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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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アリスの妄想はどんどん膨らむ



この母屋を走り回って、キャッキャッはしゃぐ子供たちの声




口では嫌々ながら目尻が下がりっぱなしの、ナオおじさんきっと子供達に勉強を教えるのはアキおじさんね・・・




おじさん達と子供達が、リビングで遊んでいる光景を想像するだけでも、心が温かくなる




クリスマスには北斗さんがサンタクロースになるわね、子供の日は大きなこいのぼりをみんなであげて・・




成宮家の幸せな大所帯だ




そして夜になり、みんながベッドに入った後で私と北斗さんは抜け出し、またあの薔薇園で一つに結ばれるの・・・




アリスは夕べこの身が沸騰しそうな愛の営みの後、さんざん彼に酷使された後の、子宮の切ない疼きを感じながら



ぐったりと幸せに、彼の腕の中に抱かれた時を思い出した




うとうとする意識の中、そっと自分のお腹を触っていた





今のがそう?

今度こそ根づいた?




そして貞子の子を思い出す、貞子はアリスに授乳も見せてくれた




「こんなに可愛い赤ちゃん見たことないでしょう?」





貞子が幸せそうに言う




産まれた瞬間赤ん坊は親に魔法をかけると言う、自分を可愛いと思ってもらえないと、捨てられる危険があるからだそうだ



貞子の赤ん坊はたっぷりお乳を飲んだので眠りに落ちた



貞子が寝ながら乳首に吸いついている子の、口の横から指を入れて空気を入れる



赤ん坊は「スポンッ」と音を立てて乳首を離し、口を少し開けたまま、満足そうに気を失ったように眠っている




アリスは畏敬の声をあげ、貞子の子をじっと見つめていた、本当にいつまでも何時間でも、見つめていられそうだった





新生児をこの腕に抱いた途端、愛する男性がいる女なら当たり前の反応を示した




アリスの中の女の本能が飢えや渇きを上回、る肉体的渇望を愛する人との子が欲しいという気持ちを覚えさせた




今一番アリスが望んでいることは、北斗の子供の母親になることだった




「お福さん!私!立派な牧場主の北斗さんの妻になって見せるわ!」





アリスがガッツポーズをしてやる気を出した




「その調子ですよ!お嬢様!」




お福が後ろで拍手をする






::.*゜:.




その日の夕方、アリスはお福のお味噌汁を啜りながら驚いていた




今までアリスは成宮の三兄弟達が、こんなにも料理にガッつく所も、こんなにしつこいぐらい誰かの料理を、褒め倒している所も見たことがなかった




明は目の色を変えて、回鍋肉をおかずに白米を三杯おかわりし、直哉はお酒の肴のアジのたたきを絶賛していた。お福にかかれば、魚を三枚におろすなんて朝飯前だ



自炊のプロの北斗でさえ、テーブルに並べられたお福の料理に期待に、目を輝かせている、やはり人間にとって食事は大切なのだ



「おいしぃよぉ~~~~おふくさぁ~ん」




明が口いっぱいに頬張って、お福に賞賛の言葉を贈る




「ありがとうございます、アキ坊ちゃま 」




ニッコリ笑ってお福が、大きな湯呑みでお茶を啜る




アリスは今まで伊藤家で、一流の使用人に囲まれて暮らしていたが、お福の家事能力のプロフェッショナルな姿勢は、改めて凄いと思った




よく考えたら・・・・・私は恵まれていたのかもね・・・こんなお福さんの美味しいごはんを当たり前のように、毎日食べていたのですもの・・・




北斗さん達はおふくろさんの味を知らずに、生きて来たのですものね、北斗さんもいつもレシピサイトを見ているし・・・




世間知らずでお嬢様と言われても仕方がないわ




それでも北斗はお福さんの年季の入った、完璧な料理よりもアリスの作った、お粗末なドロドロの肉じゃがを積極的に食べてくれた





なんて優しい人、ああ・・私の北斗さん、また今日も彼に恋しちゃった、今夜はサービスしなくちゃ・・・(はぁと)





ポッとアリスが頬を染める




わははは「こりゃぁ~~~酒が進むなぁ~」




直哉が上機嫌でドバドバ焼酎をグラスに入れていると、スッとそのグラスをお福に取り上げられた





「え~?何すんだよぉ~~お福さぁ~ん 」




直哉が情けない声を出す、お福が腰に手を当て冷ややかな目で直哉を見る




「アルコールは「狂い水」です、麻薬と同じで過ぎるとそれに依存しないと生きていけなくなります。私がお見受けしましたところ、直哉坊ちゃまはアル中一歩手前です!これ以上の飲酒はお控えくださいませ!」




