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エセ関西弁ですが許してください。
口調が違っていても許してください。
誤字脱字は許してください。
今作死ネタです。
苦手な方はバックしてください。
俺の愛する人は病で死んだ。俺はお前に何をしてやれた?
お前の願いを叶えられたか?
お前のことを俺は幸せに出来てたか?
お前と生きられて俺は……
今日は対面会議の日でいつも通り愛しい恋人を起こしに向かう。
「すっちー。起きろ、置いてくぞ。」
「いるまちゃんー。」
「どうした?まだ寝ぼけてんのか?」
「いるまちゃんだぁ。」
「おい、急に抱きつくなや危ないやろ。」
朝からやけに引っ付いてくるなぁと思った。
普段なら恥ずかしがってやらないくせに。
てかこいつ熱くね?
「すち、ちょっといいか?」
「うん?」
「お前熱いけど熱あんじゃねぇの?」
「そうかなぁ。べつに身体に違和感はないよ?」
体温計を渡し熱を計らせるが平熱だった。
「俺の気のせいみたいやった。」
「なら良かったぁ。」
「まぁ何かあれば言えよ?」
「はぁい。」
もうこの時にはあいつの体は病が壊していたんだと後になって知ることになった。
「これくらいかなぁ今日の会議で伝えないといけないのは。」
「そうやな。他なんかあるか?」
「すちくんの様子がおかしいんやけど。」
そう言ったのはすちの左隣に座っていたみことだった。
すちの正面に座ってるなつも顔を覗きこんで話しかけてる。
「いるまくんすっちーになんかしたんやないの?」
「特にはしてねぇよ。そういえば朝も少し調子悪そうやったけど。」
「なら休ませないとじゃん!」
らんが大声を上げたと同時にすちが咳き込み始めた。
「すち大丈夫か?気持ち悪ぃとかは?」
「すちくん血吐いとる!」
「こさめ救急車呼んで!」
すちの身体が傾いたと思ったらそのまま椅子から落ちて倒れた。
急いで傍に駆け寄り声をかけるが返事は返ってこない。
むしろ苦しそうに咳き込みながら血を吐き続けていた。
病院に運ばれ診察結果を聞いた。
あいつだけがどうしてこんな目に合わないといけないんだと神も運命も全てを呪った。
あいつの命があと半年しかないなんて。
「すちに伝える?」
「あいつが最後どう迎えたいかだよな。」
「なら伝えた方がええと思う。」
「そうやな。」
「いるまはどうするの?」
「すちと話して決めてもいいか?」
「構わないよ。なら外でオレらは待ってるね。」
「ありがと。」
「こさめ達はどんな結論を二人が出しても最後まで協力するよ。」
「お前ら二人が幸せに過ごせる結論を出せよ。いるま。」
「あぁ。」
病室に入ると愛しい人と目が合った。
「体調大丈夫か?」
「今は大丈夫そう。」
「ごめんな、気づけなくて。」
「気にしないで俺も伝えられなかったし。」
言わないといけない。
もうお前の人生が短いと。
「すち。人生の最後どう終わらせたい?」
卑怯だな俺。
逃げるなんて。
「いるまちゃん。」
「今は二人きりやからいつも通り呼んで構わねぇよ。」
本当はそう呼んで欲しかった。
「わかった。俺は最後までいるまと一緒にいたいよ。」
「最後までいつも通り過ごしたい。いるまと一緒にご飯食べたりデートしたりお買い物に行ったりしてなにも変わらない日常の中で眠るように終わらせたい。」
「もしそれが近い未来起こるとなったらどうする?」
「どうもしないよ。いるまが嫌なら諦めるけど。」
流石に今の質問で察したらく声を殺して泣き始めた。
「俺もう長くないんだね。」
「俺はお前の最後をきちんと見届けたい。 たとえ今まで通りの生活ができなくなったとしても最後までお前の傍にいたい。」
「いるまが大変になっちゃうよ?」
「それでもええ。入院したところで少ししか生きられる時間が増えねぇなら、お前のしたいこと全部叶えさせてくれ。」
「俺のわがまま聞いてくれてありがとぉ。」
「すちの命が尽きるそのときまで沢山思い出を作ろうな。」
「うん。」
いるまにはあんな事を言ったが俺は少しでも生きられるように入院して欲しい気持ちが強かった。
「なつくんカッコつけたんなら悩まん方がええよ。」
「そうだよ、なっちゃん。あの二人が出した応えをとやかく言うのはよくないよ。」
「わかってるけど、なんですちばっかこんな目に合わないといけねぇんだよ。」
「ようやく幸せになれるんだと思ってたのにね。」
「最後まで俺たちはあの二人を見守ろ?」
「うん。そうだねらんらん。」
病室を出て今後のことを医者に伝えあいつらにも伝えることにした。
暫くは様子見のため入院になるがなるべく早めに退院はさせてくれるらしい。
その間に引越しもしようと決めた。
今の家ではあいつの体力も減ってくだろうからなるべく病院に近いとこに引っ越す。
「またせた。」
「全然大丈夫。それよりすっちー大丈夫そ?」
「咳とかは止まったけど暫くは入院して様子見やって。」
「てことは長期入院させないってこと?」
「最後まで普通の生活を送らせてやりたい。」
「わかった出来る限りオレらも協力する。」
「ありがと。とりあえずあいつが入院してる間に引っ越す。」
「その方がええよな。」
「俺らも手伝うから。」
「ありがとな何から何まで。」
「気にせんでええよ。」
あいつがなるべく長く生きて幸せな時間を沢山作らせてやりたい。
すちが退院してもあんまり生活は変わらなかった。でもそれはほんの2ヶ月だけだった。
病は着実にあいつの体を蝕んでいった。
最初こそ薬が効いていて体調も安定していたが最近は効き目が悪くなるスピードも早くて今日も身体に合わなかったらしく朝からトイレとゲロお友達になっている。
それに長時間立ってるものキツイらしくキッチンに立つ回数も減っていった。
「すち大丈夫やから。とりあえず落ち着け。」
「ごめんなさい。ごめんなさい。せっかく出掛ける約束してたのに。」
「謝らんでええ。1番辛いのはすちなんやから。とりあえず薬飲もうや。飲んでベット行って二人で昼寝する日に今日はしようや。」
「ぅん。」
薬を飲ませ二人で横になる。
「また今度調子いい時に行こうや。」
「ぅん。」
薬を飲んだからか落ち着いたらしく眠そうな顔をしている。
頭を優しく撫でていると安心したのか寝息が聞こえてくる。
終わるその時までにしたいことを10個書かせたが今はまだ2個しか叶えられていない。
本当はもっと叶えてやりたいのに特にないって言われたから無理やり書かせたんだけどな。
てか最後の一つだけ一向に教えてくれないのはなんでだ?
