?」
鈴『嗚呼、俺は15歳や』
「お、俺も……!」
まさか同い年だったとは思って無くて、
少し声が大きくなった。
鈴『ふははっ、宜しゅうな!』鈴は俺を見て優しく撫でた。
「うんっ……」
其して鈴の家に到着し、お風呂に入らせて貰った。
「………温かい…」俺はシャワーを浴びてお湯に浸かった。
一時はどうなるかと思ったけど……
良かった……。
親切な人に引き取られた、のかな?……
でもそうだよね……。
鈴はとても優しくて、お兄ちゃんみたい…
其してお湯から出て鈴のパジャマを借りた。
丁度良い……、さっき鈴と横に並んだ時、
身長が同じ位だった殻そうだよね。
なんか……お兄ちゃんのおさがりを着てるみたい…………嬉しい、な…
「出たよ、鈴……!」俺は寝室で音楽を聴いていた鈴に声を掛けた。
鈴『お、出たか!……パジャマも丁度良いみたいで良かったなぁ!!めっちゃ似合っとるで!!!』鈴は微笑んで俺の頭をわしゃわしゃと撫で回した。
「えへへっ……」もう、怖くない……かも…
鈴『じゃあそろそろ寝るか?』
「ううんっ、未だ起きてたい……眠くない殻………。駄目かな?」正直余り眠くなった。
鈴『おっ、ええで!』鈴はそう云って笑った
「ありがとう!……鈴は音楽好きなの?」
何となく、一緒に暮らして行くなら鈴の事を
もっと知りたいと思った。
鈴『ん、せやなぁ』鈴は考える仕草をして口を開いた。
鈴『音楽を聴くと気分が良くなったりする殻好きやなぁ……ほら、悲しい時は落ち着かせたりとか……怒りたい時は静かな曲を聴いたりとか。 』鈴は楽しそうに語った。
俺も………音楽が好きだ。
さっき迄は音楽についてどうも思ってなかったけど、鈴が好きと云うなら好きって思える様になった。
「俺も好き!」俺は鈴に優しく笑った。
鈴『!!……、蒼……ちゃんと笑ってくれたね…………』鈴は嬉しそうに笑って、俺の頬を突いた。
「え、そんなに笑ってなかった?」
鈴『うん、……一寸引き攣ってたよ』
鈴は困り顔で笑った。
「そっか………、ありがとう鈴」
鈴『え、なんや急に?』
「俺、………ちゃんと笑った事が無かったのかもしれない」
鈴『……!!、そっか…… 』鈴は優しく俺を抱き締めた。
さっきよりも凄く温かい……
自然と涙が溢れて来た。
鈴『……よしよし…』鈴は俺を抱き締めた儘あやす様に優しく背中を摩った。
夜、俺と鈴は同じベッドで寝た。
鈴は電気を消して数秒で眠った。
「……寝るのが早いな………」
鈴の寝顔を見てクスッと笑ってしまった。
さっきの真面目で優しい彼の表情殻、
こんな間抜けな顔になるなんて。
「………、ふふっ… 」
鈴は寝相を変えて布団を蹴飛ばした。
俺はその布団を鈴の体に被せて元の状態に戻した。
其して俺は鈴に抱き着いた。
鈴の体はとても温かく、 鈴の体温が冷たい俺を温める様だった。
3 .ずっといっしょ
「ん、ふぁ〜……」俺は寝惚けながら起き上がった。寝室の時計は7時を過ぎていて、窓の外は真っ青な空が広がっていた。
其してキッチンの方殻良い匂いが漂って来た
俺はその匂いにつられてキッチンに顔を出した。
鈴『ん、おはよーさん!!』鈴は満面な笑みで俺を見た。
「おはよ……」寝惚けた目を擦りながら鈴を見た。
鈴『ふはは、寝惚け面はええなぁ〜!!