「なんだよ!偉そうに!」




カッとなった直哉がガタンッと席を立って、ドカドカ外に出て行ってしまった




「・・・すいません・・・旦那様」



残されたお福が北斗にすまなそうに詫びる




「いいんですよ・・お福さん、良く言ってくれました 」




北斗がお福に困った顔で微笑みかける




「アイツは一歩手前どころか、完全なアル中です」




「俺とナオはそもそも性格がまったく違うんだ、俺は典型的な長男タイプで、ナオのことを心配してすぐに説教を垂れる、それがナオは気に入らなくて腹が立つらしい」





北斗がシャワーホースで自分が育てた薔薇に、まんべんなく水を撒いて言う




「ナオ君が腹を立てた時・・・北斗さんはどうするの?」




アリスがスコップで花壇の土を掘ると、小さなダンゴムシが出てきてキャッと悲鳴をあげる




「いくら説教してもアイツを変えることはできない、酒をやめさせるのも無理だ、結局は当人次第だからな・・・・ナオを一度だけ脅したことがあるよ、いつまでもそんなことをしていたら、そのうち首に縄をつけてでもアルコール依存症の、リハビリ施設へ連れて行くぞってね 」




アリスが心配そうな顔で北斗を見る




「セレブが入居するような、スパ付きの豪華なヤツじゃない、フェンスには脱出防止の電流が流れていて、ルームメイトは巨漢の臭いヤツで、便器は異臭を放ってベッドの横に設置してる所だってね」




「そうなると思う?つまり・・・いつかナオ君を説得して、専門家に診せなくてはいけない日が来そう?」




北斗は首を振った




「いや・・・そこまでにはならないだろうな、なんとかやっていくと思う、大酒を飲むヤツは何か鬱憤を溜めているんだ、アイツは自分の人生に怒っているんだよ、どうしようもない家庭に生まれてしまったからな」




アリスがそっと両手で北斗の頬を挟み、こちらを向かせる




「・・・でも・・・あなたはそうならなかったわ・・・人生に腹を立てているわけではないのでしょう?」




北斗は微笑んで見せ、アリスの手を取って手のひらにキスをした




「幸い・・・俺には逃げ場があったからな・・・離れに監禁されてたって言ってただろ?ある意味良かったのかもしれない、ナオは幼い頃から母屋で父親に母が虐められる所を見せられていたから 」




北斗は遠くを見る目になり、しばらく黙り込んだ




彼がどうしてそんな話をするのか、アリスにはわかる気がした、彼はアリスに自分達兄弟を理解してもらいたいのだ




だから決して愉快ではない、思い出話をあえてしているのだろう



本来の彼はこんな人間で申し訳ないとか、こうなったのは誰のせいだとか言う人ではない




だけどどういう家庭環境によって、自分達が形成されたのか、それをアリスに伝えたいと思っている




「あれは・・・俺が高校の時だったよ 」




北斗がまた口を開いた




「ナオが珍しく離れに来たんだ、助けてくれと言うもんだから、俺は禁止されているけど母屋にナオと一緒に行った、すると継母はソファで酔いつぶれていて、父親も酔って家の前に駐車した車の中で、死んでやるとナイフを振り回してわめいていた、夜になって腹が減ったけど食べ物は何もなくて、俺は初めてナオを連れてジンの所へ行って、何か食わせてやってくれと頼んだんだ」




食べ物が家になくて、友達の家に食べさせてくれって?・・・・アリスはショックを受けていた、そんな過酷な体験は自分はしたことがない




「俺はそれまでナオは、母屋で親に大切に育てられていると思ってたんだ・・・喋れない俺とはまったく違う扱いを親から受けていると思ってた・・・でも・・・それからは・・・ 」




彼がこちらを向き気が付くとアリスを、背後から抱きしめていた、すっぽり温かい彼の胸に包まれて、二人は温室から見える星空を眺めた




「ナオはしょっちゅう俺の離れに来るようになった。何となく今までは交流はなかったんだけど、俺はナオに頼られていると感じた、だからアイツが来る時には食い物を用意してやっていた。いつも腹を空かせていたから・・・アイツは」




北斗は腹を空かせている小さな直哉を思い出していた、その頃は北斗はジンの実家の農家を手伝うアルバイトをしていたため、少しは余裕があった




実際自分自身の自立のために必死にやっていた時の、思いがけない出来事だった




「あの日から・・・・ずっと俺はナオに頼られていると思っているんだ・・」




北斗は現実に立ち戻り、思った以上に兄弟の事を話してしまって、アリスがどう思っているのか顔色を伺っている




でもそんなアリスは少し直哉が羨ましかった




北斗さんはたとえナオ君が、これから先どうなっても、最後まで彼は面倒を見る気なのね・・・




二人は手を繋いでガゼボのベッドへ向かった、アリスがゴロンとベッドに寝転ぶ




「わかったわ・・・・私からもお福さんがナオ君にあまり、煩いことを言わないようにお願いしておくわね」




北斗が笑った




「いや・・・それはどんどん言ってもらってもかまわないさ、お福さんさえ良ければな、実際俺もアイツの体が心配は心配だから」




北斗がそう言うとベッドに座ってじっと考え事を仕出した



アリスは北斗の脇からズボッと胸の中に滑り込んだ




「ごろにゃーん♪」



「うん?何だ?アリスにゃんこ」




上目遣いで北斗を見て、猫のようにお尻を高くあげる、北斗がアリスのお尻をよしよしと撫でている





「ここにはナオ君のお話をしに来たんですか?」



クスッ「いいえ」




二人は唇を重ねた




「愛し合うためですよ」








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