1つ目、家でのんびり映画を観る。
2つ目、遊園地デートをする。
3つ目、メンバー全員でお泊まり会をする。
4つ目、お揃いの洋服かアクセサリーを買う。
5つ目、水族館デートをする。
6つ目、パフェを食べに行く。
7つ目、二人で旅行に行く。
8つ目、映画館デートをする。
9つ目、メンバー全員で旅行に行く。
とりあえず遊園地と水族館は行った。
なるべくあいつの元気なうちに楽しませてやりたかったから。
今日は体の調子がいいらしく朝から鼻歌歌いながら飯を作ってる。
「なんか手伝うぞ。」
「んーん、俺一人で大丈夫。」
「わかった。無理はすんなよ?」
「はーい。」
二人で向かい合って久しぶりにすちの飯を食った。
「次何やりてぇ?」
「天気いいし俺も調子いいからパフェ行きたいかも。」
「わかった。なら片してすぐ行くか。ついでにお揃いのもの買うか。」
「ならはやくいこ!」
「急に元気やん。その前にちゃんと薬飲めよ?」
「大丈夫もう飲んだ!」
片し終わって荷物をまとめて外に出る。
久しぶりに外に出るからなのかずっと笑顔なのがまた可愛い。
「帽子と水、薬持ったか?」
「あるよぉ。」
天気予報では気温が上がると聞いていたが思いのほか涼しいので動きやすかった。
すちの体力も前よりも落ちてきてるので休憩時間を入れながらお揃いのものを探していく。
「いい感じのやつあってよかったな。」
「だねぇ。」
俺とあいつでペアネックレスリングを買った。
スイーツ店に着くと俺は紅茶ですちはパフェを頼む。
だが暫くすると食べるスピードが落ちてくる。
「すち限界なら俺が食うから無理すんな。」
「もう少し頑張ってみる。」
「わかった。」
病が進んで行くに連れてすちの食欲も落ちていき最近は少し食べ過ぎると嘔吐するようになった。
「いるまちゃんもう無理そうだからお願いしてもいい?」
「ここまでよく食べたな。頑張ったなすち。」
「そうかなぁ。」
食べ終わらせ暫く店内で休んでから店を出る頃には天気予報の通り外が暑くなっていた。
「ちょっと暑くなってきたから水分ちゃんと取れよ?」
「いるまちゃんもね。」
何があってもすぐ気づけるようにいつも通り手を繋いで歩く。
なるべく急いで家に向かって歩いていると不意に手が引っ張られ後ろに倒れそうになった。
どうやらすちの限界が来たみたいだ。
「すち大丈夫か?水飲め。」
「ぃらない。」
「飲まねぇと余計体調悪くなるぞ。」
「のみたくない。」
「どこかいたいんか?」
声を出すのも苦しいのか首を横に振って返事を返してくる。
「気持ち悪い?」
「ぅん。」
「薬出すからちょっと手ぇ離してくれるか?」
「ぃゃ。」
「飲んだ方が楽になるぞ?」
「……」
「ほらいい子やから。」
「ぃゃ。」
こんなに駄々をこねたところを見た事がないから内心焦り始める。
「なんで嫌なん?」
「からだささえられない。」
「なら俺に寄っかかってろ。」
すちの前に俺も同じようにしゃがむ。
「ほら手ぇ貸せ。」
俺の手を握っていた手と反対側の手を差し出してきたのでその手をつかみ肩に回す。
傍から見れば抱き合ってるように見えるが今はそんなことを気にしてる場合じゃない。
「薬出すからもう少しの辛抱な。」
薬を出し水と一緒に渡す。
渡すと言ってもストローを刺してるからそのまま吸うだけ。
「落ち着いたか?」
「ぅん。」
暫く木陰で休んでまた歩き出す。
今日は家に帰ったら風呂入らしてすぐ寝かせた方が良さそうだ。
今日は朝から体調が良くないのかずっとベットの住民になってる恋人に話しかける。
機嫌が悪いらしく布団にくるまって返事すら返ってこない。
せめて顔は出してくれると助かるんだけどな。
「飯食えそうか?」
「……」
「ゼリーの方が良さそうやな。」
「……」
「味ついてるの食えそうか?」
「……」
「ない方がええんやな。」
「……」
「なんか欲しいもんあるか?」
「…………。」
「そうやな。」
最近はなるべく二人の時間を増やしていたせいであいつらに会えていなかったから寂しさもあって機嫌が悪いらしい。
少し嫉妬すんなぁ。
「ならお泊まり会やるか?」
「いいの?」
「あいつらなら喜んで来るぞ?」
「ならしたい。」
「連絡してくるからゼリー食って薬飲んで待ってろ。」
「ん。」
discordを起動させるとピンク色のアイコンと赤色のアイコンが作業通話をしていたからそのまま入った。
『誰かと思ったらいるまかぁ。すっちー大丈夫そ?』
「今めっちゃ機嫌悪い。」
『なるほど体調悪いんか。』
「残り二人は?」
『二人で仲良くお出かけ中。』
『俺の誘い断ったから浮気かと思ったら違ったけぇ仕方なくこいつと作業してるとこ。』
『なっちゃん仲良くしよってさっきいったばっかじゃん。』
『で、いるまはどうしたんよ?』
「すっちーがお前らと会えなくて寂しいらしい。」
『可愛いとこあるやん。』
「やからお泊まり会をしようと思っとるんやけど何時が都合ええ?」
『例のいるまが無理やり書かせたやりたいリストのやつか。』
『俺はいつでも行ける。』
「らんは?」
『オレも大丈夫。帰ってきたらみこちにも聞いてライン送るよ。』
「そうして貰えると助かる。」
『こさめも同じくラインするけぇ。』
「サンキュ。」
『てか定期検診次何時なん?』
「その相談もしてぇから返事返ってきた時にする。もしかしたら俺の都合が合わなくて行ってもらうかもしれねぇから。」
『わかった。』
『いつでも行けるように待機しとるわ。』
「サンキュ。俺はそろそろ落ちるわ。」
『すっちーに楽しみにしとけって言っとけ。』
「おう。」
『お土産持って行くって伝えといて。』
「変なもん渡すなよ?」
『お前はオレをなんだと思ってんだよ。』
「とりあえず返事待ってるわ。」
『シカトすんなよ。』
discordを抜け寝室を見に行くとちゃんと薬を飲んだらしく静かな寝息をたてて眠っていた。
「いるまちゃん?いるまちゃんどこ?」
隣の部屋で作業をしていたら俺を呼ぶ声がしたので寝室に向かうと泣いてるあいつと目が合った。
何かあったらすぐ行けるようにドアを開けておいて良かった。
「どうした?どこか痛いんか?」
「いるまどこ?」
「俺はここにいるぞ。」
「いるまは最後までそばにいてくれる?」
怖い夢でも見たのか普段はこんなに弱ってる言葉を聞くことがなかったから少し驚いた。
あいつの隣に座り抱きしめながら落ち着かせるように言葉を紡ぐ。
「俺はどこにも行かないから安心しろ。」
「ほんと?」
「お前が離れて欲しいって言っても離れねぇしお前の手を離す気もねぇから。」
「そっか。よかったぁ。」
安心したのかまた眠り始めた。
あとどのぐらいこいつは生きていられるのか考えたくなくても考えてしまう。
ふとスマホが鳴ったので確認するとあいつらからで、
ら『今日からでも行けるってみこち言ってるけど、どうする?』
な『こさめもいつでも行けるように予定空けてるってよ。』
ら『いつ頃行けばいい?』
み『らんらんから聞いたんやけど旅行も行きたいって言ってたから一応近場ではあるけどええとこ見つけたからお泊まり会は今度にして旅行にする?』
こ『まだすっちーが元気なうちに旅行に行った方がええと思う。』
「悪ぃんだけど今日来て貰えると俺は助かる。その時旅行の話しようぜ。」
な『今日、調子悪ぃんならやめといた方がいいんじゃねぇか?』
み『今かららんらんと向かうから待っとって。』
な『みこと話聞け?』
「すちは今寝てるから気にすんな。」
な『なら俺らもすぐ向かうわ。』
「おう。待ってる。」
あいつらが来るまでにある程度飯の準備をしておく。
飯を作り終え冷まして冷蔵庫に入れる。あれから大分時間が経っているがどうやらあいつらはお土産探しに手こずって遅くなるらしい。
すちの様子を見に寝室に行くと起きたばかりらしく眠そうな目をしながら俺を見て微笑んでくる。
まじ可愛い。
「はよ、すち。よく眠れたか?」
「おはよぉいるまちゃん。よく眠れたよぉ。」
「なら良かったわ。今からあいつらが泊まりに来るらしいけど平気か?」
「そうなの?楽しみ!俺も何か手伝おうか?」
「ある程度終わってるから暫くすちとゆっくりするわ。」
「ならリビングで映画でも観て待ってようよ。」
「わかった。ブランケット出すからちょっと待ってろ。」
「それぐらい俺できるよ?」
「俺がやりたいからやらせてくれるか?」
「わかったぁ。」
さっきの事はどうやら記憶にないらしく寝ぼけていたから本音がでたらしい。
「すち用意できたから行こうぜ。」
「あのさいるまちゃん。」
「ん?」
「朝、わがまま言ってごめんなさい。」
「気にすんな。俺は言われて嬉しかったけどな。」
「そう?」
「お前普段わがまま言わねぇから。俺からしてみればもっと言って貰えたら嬉しいけどな。」
「…恥ずかしいからむり。」
こいつ照れて顔赤くなってる。
すちとソファに座りあいつらを待っているとようやく来たらしくチャイムが鳴った。
「ちょっと行ってくるわ。待ってろ。」
「うん。」
玄関を開ければあいつらが両手に大量の袋を持っていた。
「その大荷物なんなん?」
「内緒!」
「すっちー寝てるかもしんねぇのに大声出すなこさめ。」
「あっごめん。」
「あいつ起きてるから気にすんな。」
「すっちー来たぞーパーティーしようぜー!」
「おじゃましまーす。」
「あいつリビングにいるから。」
「おけ!」
「すっちー久しぶり!」
「らんらん達いらっしゃい。」
「何観てたん?」
「内緒。」
「えー、ケチ。」
「ようすち。お菓子パーティーしようぜー。」
「すっちー明日から旅行行くよー。」
