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朝。
「……眠い」
俺、寺西拓人は大きくあくびをしながら、学校へ向かっていた。
今日からこの学校に転校する。
正直、楽しみというより――
「……めんどくさ」
友達できるかな、とか。
教室どこだろ、とか。
考えることが多すぎる。
そんなことを考えながら歩いていると、学校が見えてきた。
「……ん?」
校門の前。
やけに人が多い。
しかも――
「え、なにあれ」
女子、女子、女子。
校門の入り口付近に、ものすごい数の女子が集まっている。
「今日なんかあるのかな……」
俺は少し離れたところから、その様子を眺める。
すると――
「きゃーーーー!!」
「来た!!」
「風磨くん!!」
「勝利くん、おはよー!!」
「将生くん!!」
「聡くんー!!」
「周杜くん!!」
「……うるさ」
思わず小さく呟く。
何事かと思っていると、人混みの向こうから5人の男子が歩いてきた。
一人目は、少し怖そうな雰囲気の男。
その隣には、綺麗な顔をした男。
さらにその後ろには、爽やかな男と、優しそうな男。
そして最後に、やたら元気そうな男。
「……なんだ、あれ」
俺には関係ない。
そう思って、その横を通り過ぎようとした。
「きゃーー!!こっち見た!!」
「今日もかっこいい!!」
「風磨くん!!」
「……」
俺は思わず振り返る。
「毎朝これやってんの……?」
ちょっと呆れながら、ため息をつく。
そして俺は、さっさと校舎へ向かった。
――職員室に行って、転校の手続きをしないと。
「……職員室、どこだ」
校舎に入って、しばらく歩く。
右。
左。
階段を上がって――
「……あれ?」
なんか見覚えがない。
「…………」
嫌な予感がする。
「……迷った?」
まさか。
転校初日に。
職員室を探して。
迷子。
「……最悪」
俺が廊下で立ち尽くしていると――
「……何してんの?」
後ろから声がした。
「え?」
振り返る。
そこにいたのは――
さっき校門で女子に囲まれていた男。
「……あ」
確か、みんなが「風磨くん」って呼んでた。
「お前、転校生?」
「……そうだけど」
「やっぱり」
男は俺をじっと見る。
「職員室探してんの?」
「なんで分かったの」
「その顔」
「どんな顔だよ」
「迷子の顔」
「……」
初対面でそれ言う?
「……迷子じゃないし」
「じゃあどこ行くんだよ」
「職員室」
「それを迷子って言うんだよ」
「……うるさ」
「は?」
「いや、なんでもない」
男は少し笑った。
「俺、菊池風磨」
「……寺西拓人」
「知ってる」
「え?」
「さっき先生から聞いた」
「あぁ……」
「てら」
「……え?」
「てらって呼ぶわ」
「急だな」
「いいだろ?」
「……まぁ、別に」
風磨は歩き出す。
「ほら、てら。職員室こっち」
「……ありがと」
俺もその後ろをついていく。
しばらく歩いていると、
「てらってさ」
「ん?」
「さっき校門にいたよな?」
「いたけど」
「俺ら見て、なんか思わなかった?」
「……」
俺は少し考える。
「……女子、すごいなって」
「そこ?」
「だってすごかったじゃん」
「まぁ……いつものことだけど」
「いつものことなんだ」
「うん」
「……大変だな」
「他人事かよ笑」
「だって俺には関係ないし」
「まぁ、そうだけど」
風磨が少し笑う。
そして――
「……でも」
「?」
風磨が俺を見る。
「てらも、そのうち巻き込まれるかもな」
「……何に?」
「さぁ?」
「なんだよそれ」
「着いた」
そう言って、風磨が職員室の前で止まる。
「ここ」
「おぉ……」
やっと着いた。
「風磨、ありがと」
「ん」
風磨が手を振る。
「じゃ、またあとでな。てら」
「……また?」
「同じクラスかもしれないだろ?」
「そうなの?」
「知らねぇけど」
「適当だな笑」
風磨は笑いながら廊下を歩いていく。
俺はその背中を見送ってから、職員室のドアを見る。
「……今日、ちゃんとやっていけるかな」
そんなことを呟いて――
まだ俺は知らなかった。
この日を境に、
あの5人との距離が、少しずつ近づいていくことを。
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22
#ヒロアカ