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第10話「今日は……デレてやる」


風邪がほとんど治った次の日。

紗愛は朝から、なんか変だった。


鏡の前で髪を整えて、

服を選んで、

落ち着かない。


「……昨日……樹にあんなに甘えたし……」


思い出すだけで顔が熱くなる。


いつもなら絶対こんな恥ずかしいこと言わないけど、

今日は違った。


ピンポーン。


玄関を開けると、優しい笑顔の樹が立っていた。


「よ。具合どうだ?」


「……ん。

……治った。お前のおかげ」


樹の目がほんの少し見開く。


「珍しいな。

紗愛からそんな素直なセリフ」


「……べ、別に……言いたくて言ってんじゃねぇし……

……でも……ありがとう……樹」


声は小さい。

でも確かにデレている。


樹はふっと笑い、紗愛の頭を撫でた。


「可愛いな。今日の紗愛」


「……樹……」


紗愛は樹の服の裾をそっとつまんだ。


「……あのさ……」


「ん?」


「……ぎゅー……して……」


樹の息が止まる。


「……紗愛、お前……」


紗愛は真っ赤な耳で言う。


「……昨日も……抱きしめてくれたし……

……もうちょっと……甘えたい……」


樹はゆっくり紗愛を胸に引き寄せた。


「……可愛すぎるだろ。どうしたんだよ今日」


「……やだ……言わせんな……

……樹に……さみしい思いさせたし……

……ちゃんと……言いてぇんだよ……」


樹の腕にぎゅっと抱きつく紗愛。

胸に顔うずめて、完全にデレデレ。


「……樹……」


「ん?」


「……好き……」


小さすぎる声。

でも、確かに。


樹の心臓が跳ねた。


「紗愛……俺も好きだよ」


紗愛がさらに腕を回し、

身体を密着させる。


「……今日は……離れんなよ……?」


「離れない。

お前が離せって言っても離れねぇ」


紗愛は嬉しそうに微笑む。


「……バカ……

……ずっと一緒にいろよ……?」


樹は優しく紗愛の頬に触れた。


「もちろん」


2人はそのまま、

ソファで抱き合ってしばらく動かなかった。


紗愛のデレは、

樹にしか見せない特別なもの。


だから樹は

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