「みんなで行くの?俺準備してないよ?」
「待て俺も聞いてねぇ。」
「だってさっき決めたから。」
「すっちーも行きたいよね!」
「行きたい。」
「うし、すちも行きてぇらしいから準備するか。」
「だから待て待て、明日は検診だから無理だ。」
「そうだっけ?」
「お前が忘れてどうすんだよ。」
「なら終わってから出発でもええんや ない?」
「まぁそうだけどよ。」
「おし!きまりなー。」
そこからはこいつらの行動速かった。
勝手に荷物まとめ始めて俺のまで勝手に荷造りしやがって。
でも久しぶりにすちの笑顔が見れたから許してやるか。
久しぶりにメンバーと会えて嬉しかったのかまるで昔に戻ったみたいにあいつははしゃでいた。
さっきまでらんと何か話してんなぁと思ったら急に静かになった。
「すっちー寝ちゃったみたい。」
「そりゃあ久しぶりにあんなに騒いでたら疲れるに決まってるやろ。」
「とりあえずベットに運んであげたら?」
「らんが嫌じゃなきゃそのままにしてやってくんね?」
「別にいいけど風邪ひかない?」
「一応ブランケット持ってきてるからそれかけとけばええやろ。」
「りょーかい。それと検診のことこの前何か言いかけてたけどどうした?」
「俺行けそうにないんだわ。」
「そんなにスケ埋まってたっけ?」
「急遽打ち合わせが入ったんだよ。」
「なんでそれ早く言わねぇんだよ。」
「しゃーないやろ一昨日決まったことなんやから。」
「オレが変われたらいいんだけどオレも入ってるから無理だな。」
「なら俺が代わってやろうか?」
「なっちゃんいいの?」
「俺が代わんのはいるまのな。」
「後で何するか伝えとくわ。」
「おう。その代わり今度すちも連れて買い物行こうぜ。」
検査が終わり結果を待合室で待っているとあいつの様子がいつも違うことに気づいた。
「すちどうした?」
「大丈夫、大丈夫、大丈夫だから。」
「待ってろ、今看護師さん呼んでくるから。」
「だめ。」
俺の袖を引っ張って引き止めるあいつの手は震えていた。
「大丈夫やから。離してくれるか?」
「いや。せっかくみんなと旅行に行けるのに俺のせいで行けなくなるのはいや。」
「すち、旅行よりも大切なのはお前の体調。たとえ行けなくなってもまた様子みて行けばええんやから。」
「だけど。」
「すち、俺との約束忘れたか?」
「ちゃんと覚えてるよ。」
「俺はなんて言った?」
「絶対に無理しない。少しでも辛かったから我慢しない。って言ってた。」
「約束は?」
「破るもの?」
「お前なぁ。」
「わかってるよ。でももう落ち着いたから大丈夫。」
「はぁ。無理はすんな絶対に。」
「うん。」
「お待たせしました。検査結果でたので診察室まで案内しますね。」
「ほら行こうぜ。」
「うん。」
すちが立とうとした途端バランスを崩したのか後ろに倒れそうになったのを慌てて支える。
「車椅子持ってきますので待っていてください。」
「すち大丈夫か?」
「足に力入らない。なんで?どうして。」
段々と過呼吸になっていくすちを抱きしめて落ち着かせる。
「大丈夫やから落ち着け。」
「でも。」
「大丈夫、大丈夫。」
「お待たせしました。車椅子に乗って診察室行きましょうか。」
診察室に着くと担当の医者から言われることが大体想像が着く。
「まず検査結果についてお話します。数値が前回より悪化してます。」
そう言うとパソコンの画面をこちらに向けられる。
どれも前回より下がっていて明らかに悪くなってるのが素人でも分かる。
「すちさんの筋力も大分落ちてきてるので歩けなくなるのも時間の問題です。」
「車椅子生活になるってことですよね?」
「はい。先程も倒れかけたので杖で歩いてもらいましたがやはり腕の筋力も落ちてるので杖も危険です。なので車椅子を使うよにしてください。」
「わかりました。」
「これはあくまで提案ですがやはり入院なされた方がお二人にもよろしいかと。」
「前にも伝えましたがそばに居たいんです。例え介護が大変であろうと離れ離れになるのは俺が嫌なんです。」
「すちさんはそれでいいんですか?」
「出来れば俺も入院生活で終わるよりも沢山の思い出のある場所で最期を迎えたいです。」
「わかりました。ならこれ以上は余計なお世話ですね。」
「気にかけて下さりありがとうございます。」
「いえいえ。それと旅行に行かれるそうですが、絶対に無理はしないでください。旅行中はなるべく車椅子移動するようにしてくださいね。」
「わかりました。」
「なにかあればすぐ病院に連絡を。」
「わかりました。」
「旅行楽しんで来てください。」
すちを連れて久しぶりの旅行だったが俺の心配を他所にあいつらはめちゃくちゃはしゃいでいた。
すちも色々と見たいものだの行きたい場所だの言っていたからあいつも楽しめたようで良かった。
「いやー楽しかっな!」
「そうだな。」
「いるまも息抜きできた?」
「ある程度はな。てかなんでらんがずっとすちの傍にいんだよ。」
「すっちーに頼まれてたから。」
「は?」
「『旅行中なるべく休んで欲しいかららんらんに俺のこと頼んでもいい?』って。」
「はぁ、そんなに疲れてるように見えてたんかよ。」
「まぁいるまも楽しそうやったしいいんじゃね?」
「否定できねぇ。」
「てか旅館着くなりこさめがすっちーから離れなかったなぁ。」
「今もそばにおるもんな。ついでにみことも。」
「あー。俺がみことに頼んだ。どうせこさめのことやけぇすちが眠そうでも話しかけ続けると思ったから。」
「確かに。」
「あのさこの三人だから言うけど、」
「ん?」
「すっちー薬増えてるし車椅子ってことはもうやばいってこと?」
「数値は悪化してるけどそんなにひでぇわけではないらしい。むしろ予想よりも進行が遅いって言われてる。」
「あいつの生命力すげぇな。」
「それと食欲も前より減ってない?」
「そういえば今日ほとんど食ってなかったな。」
「さっきなんてゼリーちょっと食べて終わらせてたし。」
「まぁお前らからすればかなり減ってるよな。」
「普段はどうなん?」
「普段よりは今日食えてた方や。」
「だから褒めまくってたんかお前。」
「出来たら褒める、当たり前やろ?」
「俺も話し加わってもええ?」
「おっ、みことおつー。」
「こさめは?」
「すちくんと一緒に寝とるよ。流石に話つかれたみたい。」
「それなら良かった。むしろ邪魔してないか心配してたから。」
「それじゃあ俺らは寝床ジャンケンするか。」
「俺はすっちーの隣やからもう決まっとるやん。」
「俺枕投げしたい!」
「音立てたらすち起きるだろうが。考えろやみこと。」
「薬飲んでるから暫く平気や。結構強いやつらしいから。」
「ほーん。ならやるか。」
「こさめもやる!」
「起きてきたんかよ。」
学生みたいなノリでひとしきり騒いでから各々布団に入り始める。
「オレはいるまたちと寝るからこさめはこっちの部屋で寝な?」
「起きたら一番うるさいヤツを寄越してくんじゃねぇ。」
「やったー。なつくん一緒に寝よ?」
「みことごめんだけどいい?」
「全然平気やからいるま先生のサポートしてあげてやらんらん。」
「ありがとう。それじゃぁおやすみ。」
「「「おやすみー。」」」
「ゆっくり休めよ?」
「お前もないるま。」
すちを挟んで寝ようとしたがどうやらあいつはなにか話したいことがあるらしく俺の事を見てくる。
「どうした?らん。」
「さっきは我慢できたんだけどやっぱり無理だわ。」
そういうなり静かに泣き始めた。
「泣きたいのはいるま達だって分かってるんだけど。」
「よく我慢したなお前。」
「これでもリーダーですから。」
「お前がいてくれるから俺もすちのことに集中出来てる。ありがとうな。」
「もう。急に素直になるなよ怖いなぁ。」
「あいつらに言うか迷ってことあんだけど聞いてくれるか?」
「ん?」
「もしかしたらの話なんやけどすちの誕生日祝えるかもしんねぇ。」
「まじ?」
「このままの速度で進行すればの話やけどな。」
「すっちーはその事知ってるの?」
「伝えてねぇ。むしろ伝えるつもりはねぇ。」
「それがいいね。」
ふと喉が渇いて起きると隣から苦しそうな声が聞こえて心配になり見るとらんが思いっきりすちに抱きついてるせいで苦しらしい。
静かにスマホを出し写真を撮る。
何処かに出掛けたらすちを撮るようにしてるせいかスマホのアルバムにはすちしかほぼいない。
そっとらんの手を動かし優しく髪を撫でると落ち着いたのかまた静かで規則正しい寝息が聞こえる。
二人を起こさないように気をつけながら部屋をぬけるとなつも起きていたらしく二人で飲み物を買いに行く。
「さっき苦しそうな声聞こえてたけどすち大丈夫か?」
「あれはらんが原因やから大丈夫や。」
「なんもなかったならよかったわ。」
「てかなつと話すのも久しぶりやな。」
「discordでは話すけどほぼすちに付きっきりやもんなお前。」
「まぁほぼ付きっきりって訳やないけどな。あんまり集中しすぎ無いようにしとるだけや。」
「ふーん。」
「なんや?納得いってなさそうやけど。」
「別にー俺らを頼ってくれてもいいんじゃねぇかなぁとは思ってるだけやし。」
「信頼してるけどこれは俺たちが決めたことやから。」
「まぁいざって時に頼ってもらえれば?いいけどな?」
「そん時は頼むな。」
「ん。」
自販機につき俺はお茶をなつはコーラーを買い部屋に戻る。
「すちとの旅行先俺が決めようか?」
「なつが決めてくれんなら外れないやろ。」
「どっか行きたいとこないのか?」
「特には俺もあいつもないな。」
「ふーん。なるべく近場で探しとくわ。」
「サンキュー。」
