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す~ぷ@(・∀・)アハハハ
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飛越
書き直してみました。短い
「げほっ、ごほっ」
秒針が支配する静かな部屋に耳障りな咳の音が響く。
「あ゛ー」
「喉いたい…」
最悪だ。
今日は久方ぶりのデートだと言うのに
朝から喉は痛いわ吐き気がするわで熱を測れば、38度なんて本当に最悪だ!
今頃富山を迎えに行って水族館に向かっているはずなのに、大人しく寝ているしかないのがはがやしい。
ぼんやりとした頭で彼女にリスケメールを送る。
送信された文面はあまりに簡潔だった。
ぐつぐつ沸騰するようなこの感覚は きっと病だけが原因ではない。
自身を蝕む熱を外に出してしまおうとゆっくり目を瞑った。
送って間もなく軽快な音とともに返信が来た。
【デートのことは気にしないで、ゆっくり休んでね】
文字から溢れる優しさが疲弊した体にじんわりと染みる。
熱のせいか目頭に浮かんだ涙はそのままに、ありがとうと感謝の言葉を打ち込んだ。
しばらくぼうっとメールを眺めていたが がんがんと痛む頭に抗う理由はなく、スマホをそこらへ放って目を閉じた。
さっさと治して、直接言葉を交わそう。
そう決意し迫ってくる睡魔に身を委ねた。
「ふぁ…」
次に目が覚めたのは、メールを返してから何時間も経った後で 時計の針は十二時を回ろうとしていた。
「あー、あー」
喉の調子は朝に比べ回復しており、体は倦怠感は消えていないものの起き上がれるほどになっていた。
枕元のスマホを覗くと一時間ほど前に「いまから向かう」と長野からメッセージが届いていた。
富山に連絡したとき、同じく彼にヘルプを頼んでいたのだ。
助かる、と返信するとふらっと視界が暗転する。
そうしてベットに倒れこむと 再び体は休息を取り始めた。
トタトタという軽い足音を耳が拾い、その衝動で体が覚醒する。
長野かな…?いや、合鍵は彼に渡していないはずだけど……
ぐるぐる回る思考は控えめなノック音に中断された。
「お邪魔します」
「え!?とや」
驚きのあまり叫んでしまったせいで本調子ではない喉が悲鳴を上げた。
「驚かせちゃった、ごめん」
勢いよく咳き込む僕を見て、彼女は慌てて背中をさすってくれた。
「大丈夫、ありがとう。来てくれて嬉しい」
「差し入れ置いていくつもりだったんだけど…」
「折角だから顔みたいな、って」
嬉しさでどうにかなってしまいそうだ。
「本当にうれしい…これで元気になった」
「ふふ、ほんとう?」
「水と薬、それから梨持ってきたよ。風邪っぽいね」
「そうだね。ありがとう」
ナイトテーブルにお盆を置く富山の横顔を眺める。
マスクを着けていてもわかる整った顔だ。
そうしていると、すっとその美しい顔が近づいた。
「!?」
マスク越しに鼻先がくっつきそうな距離。
「感染るから…」
ドギマギしながら目の前の富山に言った。
「……」
彼女は何も言わない。更に顔を近づけられ、反射的に目を瞑った。
口づけの音が静まり返った部屋に響く。
それと同時におでこに熱が集まるのが分かった。
恐る恐る目を開ける。
「ふふ、口にはまた今度しようね」
マスクを下げた彼女は惚けた顔をしているであろう僕に微笑んでいた。
おでこが気にならないくらいに顔が熱くなる。
「うん…」
早く治して、と言外に伝えられたのに
これではどれだけ経っても熱は下がらない。
「…ずるいひと」
「ふふ」