テラーノベル
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若井滉斗(攻め)
大森元貴(受け)
※誤字脱字
藤澤「……で、どうなったの」
スタジオのソファに寝転びながら、藤澤涼架がぼんやり聞いた。
その声に、ペンを持つ手が一瞬だけ止まる。
大森元貴は、
少しだけ間を置いてから答えた。
元貴「……付き合うことにした」
空気が、静かに落ちる。
一番分かりやすく止まったのは、ギターの音だった。
若井「へえ」
短い声。
それだけ。
視線を向けなくても分かる。
若井滉斗が、何も気にしていないふりをしていること。
藤澤「いいじゃん元貴〜
おめでと〜」
藤澤がふにゃっと笑う。
その軽さに、少しだけ救われる。
元貴「……ありがと」
けど。
元貴(……なんで)
一番聞きたくないやつの反応ばかり、気になってしまう。
元貴「若井は?」
つい、名前を呼ぶ。
ギターの弦を軽く弾きながら、若井は肩をすくめた。
若井「いや、いいと思うよ」
あっさり。
昨日と同じ温度。
若井「ちゃんとしてるやつなんだろ?」
元貴「……まあ」
若井「なら問題ないじゃん」
その言葉は、正しい。
正しすぎるくらいに。
元貴「そっか」
それ以上、何も言えなかった。
それから。
距離は、分かりやすく変わった。
「元貴、今日終わったら飯行こうよ」
恋人からのメッセージ。
元貴「うん、行く」
そのやり取りを、少し離れたところで若井が見ている。
……気がするだけかもしれない。
でも、前みたいに気軽に声をかけてこなくなった。
若井「今日さ、この後どうする?」
何気なく聞いていたあの時間は、もうない。
代わりにあるのは、
若井「じゃ、俺先帰るわ」
短い言葉と、背中。
元貴「……あ、うん」
引き止める理由なんてない。
自分で選んだ結果だから。
なのに。
元貴(なんで、こんな)
胸の奥が、ずっとざわついている。
「最近さ、若井くんとあんまり話してなくない?」
帰り道、隣を歩く恋人が言う。
元貴「……そう?」
「なんか、距離あるっていうか」
その言葉に、思わず苦笑する。
元貴「気のせいだよ」
嘘だ。
気のせいなんかじゃない。
一番分かってるのは、自分だ。
「そっかならいいけど」
恋人は気にした様子もなく、笑った。
その笑顔は優しい。
ちゃんと、安心できる。
それなのに。
元貴(……違う)
心のどこかが、ずっと引っかかっている。
雨が降り始めたのは、夜だった。
スタジオを出た瞬間、ぽつりと頬に落ちる。
元貴「あー、降ってきた」
傘、持ってない。
まあいいか、すぐ止むだろうと歩き出したとき。
若井「……元貴」
聞き慣れた声。
振り返ると、少しだけ濡れた若井滉斗が立っていた。
元貴「若井……?なんで戻って」
若井「忘れ物」
短く答えて、少しだけ視線を逸らす。
沈黙。
雨音だけが、二人の間を埋める。
若井「……送るよ」
元貴「え?」
若井「傘あるし」
そう言って、若井は一本の傘を差し出した。
昔から変わらない、自然な優しさ。
元貴「……ありがと」
隣に入る。
距離が近い。
肩が触れそな距離。
それだけで、心臓がうるさくなる。
元貴(……なんで今さら)
歩き出す。
無言のまま。
雨音と足音だけが重なる。
若井「……元貴さ」
ぽつりと、若井が口を開いた。
若井「その人と、うまくいってんの?」
何気ない質問。
のはずなのに。
元貴「……まあ、それなりに」
言葉を選んでしまう。
本当は、どうなのか分からないくせに。
若井「そっか」
また、それだけ。
それだけで終わるはずだった。
なのに。
元貴「……若井はさ」
気づけば、口が動いていた。
元貴「ほんとに、それでよかったの?」
足が止まる。
雨が強くなる。
若井「何が?」
低い声。
元貴「……“そいつにしとけ”って言ったじゃん」
あの言葉。
何度も頭の中で繰り返した。
元貴「だから、そうしただけ」
静かに言う。
震えそうになるのを抑えながら。
元貴「若井がそう言ったから」
沈黙。
次の瞬間。
若井「……は?」
初めて聞く、感情の滲んだ声だった。
若井「なんでそうなんだよ」
若井の手が、強く傘を握る。
若井「なんで、他のやつに
渡そうとすんだよ!」
声が、夜に響く。
心臓が跳ねる。
元貴「……は?」
今度は、自分の番だった。
元貴「だって若井が……!」
言い返そうとした瞬間、
若井「だってお前が、
そう言ったんだろ!」
被せるように叫ばれる。
雨音よりも強く。
元貴「いいって言ったじゃん!」
若井「お前が“いい”って言ったから、俺は……!」
言葉がぶつかる。
抑えていたものが、一気に溢れる。
元貴「じゃあなんで止めなかったんだよ!」
若井「……は?」
元貴「なんで、あの時……!」
息が詰まる。
全部、言ってしまいそうになる。
言ったら終わるのに。
戻れなくなるのに。
元貴「……っ」
それでも。
もう止まらない。
元貴「なんで、
何も言わなかったんだよ……!」
雨に紛れて、声が震える。
若井は、一瞬だけ目を見開いた。
その顔で、確信する。
元貴(……ああ)
同じだ。
若井「……お前こそ」
低く、押し殺した声。
若井「なんで気づかねえんだよ」
一歩、近づく。
傘が揺れる。
雨が肩を濡らす。
若井「ずっと、
好きだったに決まってんだろ」
時間が、止まる。
音が消える。
心臓の音だけが、うるさい。
元貴「……っ、は」
笑いそうになる。
泣きそうになる。
元貴「遅いよ……」
絞り出す声。
元貴「俺だって……」
視界が滲む。
元貴「ずっと好きだった」
言ってしまった。
もう戻れない。
でも。
元貴「……最悪」
若井が、小さ く笑う。
若井「ほんと最悪だな、俺ら」
元貴「……ほんとに」
ぐしゃぐしゃのまま、笑う。
雨の中で。
傘もまともに差せないまま。
それでも。
距離は、もう曖昧じゃなかった。
触れそうで触れない、なんてものじゃない。
ちゃんと、届く場所にいる。
最近本当に寝不足、バイト行きたくない……
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コメント
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♡♡♡ちゃん♥みぎちくだよ♥