部屋に着きらんたちの寝てる寝室のドアを開けると泣きそうならんと苦しそうなすちの姿があった。
「いるまぁ。ごめんどうすればいいか分かんなくてライン送ろうと思ったけどちょうど帰ってきたから。」
「大丈夫やから落ち着けらん。なつ悪ぃけど薬と水持ってきてくれるか?」
「おう。」
「らんはとりあえず布団もう1枚出してくれ。」
「わかった。」
「すち?聞こえるか?」
「……」
「いるま持ってきたぞ。」
「サンキューなつ。あとそこ閉めてくれあいつらが起きちまう。」
「おけ。」
「掛け布団で大丈夫?」
「それで十分や。あとカバンに袋入ってるから二重にして持ってきてくれ。」
「わかった。」
「すち、大丈夫やからゆっくり息吸え。」
抱きしめながら声をかけ続ける。
「今日楽しすぎて調子のっちまったな。」
「…いるま?」
「ん。」「いきが…くるしい。」
「俺に合わせて息しろ?大丈夫すちならできるから。」
俺の呼吸に合わせて息をし始めた。
暫くすると落ち着いたのか口元に手をあて始めた。
「今袋用意するから待ってろ。」
らんに用意してもらった袋をすちの口元に持っていき吐かせる。
「もうだいじょうぶ。」
「なら薬飲んで寝ようぜ。」
枕元にあらかじめ用意していたウエットティッシュで口元を拭いてやり薬を飲ませると落ち着いたのかまた眠り始めた。
「ありがとうならんとなつ。」
「すごい冷静じゃん。」
「慣れてるからな。」
「布団必要だった?」
「部屋戻ってきた時思いのほか寒かったからもう1枚かけさせようと思って。」
「なるほどな。」
「ごめん。オレが付いていながら何も出来なかった。」
「いやむしろ助かった。俺一人じゃここまで用意できなかったし。」
「ならいいんだけど。」
「俺はこれ捨ててくるかららんも寝て平気や。なつもありがとな。」
「いやいや、あれ見たあとで寝るの無理やろ。」
「まぁそりゃそうだな。」
とりあえず袋を捨てる。
ほぼ何も出せなかったみたいだからまたなる可能性がある。
「おまたせ。」
「いつもあんなんなの?」
「いや?いつもは昼間が多いしなんなら今日はほぼ吐けてないからまたあの波が来る可能性はある。」
「薬変えてもらった方がいいんじゃね?」
「これ以上のだと効き目が強すぎるし以下だと弱すぎ余計辛い時間が続くことになっちまう。」
「大変やな。」
「俺よりもすちがな。」
「てかお前ら二人の時は『いるま』って呼ばれてんのかよ。」
「それオレもおもった。」
「まぁ恋人ですから。」
「うざぁ。」
あの後何事もなく朝を迎えた。
「すちー薬飲め。」
本日は残念なことに体調が悪いらしく少し不機嫌な恋人が出来上がった。
あいつらは朝食を食べに行ったからよかった。
「ほらいい子やから飲め。」
「いらない。」
「いらないじゃなくて。」
「飲みたくない。」
「飲まねぇと外行けねぇけど?」
「ぅぐ。」
「お前一人で留守番でいいん?」
「いや。」
「なら飲め。」
「俺も少しくらいご飯食べたい!」
「やから先薬飲めって。」
さっきからこの調子でございます。
皆に置いていかれたのが嫌だったみたいっすわ。
「すちー。」
「それ苦いからやだ。」
「子供やないんやから。」
「気持ち悪くなんかないから飲まなくて平気。」
「平気やなかったから飲めって言ってんの。」
「……」
「はぁ。ほらええ子やから飲め。」
「いらない。」
「すち?ほら口開けろ。」
ようやく観念したのか口を開けたので飲ませる。
「ほらやれば出来るやん。」
不貞腐れているが頭を撫でられて嬉しいのか擦り寄ってくる。
「おはよぉすっちー二人のこと待ってたよー。」
「めっちゃ機嫌悪そうやな。w」
「すちくん隣おいで〜。」
「こさめたちんとこおいで〜。」
「すちんこと頼むな。」
「任せてー。」
「俺はちょっと外でてくるからなんかあったらラインくれ。」
「えっ、ごはんは?ちょっといるま!」
いるまはそのまま何も言わずに部屋を出ていった。
悲しそうな顔をしてるすちを置いて。
「どないしよう。」
「とりあえず4人は食べてているま追いかけるから。」
「わかった。」
「すっちー大丈夫だから。すぐ戻って来るから。だからみんなと待ってて?」
「ぅん。」
オレも後を追って部屋を出た。
「いるま?」
「なんやらんか。」
「オレで悪かったな。」
「いや別に。」
「どうしたん?いつもなら何があっても離れないくせに。喧嘩した?」
「違う。」
「ならなんで?」
「……すちのこと怒鳴りそうになった。」
「腹が立つこともあるからしゃーないよ。」
「思っちゃいけないこと思った。こいつさえいなければ。こいつが居るからめんどう事も俺がやらないといけないって。なんで俺ばっかりって。」
「いるま。」
「俺やっぱりダメなやつだよな。」
「そんなことない!この三カ月間ずっとすっちーのこと見てたじゃん。」
「……」
「ちょっといるまも休もう?お世話ならオレたちがするから。せめて旅行中だけでもオレらを頼って?」
「お前らに頼れるわけないやろ。」
「自分たちで決めたことにオレらを巻き込まないため?ふざけんなよ?すっちーはオレたちにとっても大切な人なんだよ!お前がすっちーの楽しめる瞬間を奪うくらいならオレが面倒を見る。お前は何もしてくていい!」
「……」
「ずっとそこで不貞腐れてれば?すっちーのことはオレが見るから好きなように生きろよ。」
「……」
「じゃぁな。」
言い返したくても言い返す言葉が出てこない。
そばに居たいって言ったのは俺なのに。
あいつはため息をつくなり振り返って戻って行く。
「らんらん!いるませんせい!」
「どうした?みこちとこさめ。」
「すっちー見てへん?」
「え?一緒に居たんじゃないの?」
「部屋に忘れ物したって言うとったから行かせたらどこにもおらんくて。」
「なつくんが今探してるけど見つからないって。」
「なんで1人で行かせたんだよ!」
「とりあえず探そう?いるまもとりあえず抑えて今はすっちー優先。」
「すちくん車椅子やないから遠くには行ってないと思うんよ。」
「なんで車椅子ですらねぇの?」
「いるま!落ち着け!」
「ごめんなさい。」
「悪ぃ。言い過ぎた。」
「とりあえず外には出てないはずだから手分けして探そう?」
「うん。」
必死に探すが何処にも姿がなくて焦り始める。
廊下を通り過ぎようとしたら微かに声が聞こえた。
向かってみると俺の探していた人がいた。
「すち!」
「いるま?」
見つけるなりすぐに抱きしめる。
良かったまだここに大切な温もりがある。
失いたくないぬくもりが。
「良かった。本当に良かった見つかって。」
「ごめんなさい。俺わがままばっか言うから嫌いになったよね。言う事聞かないし昔みたいにきもちの整理つけられないし、子供みたいに思ったことすぐ言うし、迷惑しかかけてないから。だからいるまもストレス溜まるよね。俺さえいなければ」
「すち俺もごめん。大変なのはすちなのに。けど俺にはやっぱりお前が必要なんだよ。頼むから一人で何処かに行かないでくれ。」
「こんな俺でいいの?いるまが入院して欲しいっていえば迷わず入院するよ?」
「しなくていい。お前の最期まで傍にいんだよ。こんな俺だけど許して欲しい。」
「ならもうこんなことなしにしよ?いるまも言いたいことは言っていいんだよ?約束しよ?」
「わかった。俺もあいつらに頼りながらすちの傍にいられるようにする。約束する。」
「これで仲直りね。」
「あぁ。そうだな。てかよくここまで歩けたな。」
「自販機でいるまの好きな飲み物買おうとしたんだけど足に力入らなくなちゃって。」
「ここまで歩けたことがすげぇよ。すち。頑張ったな。」
いつも通り出来たら褒める。
「そんなに褒めないで恥ずかしい。」
「てかあいつらにも連絡しねぇと。」
「えっみんなで探してたの?」
「お前何も言わずに居なくなったからあいつら必死やったぞ。」
「謝らないと。」
「俺も一緒に謝ってやるよ。」
「元はと言えばいるまがいなくなるから行けないんだよ?」
「はいはい。ところで飯は食えたか?」
「ほんの少しだけなら食べれた。」
「美味かったか?」
「いるまと一緒ならもっと美味しかったと思う。」
「なら戻ったら一緒に食おうな。」
俺はあいつを抱えて部屋に戻ることにした。
あの後謝り全員で食べた飯は今までのどの瞬間よりも美味しいかった。
気づけば周りは秋模様に変わっていた。あいつの余命はあと一ヶ月。
それでもほぼ変わらない時を過ごしている。
「いるまちゃん。」
「ん?」
「紅葉が綺麗だね。」
「そうだな。」
「この景色描けたら良かったなぁ。」
すちはもう歩けなくなっていた。
最近は手の筋力も落ちて好きな絵も描けなくなっていた。
「明日俺出掛けないと行けねぇけどちゃんとらんたちの言うこと聞けよ?」
「うん。大丈夫。」
「なるべく早目には帰ってくるけど何かあったらすぐ伝えろよ?」
「うん。」
「やっぱ断った方が良かったなぁ。」
「いるまちゃんの友達が集まるんでしょ?なら行っておいでよ。」
「わかってるって。帰りお土産買ってくる。」
「楽しみにしてるね。」
「さてと、十分散歩したし病院行きますか。」
「だね。」
今日から新たに人口呼吸器をつけることになった。
と言ってもマスクのタイプではなく鼻カニューレというものにしてもらった。
まだマスクをしたくないとすちが言うからその意見を尊重してになるが最近はたまに呼吸が乱れるからこそなのにどこまでも寄り添ってもらえて俺も大分救われるてる。まぁもしもの時のために一応マスクも渡されたけど。
「いるまーきたよー。」
「いるませんせいー。」
「おう、ありがとな。」
「あれ?すちくんは?」