ンじゃ、顔洗って来ぃや』
「……っうん!」俺は洗面に行って顔を洗った
其して鏡の目の前にいる自分を見つめてみた。
俺、こんな顔してたんだ……。
昨日もお風呂に入ってる時に鏡を見たが……
改めて見ると面白いな…。
……孤児院には鏡がなかった殻、
自分の顔なんて知らなかった。
そう考えていたらキッチンの方殻
鈴の声が響いた。
鈴『ご飯出来たで〜ッ!!!!』元気過ぎだよ鈴……、うぐっ…耳が痛くなる…………
でも、嬉しいな……。
「お待たせ、鈴!」
鈴『おう!おかえり〜!!!』鈴は目玉焼きトーストとコンスープ、りんごジュースを用意していた。
「わぁっ!美味しそう!!」俺は目を輝かせて微笑んだ。
鈴『おかわりは沢山あるからなー!!!』
「うんっ!!!」
其してご飯を食べ終わると鈴は洗い物をしていた。
「………、鈴…」俺は猫耳を少し垂らして鈴を見つめた。
鈴『ん〜?』
鈴は俺を見て勘づいたのか、
俺を抱っこして膝に座らせた。
「え……!!?ちょ、鈴っ……俺は子供じゃないよっ………」
鈴『ふははっ!!、俺らは子供やで〜!!!』
鈴は俺を撫で回した。
「そ、そうだけど〜っ……」
俺は頬を赤くして笑ってしまう。
なんだか……兄弟みたいだ。
孤児院生活よりも
凄く凄くすごぉ〜くッ楽しい………!!!
ずっといっしょにいたい………
其してあっという間に一日が終わり、
夜になる。
昨日と同じ様に俺と鈴は同じベッドに眠った。眠って殻数分後、鈴は静かに起き上がって静かに俺を撫でた。
其して何処か外出するのかコートを着て外に出て行ってしまった。
「………、鈴?…」俺は寝たフリをしていた。
だって………今日は少し顔色が悪かった殻。
…………、もしかしたら気の所為かも知れない………でも、こんなに夜遅くに出るのは可笑しい。
そう云えば………昨日の夜もこんな時間だった様な……、
俺は気になって鈴を尾行した。
でも、其れは間違ってた。
……、尾行したのが……間違えだった。
鈴は路地裏で黒服の若い男性をナイフで切り付けてはそのナイフを遠くに投げ捨てた。
其して鈴の手には血が着いていた。
「す、ず………?」
俺は、自然と彼の名前を呼んでいた。
鈴『へ………?』鈴は俺に気付いて目を丸くした。
鈴『な、なんで………何で蒼が此処に……
ぁ、ああ……ごめ、……ごめんな…………こんなの見てもうたら………怖い、よな……』
鈴の情緒が乱れ始めて、声が震えていた。
「す、鈴………」俺は何て声を掛けたら良いか分からず、鈴の名前を呼ぶ事しか出来なかった。
…………、鈴……昨日もこんな事…してたのかな………?
「ねぇ鈴?」俺は優しく鈴を見た。
鈴『……え?』鈴は汗を掻きながら俺を不安定な目線で見た。
「俺ね、………鈴が優しい人なのは分かってるんだ。こんな事も、したくてやってる訳じゃないって…………分かるんだ。未だ鈴と出会って殻そんなに経って無いけど、鈴が俺を助けた様に………俺も鈴を助けたい。鈴の辛い気持ちと苦しい気持ちを………俺に分けてよ…」俺は鈴を抱き締めた。
其したら鈴は、涙を溢れ出して幼い子供の様に泣き出した。
「……鈴と俺は……ずっといっしょなんでしょ?」
鈴『うんっ………』
其れ殻俺がポートマフィアに所属したのは
数日後であった。
𝙿𝚛𝚘𝚏𝚒𝚕𝚎໒꒱
楠瀬蒼
15歳(現在16歳)
好きな物 鈴
嫌いな物 孤児院
異能力 不明
其の他 猫耳が生えている
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