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冬華が転校してきて、数日が経った。新しい学校、新しいクラス。最初はみんなと距離を取っていたけど、だんだんと馴染んでいく自分がいる。とはいえ、まだ心の中ではどこかしっくり来ない部分があった。
昼休み。いつものように一人で教室の隅でぼーっとしていると、隣の席から声がかかる。
「冬華、食堂行こうや。」
振り向くと、宮侑がニヤッと笑って立っていた。昼休みの食堂に、いつも通り人が集まっている。
「行かんでもええけど。」
冬華は軽く肩をすくめながら答える。その反応に、宮侑は逆に興味を持ったらしい。
「え?ほんまに?せっかく誘ってるんやけど。」
冬華は少し考えてから、立ち上がった。
「…行くわ。」
「よっしゃ!」
宮侑は嬉しそうに笑いながら先に歩き出す。冬華もそれに続いて、少しだけ歩幅を合わせる。食堂に着くと、クラスメートたちが楽しそうに話している。宮侑がその中に入ると、みんなが「冬華も一緒に!」と声をかけてきた。
「おー、冬華来たんか。座って座って!」
どこか少し気を使ってくれているような声。冬華は一瞬ためらったけど、椅子に座った。
「転校生、どんな感じなん?」
「東京から来たんやろ?こっちの学校はどう?」
「なんか好きな食べ物とかあるん?」
周りから次々と質問が飛んでくる。それに対して冬華は、無理に答えなくてもいいだろうと思いながらも、ポツポツと答えていく。
「…特にない。」
「えー、それつまんない!」
クラスメートたちは笑いながらも、冬華の返事には少し驚いている様子だった。しかし、宮侑は全く気にした様子もなく、にっこりと笑って言った。
「ほんま、意地っ張りやな。でも、それも面白い。」
冬華はその言葉に少しだけ顔を上げて、宮侑を見た。宮侑の笑顔は、どこか優しさを感じさせた。その時、冬華の心の中で少しだけ、違う感情が芽生えた気がした。
その後、昼休みが終わり、放課後。冬華は一人で帰ろうとしたが、また宮侑が声をかけてきた。
「冬華、ちょっとスタバ行かん?」
冬華は驚いた顔をして、少し考えた。昼休みに一緒にいた他のクラスメートたちのことも気になったが、宮侑が声をかけてきたことに、少し気になる自分がいた。
「…行くか。」
その返事を宮侑は嬉しそうに聞いて、すぐに歩き出した。冬華もその後ろに続き、二人で放課後の街を歩いた。スタバに着くと、店内の落ち着いた雰囲気に、冬華は少しだけリラックスした気持ちになった。
「ここ、いいな。」
宮侑が言った。その声がどこか優しくて、冬華は思わず頷いた。二人はカウンターで注文を済ませ、席についた。
「冬華、さっきの食べ物の話やけど、本当に何もないんか?」
冬華は少し戸惑ったが、答えた。
「…食べ物にこだわりはない。」
宮侑は少し驚いた顔をしたが、すぐに笑った。
「なんか、それも面白いな。」
その言葉に、冬華はなんとなく笑ってしまった。やっぱり宮侑は、普通じゃない。なんだか、嫌な感じはしない。
「…お前、ほんまに面白いな。」
宮侑は冗談めかして言ったが、なんとなくその言葉が温かく感じた。冬華は少しだけ顔を赤らめ、目をそらした。
「…別に。」
その後、しばらく二人で話していた。冬華は初めて、誰かとこんなに自然に会話している自分に驚いていた。宮侑の軽いノリには少し戸惑うこともあったけれど、それでもどこか居心地のいい空気が流れている気がした。
外は少し肌寒くなってきた頃、スタバを出て歩きながら、宮侑がふと思い出したように言った。
「冬華、ほんまに素直じゃないな。」
「別に、素直なほうが良くない?」
冬華は少し冷たく言ったが、宮侑は笑って答えた。
「その反応が、ほんまに素直やけどな。」
冬華はその言葉を聞いて、一瞬だけ立ち止まった。そして、少しだけ顔を上げて宮侑を見た。
「…どういう意味?」
宮侑はにやりと笑って言った。
「なんでもないけど、お前、ほんまに意地っ張りやなって思うだけ。」
その言葉に、冬華は少しだけ笑った。やっぱり、この人と一緒にいると、なんだか不思議な気持ちになる。