「今は寝てる。薬飲んで寝とるから起きるまでそっとしといてやってくれ。」
「わかった。」
「やらなきゃならないことは全部メモっといてあるからそれ見てやれば平気や。もしなんかあれば連絡くれ。」
「はいよ。」
「昼までに起きてこなかったら絶対起こせ。機嫌悪くなるだろうけど薬飲ませてから30分は近所散歩。公園に行くまででもいいから。」
「はいはい。」
「もし体調悪そうやったらリビングでテレビなり窓際で日光浴でええから。無理やり散歩に行かなくてええから。なるべく横になってる時間減らせ。」
「りょーかい。」
「もし飯食えそうやったら冷蔵庫に作り置きのお粥入ってるからそれ食わせてやれ。人肌の温度で平気やから。あと手に力入らないから自分で食おうとさせるなよ?」
「はい。」
「それから」
「もうとっとと行けって。長ぇよ。」
「けど、」
「メモしてるんならその通りにやるから。」
「わかった。頼んだからな二人とも。」
「おうまかせろ!」
「任しているませんせい。」
「じゃあいってきます。」
「「いってらっしゃい。」」
少し心配だが二人に任せて俺は出かけた。
「もうあいつはままかよ。」
「しかたないよ。久しぶりに離れ離れになるんやもん。」
「さてと、とりあえずメモ見てやる事やりますか。」
「そうやな。」
二人でメモに書いてあることを進めていく。
しばらくすると寝室の方から物音がしたので様子を見に行く。
「いるまちゃん?」
どうやら起きたらしい。
「みこち今何時?」
「ちょうどお昼になるよ。」
「なら飯食わすか。」
「じゃあ俺準備してくる!」
「頼んだ。」
「すっちーおはよ。よく寝れた?」
「おはよぉらんらん。いるまちゃんは?」
「もう行っちゃったよ。お見送りしたかったよね。」
「行ったなら良かった。行かなそうな感じしてたから。」
「だろうなとは思ってたけどな。」
朝のあの感じ見てれば尚更。
「すちくん!おはよ。」
「おはよぉみこちゃん。」
「お昼食べれそう?食べれそうやったらお粥温めるけど。」
「少しだけなら食べれると思う。」
「わかったぁ、すぐ用意するね。」
「一旦ストップみこち。」
「ふぇ?」
「すっちー車椅子に乗らしたげて、オレよりもみことの方が安定感あるし。」
「ぅわかった。」
みことにすちのことを頼んでる間にテーブルを片していく。
「あいつお粥とか作れるようになったんだねぇ。成長を感じるよ。」
「すちくんが教えてくれたって言っとったよ。」
「オレなんかほぼみことが作ってくれるもんなぁ。」
「簡単なものなら、らんらんも作れるでしょ?」
「らんらんが作るご飯も美味しいよ!」
「オレもお前らみたいに作ってみたいの。お菓子とかさ。」
「今度いるまちゃんのご飯食べてみなよ。美味しいよぉ。」
「急に惚けてくるじゃん。」
「ほら、らんらんどいてお粥温まったから。」
「ごめんごめん。」
「とりあえず茶碗の半分くらいにしたんやけど多かったらごめんね。」
「無理だったら残してもいいからね?」
「これくらいならいけると思う。」
「オレがあーんしてあげる!」
「じゃあ俺は洗い物してくるね。」
少しずつ食べてはいたが四口ぐらいで食べるのをやめてしまった。
「もう無理そう?」
「ぅん。ちょっと気持ち悪いかも。」
「ならやめとこ。薬飲めば少しは楽になるから飲もう。」
いるまが用意していてくれた薬を出しすちに口を開けさせる。
「飲めた?」
「うん。大丈夫。」
「今日はお散歩やめた方がええんやない?顔色良くないよ?」
「横になってもいい?むしろ横になりたい。」
「ごめんだけどそれは出来ない。」
いるまのメモに書いてあった。
『飯食い終わっても絶対に横にさせるなよ?
血行が悪くなるらしいし今のすちじゃ消化が出来なくて余計吐く可能性があるから。
もし駄々こねたらソファに座らして背中にクッション挟んで隣にらんでもみことでもええから座って体支えて頭撫でてやれ。
機嫌が悪くなるだろうけど絶対怒るなよ?(俺が言えたギリやないけど)
最悪言う事聞かんくなったら必殺技俺のクマ使え。(俺のベットにあるやつがあいつのお気に)
落ち着くから。』
って書いてあったけど本当にこれでいけんのか?
「横にならしてよ。ご飯食べたしくすりのんだじゃん。」
これがすちの駄々こねねぇ。
「すちくん落ち着いて。」
「ねたい。ねたいのになんでよこになっちゃだめなの?」
これはどうしたもんかなぁ。
「すっちー横になるの我慢しよ?ね?」
「ねたいのに。なんですわってないといけないの?」
これはあれですねみことを犠牲にした方がいいですね。
あいつどうせメモ忘れてるだろうし。
なんかこっちみて来るし。
オレの彼氏可愛い、じゃなかった。
「すっちー、ならソファに座ろ?」
「そうやよすちくんソファの方がふかふかやから痛くないよ?」
「でもよこになれない。」
こいつ感づきやがった。
仕方ないのでみことにこっそりラインを入れる。
『いるまのメモ覚えてる?』
『覚えとるけど。くまさん取り行くにもどうするん?』
『すっちー抱えられるのみことだからなぁ。』
『ほぇ、おれぇ?』
『すっちーソファに座らせたらオレが速攻クッション挟んで寄りかからせるからみことはくま取ってこい。』
『まかせて!』
この状態のすちと二人きりにするとみことも半べそかく可能性があるからこれの方がいいだろう。
「すちくんちょっと持ち上げるね。」
「ねていいの?」
「うーんと。」
「すっちー、オレとソファでゆっくりしよ?」
みことがすちを下ろしたと同時にクッションを挟みオレの肩に頭をのせさせる。
嫌がるけどほぼ力がないすちは逃げることが出来ない。
頭を撫でてる間にみことにくまを取りに行かせる。
「くまさんとってきたぁ。」
「ほいすち。」
目つきは怖いが嬉しいのか口元は緩んでた。
こいつ可愛いな。
しばらくすると肩が異様に重くなってきた。
「すちくん寝たみたい。」
「ようやくか。はぁいるま、あいつすげぇなこんな状態のやつ相手してるんやもん。」
「病気のせいで感情がコントロール出来ないとは言っとったけどこんなになるんやな。」
昔のことは考えないようにしてたけどあの頃よりもずっと手がかかる。
まぁ当時も無理し過ぎたりするから気が気じゃなかったけど。
「やのにグループのことも家のこともやっとるからすごいなぁ。俺は出来んかも。」
「だな。てか片付け任してごめんね。」
「気にせんでええよ。」
「みこと車椅子にあるブランケットとって。すっちー風邪ひいちゃう。」
「ほけ。」
「てかなんでポケモンじゃなくてクマなんだか。」
「そういえばそうやね。らんらんもブランケットいる?」
「オレは平気。」
かれこれこの体制を2時間維持してるがそろそろ肩が限界に近い。
「らんらんそろそろ代わろうか?」
「みこちのタスクは終わった?」
「終わらせてきた!」
「なら代わってもらっていい?そろそろ限界。」
「ほけ!あといるませんせいからラインきとった。らんらんにも送ったって。」
「わかった、確認しとく。」
みことに代わってもらい、いるまからのラインを見る。
『そっち大丈夫そうか?』
『今は何とか。』
『一応みことから聞いてはいる。いつも以上にぐずったみたいやな。』
『まじ?いつもこんなんかと思ってたわ。』
『いつもそんなんやったらお前らに頼むわけないやろ。』
『やっぱ、いるまじゃないと落ち着かないのかなぁ。』
『起きた時は機嫌よかったんやろ?』
『うん。』
『ならなんでやろうな?いつもならそのまま機嫌いいんやけど。』
『起きて飯食わした。あっ、お粥ちょっとだけど食べてたよ。』
『その後なんかあったか?』
『特にはないよ?気持ち悪いって言うから終わりにして薬飲ました。それくらい。』
『褒めてねぇの?』
『あっ。』
すっかり忘れてた。
なにか出来たら褒めるってこといるまはしてたし、メモに書いてあったのに。
『それが原因?まさか。』
『多分な。最近できること前以上に減ってきてるからなるべくどんな事でも褒めてモチベ上げてんだよ。小さい子供やと思っとった方がええぞ。』
『あー。なるほどね。』
『やっぱり言うべきやったな悪ぃ。』
『忘れてたオレらが悪いわこれ、すまん。』
『まぁ頑張ってくれてるからええけどな。』
『お前やっぱりすげぇよ。』
『ん?何が?』
『いやなんでもない。ちなみにあとどのくらいで帰って来れそ?』
『さっき解散したから多分45分後くらいには着くと思う。』
『その間頑張っとくよ。』
『お前らなにか食いたいもんあるか?』
『なんで?』
『お礼になんか作ってやるよ。』
『まじ?』
『マジ。』
『いるまの作りたいものでいいよ。オレらお前が何作れるか知らねぇし。』
『じゃあさっぱりしたやつにするか。』
『楽しみにしとくよ。』
『おう。まかせろ。』
タスクを終わらせリビングに戻るとみことも一緒になって寝ていた。
とりあえずみことにもブランケットをかけようと思って近づくとすちと目が合った。
「おはよぉ。すっちー。」
「……」
寝ぼけてるのかと思って様子を見るがどうやら不機嫌なだけらしい。
目付きが怖い。
いるまが帰ってくるまであと10分。
でもその後料理作るだろうから余計気まづい空間になるな。
何とかして機嫌戻してもらわないと。
「すっちー、なんかしたいことある?」
「……」
「テレビなにか見る?」
「……」
「空気入れ替えよっか。窓開けてくる。」
「ならお散歩に行きたい。」
ようやく喋ってくれたと思ったら散歩に行きたいとは。
あなたさっき体調悪かったじゃん。
「うーん。さっき体調悪そうだったからやめといた方がいいんじゃないかなぁ。」
「やっぱりいい。」
あんれぇ?
余計不機嫌になっちゃった。
「ただいま。」
玄関の開く音と同時にいるまの声が聞こえた。
良かった。
助かった。
リビングのドアを開けると眉間に皺寄せたらんと絶賛不機嫌ですオーラを出してるすちがいた。
みことは爆睡してるしカオス過ぎんだろ。
「なんかあったん?喧嘩したん?」
「えっとぉ。すちさんが散歩行きたいらしくて、でも昼間体調悪いって言ってたし寒くなり始めてるからやめた方がいいかなぁって。」
「散歩行きたいん?すち。」
「ダメならいい。」
これは相当不貞腐れてるわ。
「厚着すればええから気にすんな。」
「いいのかよ。」
「家ん中退屈なんだろうな行ってくれば?」
「オレとすちで?」
「ならみこと起こして4人で行くか?」
「それも可哀想だけど。」
とりあえずすちの近くに行き強ばってるからだを抱きしめる。
いつものように頭を撫でながら褒めていく。
「大人しくお留守番できて偉いぞ、すち。」
「うん。」
「お粥も少しやけど食べれたらしいじゃん。」
「うん。」
「よく頑張ったな。偉い偉い。」
「うん。」
「公園までは流石に行かねぇけど散歩いくか?」
「うん!」
「おし、じゃあ上着取ってくるからみこと起こして待ってろ。」
「わかった。」
これでいつものすちに元通りっと。
家の周りをゆっくり一周するだけだがすちは楽しそうで良かった。
まだ比較的日中は暑い日があるが夕方になると涼しくなるから過ごしやすい。
少し散歩して機嫌も良くなったのか家につくなりみことと何か話してる。
「オレの彼氏お前の彼女に取られた。」
「うざいから離れろ。付きまとってくんな邪魔。」
「誰も構ってくれない!ひどい! 」
「一緒に話してくればええやろ。」
「いやあのほわほわ空間に入る自信ねぇよ。」
「じゃあ手伝え。すちは飯どうする?」
「少しだけ食べるって言うとるよ。」
「じゃあ粥あっためるから待ってろ。」
「はぁい。」
「質問なんだけどさ。」
「ん?」
「あいつなんでポケモンのぬいぐるみとかじゃなくてお前のクマなん?」
「知らねぇ。俺も聞いたけど教えてくれなかったし。」
「ふーん。」
「これ持っていけ。で、飯食わせてる間にお前らも食ってろ。」
「オレですら作れないものをお前が作ってんのなんか腹立つ。」
「ざまぁ。」
すちを車椅子から下ろしソファに座らせようとしたら嫌がった。
なんで?
「ん?ソファいやなんか?」
「下がいい。」
「ソファの方が楽やと思うけど?」
「いるまちゃんがソファ座って。俺床の方が落ち着く。」
「別にええけど。」
クッションを置きその上にすちを座らせる。
「ちょっとぬるいかもしんねぇ。」
「あいつらオレらがいるのにイチャつき始めたんやけどみこち。」
「すちくんいるませんせいとおれてうれしいみたいやね。」
「そういえばさっき何話してたの?」
「昼間のこと謝ってきたんよ。」
「あー。なるほどね。」
「らんらんにも謝りたい言うとったよ。」
「わかった。後で話しかけてくる。てか他にも話してただろ?」
「らんらんもしかして嫉妬しとるん?」
「いや、そういう訳じゃなくて、ちょっと気になって。」
「可愛ええなぁ。」
「話そらすな!//」
「ごめん。話しとったことは今の活動どうなってるか気になっとるらしくて。」
「そりゃそうだろうな。あいついなくなってからいるまも結構時間割いてタスクこなしてるから。」
なるべくいるまへの負担は減らしてはいるがそれでも回りそうにない時は納期まで時間のあるやつを頼むようにしてる。
「まぁ心配いらないって伝えとけばいいだろうし、あいつには自分のことだけ考えて欲しいからなぁ。」
「……そう…やね。」
「おい、らん、みこと飯食い終わったら風呂行け。どうせ泊まるんやろ?」
「バレた?」
「あんなに荷物持ってればな。」
「でも先すちくん入れた方がええんやない?」
「暫くかかりそうやしお前らが先に食い終わるだろうから先行け。」
「わかった。食い終わったら入るわ。」
「すち、もう、ごちそうさましような?」
「まだ食べれる。」
「これ以上は流石にきついやろ?」
「でも、」
「また腹減ったら食えばええんやから。な?」
「わかったぁ。」
「じゃあ薬飲もうな?」
なぜか今日はやけに食うなとは思った。
昼間の話聞いていたからそんなに食べないと思っていた。
「よし、全部飲んだな?」
「うん。」
「良い子いい子。」
「んへ。」
「めちゃくちゃご機嫌んじゃん。」
頭を撫でていると不意に抱きついてくる。
「いるまちゃんあったかいね。」
「お前もしかして寝みぃんか?」
「ぜんぜんねむくないよ?」
「いるまぁ。俺たちまだ食べてるから先に風呂入って来れば?」
「そうやね。まだお腹すいとるから先行っておいで。」
「悪ぃな。」
すちを車椅子に乗せ風呂に向かう。
洗い物を済ませているとあいつらが戻ってきた。
「いい風呂だったねみこち。」
「なんで俺一人で入っとったのにらんらんまで。」
「おけぇり二人とも。」
「お風呂ありがとういるま。」
「ありがとういるませんせい。」
「ちゃんと髪乾かせよ?」
「はいはい。ところですっちーは?」
「今眠気と戦ってるぞ。ほれ。」
ソファの方を指刺して二人に伝える。
「あと30分は頑張って座っててもらわねぇと。」
「いつもこうなん?」
「いつもはもうベット運んで座らせてるけどな。」
「なら連れてってあげなよ。」
「すちが嫌がるんだわ。らんと話したいんやって。」
「そうなんだ。」
「ほら、らんらん行っといでよ。いるませんせいはお風呂行くやろ?」
「そうやなお前らがいるなら見ててもらうわ。」
「その間にいるませんせいのご飯準備しとるね。」
「サンキュー。」
俺は二人にすちのことを任せて風呂に向かった。
さてといるまに代わってすちの面倒を見るとしますか。
「すっちーおまたせ。」
「らん……らん?」
「そうそうらんらんです。オレのこと待ってたらしいじゃん?どうしたの?」
「…おひるわがまま…いってごめんね。」
「大丈夫気にしないで。」
「……よかった。」
「眠いなら寝ても平気だよ?」
「…いるま…ちゃん…まつの。」
ほぼ寝かけているのに一日いるまと離れていたのが相当寂しかったみたい。
オレもみことと一日連絡取れなかったら寂しいから気持ちが痛いほどわかった。
風呂からあがるともう既に寝かけているすちがいた。
「おまたせ。寝たきゃ寝てええのにらんに邪魔でもされたんか?」
「邪魔してないし!お前が来るの待ってたんだよ。なぁ、すっちー。」
うとうとしてるせいか返事は返ってこない。
「そんじゃベッド行くか。」
「ん。」
すちを寝室に連れて行きベッドに寝かす。
寝れるまで手を繋いでおく。
相当眠かったらしくほぼすぐ寝た。
リビングに戻るとみことは俺の飯を用意してくれてる。
らんはみことに何か言っているが聞こえない。
「何話してるん?」
「あっ、いるまおかえり。すっちー寝た?」
「秒で寝た。」
「いるませんせいのご飯準備できとるよ。」
「サンキュー。」
「あのさ、さっき冷蔵庫見たらお酒入ってたけど。」
「あー、お前らに買ってきたやつ。つまみも作ってあるから食え。」
「えっ、いいの?」
「今日のお礼な。」
「遠慮なく頂きます!」
「俺おつまみ温めるかららんらんお酒持って行って。」
「はーい。」
懐かしい光景が目の前に広がってる。
みことがすちと同じことしてらんが俺と同じことをしてる。
『いるまちゃん、おつまみ温めるからお酒用意しといてぇ。』
『まかせろ。』
『あんまり飲みすぎちゃダメだよ?』
『ちゃんとセーブできるから心配すんなって。』
「これうま!」
「すちくんが作ったのと同じ味する。」
「そりゃそうだろあいつに教わったんやから。」
「みことも作れるんじゃない?料理よく作るし。」
「流石に無理かもしれん。」
「なら、いるまに作り方聞くか。」
「教えるわけないやろ。」
「ケチ。」
それから他愛ない話をしてお開きにした。
いつもより返事が遅かったから多分みことには俺が体調崩してんのバレたな。
喉が渇いたので飲み物でも飲もうかと部屋を出たらいるまとすちの部屋のドアが開いていた。
覗くとすちを膝の上に座らせて抱きながら頭を撫でているいるまと目が合った。
「どうしたん?」
「喉渇いて。」
「ふーん。」
「てか何やってんの?病人に。」
「あー体勢見りゃそうなるわな。別に変なことしてねぇよ。すちがぐずるからこうして落ち着かせてるだけやし特に手は出してねぇ。」
「わかってるし。ふざけただけだし。」
薄暗いけどよく見るといるまの顔がほんのり赤いことに気づいた。
こいつもしかして風邪ひいてる?
なら寝かせないとじゃん。
「いるま、オレ代わろうか?」
「お前も疲れとるやろ気にしないで寝ろ。」
「だってどのコップ使っていいかわかんないし。」
無理やりだがすちから離れさせる。
こいつの風邪が移る可能性だってあるから。
「わかった、ならこっち来い。」
いるまの隣に座り言われた通りにする。
「思ってたよりすっちー軽いね。」
「そりゃ食う量減ってるからな。水持ってくるからじっとしてろよ?」
いるまが持ってくるのを待っているとすちが身動ぎ始めたので下ろそうとした。
が服を掴んでるため下ろせない。
「お前大変そうやな。笑」
「笑ってないで助けて貰えます?」
「落ち着く体勢探しとるだけやからそのままで平気やで。」
「水飲みたいんだってば。」
「ストロー刺してあるからその体勢でも飲めるようにしといた。感謝しろよ?」
オレの口元にストローの刺さってるペットボトルを差し出してくる。
優しいんだか揶揄いたいんだかよくわからん。
「そろそろ代わるぞ?」
「いるま眠いんでしょ?オレこのままでも寝れるから寝なよ。」
「だけど、」
「それにほらまだ服掴まれてるから。いるまの時こんなんじゃなかったのになんで?」
「お前のことちゃんと信用しとるからやろ。あとまだおちてねぇ証拠。」
「そうなん?」
「おちたら服掴んでこねぇんだわ。そのうちおちると思うぞ。」
「そっか。まぁどっちにしろいるまはそのまま横になって寝ろ。」
「だから俺は大丈夫やって。」
「ぅぅん。」
言い争いが始まりそうになった矢先すちがぐずりだした。
「大丈夫、大丈夫。怖いことないよぉ。ほら、ね?」
「大丈夫やすち。俺はここにおるから。安心しろ。」
二人で優しく声をかけていると落ち着いたのか静かな寝息が聞こえる。
「お前が大声出すから。」
「俺じゃなくてらんのせいやろ。」
「ほらほらうるさい人は寝てくださーい。じゃないとまたすちが起きますよー。起こしたいんですか?」
「はぁ。わかったよ、寝ればええんやろ寝れば。」
暫く文句を言っていたがようやく静かに寝始めた。
体調悪い癖に頑張り過ぎて倒れられても困るのになんて思っているとドアをノックする音がした。
向かいたいが身動きが取れないし、声出したら絶対起こすのでどうすることも出来ずにいるとドアを開けてみことが入ってきた。
「らんらんどこ行ったんかと思ったらここにおったんか。」
「水飲みに行こうとしたらいるま体調悪そうだったから代わったんだよ。」
「やっぱりいるませんせい体調悪いんか。」
「気づいてたんかい。」
「さっき話しとる時ワンテンポ遅れて返事返ってきたからもしかしてと思ってたんよ。いつもなら秒で返ってくるのにおかしいなとは思ったんよ。」
「そっか。そうだみこと。」
「ん?」
「いるまと寝てくれる?いるまの部屋で。」
「ええけど。」
「ありがとう。すっちーに移すとやばいから明日病院にも連れてってもらえる?」
「もちろん任して!」
「んん。」
やばいすっちー起きちゃう。
「よしよし大丈夫まだ寝てて平気だよぉ。」
頭を撫で続けてるとまた静かな寝息が聞こえる。
「ふぅ。」
「ごめんなさい。大声出してもうた。」
「大丈夫。とりあえずいるまのことよろしく。すっちーはオレに任せて。」
「ほけ。」
いるまを抱えて出ていくみことに手を振りながら見送る。
「らんらん起きて。」
「んぅん。みこと?」
目を開けるとなぜかオレは横になっていてその隣ですちが寝てる。
オレの腕を枕にしてオレに引っ付いて寝てる。
ふと声のした方を見るとみことと目が合った。
「いるませんせい病院連れてってくる。」
「頼んだ。」
「一応助っ人呼んどいたから大丈夫やと思うけどなんかあったら連絡してな?」
「うん。」
「いってきます。」
「いってらっしゃい。」
玄関の方にみことが行ったのを横になりながら眺めているといるまの声が聞こえた。
「俺は平気やから。」
「すちくんに移したら元もこうもないでしょ!」
「けど、」
「らんらんだっておるから平気。」
「あいつ一人じゃ大変やろ。」
「他にも助っ人呼んどるから。ほら、はやく。」
文句を言いながら大人しくみことの言うことを聞いて出ていった。
さてオレはやることやっちゃいますか。
みことにいるまを病院に連れていくかららんのことを頼むと言われたが頼むのらんじゃなくてすちじゃね?と思いながらあいつらの家に向かった。
寝てる可能性もあるから合鍵で勝手に入る。
「なつくん先、手を洗わんと。」
「あーそうだな。」
リビングに向かうと膝にすちを座らせて抱きながら頭を撫でているらんがいた。
ソファに近づき声をかける。
「お前何してんの?」
「ついにすちに手を出すとわ。」
「違う、違う。こうしないとすっちーがぐずるから。」
「へー。」
「ふーん。」
「疑ってるな?お前ら。」
「別にー?」
「てかすっちーご飯食べたん?」
「どうにか食べてくれた。」
「ふーん。」
「ところでいるまどっか悪いんか?」
「なっちゃんそれ今言ったら、」
「いるまちゃん?」
すちがいるまを探し始めた。
もしかしてこれ地雷踏み抜いたパターンか?
「いるまいない。なんで?」
泣きそうな顔と声で必死にいるまを探してる。
「いるまは今みこちと買い物に行ってるだけだよ。大丈夫すっちーのこと置いてどっか遠いところに行ったわけじゃないよ。」
「そうそうすっちー、まにきたち買い物に行っとるだけやから心配いらんよ。」
「こさめちゃん?」
「うんそうそうこさめ。なつくんもおるよ。」
「ようすち。遊びに来たぞ。」
「ひまちゃん。」
「ほらなっちゃん達も来てるから4人で仲良く帰ってくるの待とう?ね?」
「こさめ沢山話したいことあるからお話して待ってようよ。」
「おー気になるなぁ。ね?すっちー。」
「ぅん。」
怒涛のこさめのよく分からん話を聞かされてる間に眠くなったのかようやくすちが落ち着いて寝始めた。
「こさめ喉乾いた。」
「そりゃ一時間半も喋ってれば乾くやろ。」
「ごめん。俺地雷踏み抜いた。」
「気にしなくていいよ。朝からこの調子だし。」
「そろそろ下ろしてもええんやない?」
「服掴まれてるから下ろせないんだよね。」
「すち俺らが来る前泣いたんか?」
「あーやっぱり気づいた?」
すちの目元が赤くなっているのを部屋に入った時から気づいてた。
「起きてからいるまの姿がないから不安で仕方がないんよ。起きた途端めちゃくちゃ駄々こねてギャン泣きされたよ。」
「昨日は大丈夫やったんやろ?」
「昨日は前々から出掛けること知ってたからね。」
「その体制お前はきつくないんか?」
「すっちー重いんやない?」
「全然。てか軽すぎて逆に心配ないくらい。」
「そうなんや。てかこさめ水飲んでくる!」
「なぁ、部屋暑くね?」
「ダメだよ?温度下げたら。」
「なんで?」
「すっちーにはこれが適温なの。体温調節できないらしいんだよね。」
「そうだったんか。」
「そろそろお昼やけどどうするん?」
「なっちゃん作ってきてよ。」
「どこに何があるのか知らねぇし何使っていいかわからねぇこの状況でか?」
「オレ動けないしこさめは何しでかすかわからないし。」
散々悩んでいたらようやく二人が帰ってきた。
「ただいまー。」
靴を脱ごうとしゃがんだらリビングから二人が走ってきた。
「よういるま。」
「まにきお邪魔してるよん。」
「なんでお前らってもしかして助っ人ってこいつらか?」
「うん!」
「らんとすちは?」
「リビングにおるよ。」
「なら様子見に行かねぇと。」
「いるませんせい!ダメだよ!」
「みこと大声出すな、すちが起きる。」
「あっごめん。いるませんせい風邪引いてるんだからすちくんに近づいちゃダメって言われたでしょ。」
「そうなん?」
「すちくんの主治医の先生にあって怒られたんよ。」
「ならとっとと手を洗って部屋で寝てろ。すっちは俺らが見てるから。」
「何かあったらライン送るから寝てて。すちーのことは任して。」
「けど、少しぐらい見てもええやろ。近づかねぇから。」
「覗くだけだからな?」
「その前に手洗いうがいしてな。」
みことに促され仕方なく脱衣所に向かい洗う。
「ちゃんと洗った?」
「洗った。」
「ならマスクしてからならええよ。」
マスクをしてリビングを覗くとらんがすちを抱きしめて慰めてるのが見えた。
「すちくんずっとあんな感じなん?」
「らんからずっと離れねぇんだよ。」
「流石に二日連チャンでいなかったんはまずかったんかなぁ。」
あいつに声掛けてやらねえと。
傍にいるから心配してなくていいって言ってやらねぇと。
いつも以上に疲れてるだろうから甘やかしてやんねぇと。
靴を脱ごうとしゃがんだらリビングから二人が走ってきた。
「よういるま。」
「まにきお邪魔してるよん。」
「なんでお前らってもしかして助っ人ってこいつらか?」
「うん!」
「らんとすちは?」
「リビングにおるよ。」
「なら様子見に行かねぇと。」
「いるませんせい!ダメだよ!」
「みこと大声出すな、すっちーが起きる。」
「あっごめん。いるませんせい風邪引いてるんだからすちくんに近づいちゃダメって言われたでしょ。」
「そうなん?」
「すちくんの主治医の先生にあって怒られたんよ。」
「ならとっとと手を洗って部屋で寝てろ。すっちーは俺らが見てるから。」
「何かあったらライン送るから寝てて。すっちーのことは任して。」
「けど、少しぐらい見てもええやろ。近づかねぇから。」
「覗くだけだからな?」
「その前に手洗いうがいしてな。」
みことに促され仕方なく脱衣所に向かい洗う。
「ちゃんと洗った?」
「洗った。」
「ならマスクしてからならええよ。」
マスクをしてリビングを覗くとらんがすちを抱きしめて慰めてるのが見えた。
「すちくんずっとあんな感じなん?」
「らんからずっと離れねぇんだよ。」
「流石に二日連チャンでいなかったんはまずかったんかなぁ。」
あいつに声掛けてやらねえと。
傍にいるから心配してなくていいって言ってやらねぇと。
いつも以上に疲れてるだろうから甘やかしてやんねぇと。
そう思って一歩踏みだしたらみことに止められた。
邪魔すんなよ。
「睨んでも行かせへん。」
「いいからその手離せ。」
「すちくんに移したいん?」
「いるま今はみことの言う通りあいつに近づかせるわけには行かねぇ。」
「今この状況ですっちーの所に行くのが正解なん?移して大丈夫やとまにきは思ってるん?それとも移さないって自信があるん?」
「移る可能性があるってわかってる、」
「先生言うとったやろ?今のすちくんにはちょっとした風邪も命取りやって。それに今まだ起きてる時間が多いことが凄いって先生言うとったやろ。」
「いるま、お前が今すべきことはその体調ですちのとこに行くことか寝てとっとと治すかの二択。何が正解か考えろ。」
「……すちのこと頼む。俺は早く治るよう努力するから。」
「うん!任してまにき!」
「お粥作って持っていくからそれ食べて薬飲んで大人しくしててな?」
「俺はガキじゃねぇよ。」
流石に身体もだるくなってきたしあいつらの言ってる事が正しいのですちの事を頼んで大人しく休むことにした。
手際よくお昼を作ってるみことを見ながらすちを抱きしめているとこさめが話しかけてきた。
「そのままやとらんくんご飯食べれへんよね?」
「まだお腹空いてないから気にせず食べていいよ。」
「もうそろすちに薬飲まさねぇといけねぇんじゃね?」
「確かに。起こすの申し訳ないしなぁ。」
「おまたせ。お昼ご飯できたよ。」
言われるなり速攻テーブルに着いた二人を見てると料理を持って来るみことに話しかけられる。
「俺が代わるかららんらんはご飯食べて。」
「お願いしたいんだけど服掴まれてるから無理かなぁ。」
「チャーハンやし片手で食えるやろ。」
「お行儀悪くなっちゃうでしょ、なっちゃん。それに左側にすっちー抱えてるから無理だし。」
「あっすちくん起きたみたい。」
らんらんたちと話してるとらんらんの肩口からこちらの様子を伺うよにすちくんが見てくる。
「おはよ、すちくん。」
「……」
「まだ寝ぼけてるから返事出来ないねぇ。すっちーよく眠れた?」
「……ん。」
「らんらんご飯食べるからすちくん俺んとこおいで。」
「……ぃゃ。」
「みこと振られてらぁ。」
なっちゃん他人事やと思って笑ってる。
「大丈夫だよ。みこちなにもしないから、ね?」
「……ゃ。」
そういうなりますますらんらんにしがみつく。
俺傷つくんやけど。
「あーあ、みこち可愛そう。」
「……」
「すっちー何が嫌なん?」
「……らんらんもどっか行っちゃう。」
「どこにも行かないよ。約束する。」
「……ほんと?」
「うん!ほんとほんと!」
「ならみこちゃんとこいく。」
らんらんの隣に座ってすちくんを抱っこする。
思ったよりも軽くて心配になるってらんらん言ってたけど俺の想像の倍軽くてびっくりした。
「すちくん体重かけて平気やからね。」
「うん。」
「そういえばすちそろそろ飯食わなくていいのか?」
「確かに。」
「すちくんお腹空いてる?」
「空いてないからいらない。」
薬を飲ませないといけないので食べてもらわないと。
「ならゼリーは食べれそ?」
「……ならたべる。」
「わかった。」
「俺は薬用意するわ。」
二人が率先して動いてくれるから呼んで良かった。
いるませんせいはしばらくご飯いらないって来てたけど心配やし見に行かんと。
「はいみこちゃんすちくんにあげて。」
「まかして。」
お皿とスプーンと一緒にこさめちゃんが持ってきてくれた。
吸う力も大分無くなってきてるっているませんせい言ってたから。
「いや移さないとあげられないでしょこさめ。」
「あっ、そっか。」
「薬と水ここ置いとくな。」
「ありがとうなっちゃん。」
「俺少し席外す。……。」
「ほけ。」
スプーンにゼリーを載せてすちくんの口元まで持っていくと食べてくれた。
「すっちー美味しい?」
「……ん。」
「食べれなさそうやったら言ってね。」
「あと少しならたべれる。」
「ならもうちょっと頑張ろ。」
二、三口食べてからもういらないと言われたので薬を飲ませる。
「すっちー飲めた?」
「のんだよ。」
「ほんとだ全部飲んでる!偉いじゃん。」
「うん。」
らんらんに撫でられて嬉しそう。
そろそろいるませんせいにもご飯食べせないと。
らんらんも食べ終わったみたいなのですちくんを頼むことにした。
「すちくんらんらんとこ行く?」
「まだいかない。」
「ほぇ。」
あれさっきらんらんからなかなか離れへんかったのに。
「おいですっちー。」
「いかない。」
「なんで?」
「ならこさめがらんくんに抱っこしてもらおうかなぁ。」
珍しくこさめちゃんの方から、らんらんに近づいていく。
「だめ!」
今日一大声を出したすちくんに三人揃って固まる。
「だってみこちゃんがいいんでしょ?ならいいじゃん。」
「らんらんのとこいく。」
「ほらおいですっちー。」
らんらんにすちくんを預けているませんせいのご飯を作りに行く。
「なっちゃんおかえり。」「んただいま。」
「なつくんゲームしない?」
「お前ら他人の家でなんで勝手にゲームしようとしてんの?」
「すちくん、すちくんゲームしてもええ?」
「いいよぉ。」
「うし、すっちーもこう言ってるしやるか。」
すちを抱きしめながら二人のゲームしてる姿を見てるとキッチンにいるみことからラインが来た。
『いるませんせいにご飯持っていきたいんやけど。すちくんずっとドア見とるからそらしてくれへん?』
視線をずらしてすちを見ると確かにドアをずっと見つめていた。
いるまが来るのを待ってるんだろうな。
「すっちー寒くない?」
「だいじょうぶ。」
「眠くない?」
「ねむくないよぉ。」
中々そらさないなぁ。
とりあえず協力者増やすためにゲーム中の二人にもラインを送る。
すぐに既読がついた。
さてどうくるかなぁ。
「すっちー今の見てた?こさめ凄かったんやけど。」
「ごめんみてなかった。」
「もう見といてよ!」
「せっかく勝てたのに見てもらえなくて残念だなこさめ。笑」
「もうなつくん嫌いになるよ?次はちゃんとみててね!」
「うん。」
目をそらしたと同時にみことが出ていく。
あいつこういう時は行動速いんだよね。
「あれ。みこちゃんいない。」
ドアの閉まる音でバレた。
「みこち多分トイレじゃないかなぁ?知らんけど。」
「そっかぁ。」
それから暫くは二人のゲームしてる姿をすちと見てた。
急にすちが動き始めたのでまた落ち着く体勢を探してるのかと思ったら違ったみたい。
「どうした?すっちー。」
「俺もやりたくなってきちゃった。」
「ならやろうぜ。」
「けど手に力入らないから。」
「なら、オレが操作するからすっちーが指示出して。」
「うん。」
とりあえず体制を変えてもらわないと見ずらいだろうな。
「すっちー体制ちょっと変えようか。」
「うん。」
「右側に寄ってくれればいいから。」
「うん。」
暫くすっちーも楽しんでゲームに参加してたからよかった 。
ふと目を覚ますと誰かが傍にたっていた。
「すちか?」
「すちくんやないよ。」
そうだった。
あいつはもう歩けないんやった。
「みことか。」
「体調大丈夫そう?」
「まぁ寝たから結構良くなってきたわ。」
「寝不足やったんか。」
「みたいやな。」
「お粥持ってきたけど食べれそう?」
「あんがと。」
「食べ終わって薬飲むまで傍おるからね。」
「はいはい。ところですちは?」
「今は落ち着いとるよ。でも、いるませんせいのこと探しとる。」
「ぐずるまで時間の問題やな。」
「そうやね。」
「多分あいつ寝室で寝るの嫌がるだろうからリビングに布団敷いて寝かせてやれ。」
「どこにあるん?」
「寝室の物入れの中に入っとる。」
「わかった!」
「悪いけど頼んだ。」
「うん。任して!」
ほぼ一日寝てたおかげか体調も大分良くなった。
それと同時にすちの様子が心配になり深夜だしどうせ寝てるだろうと思ってリビングに向かおうとドアの前に立つとなにか物音がした。
何かが這ってくるような。
幽霊やったらやばい。
俺出れねぇんだけど。
もしこれが幽霊やなく泥棒やった場合もやばいんやけど。
段々と音が近づいて来てるから俺は覚悟を決めてドアを開けた。
「あっいるまだぁ。」
「すちなんでここに。てかお前這ってきたんか?」
良かった廊下にもしもの時を考えてクッション生地のカーペット敷いといて。
てか鼻カニューレ取れてるし!
「すち息は?辛くねぇ?」
「つらい。」
「なら待ってろすぐ持ってくるから。」
「やだ!はなれたくない!」
「すぐ戻ってくるから。」
「きょういちにちあえなかったもん。」
「それは、ちょっと今日も用事があったから。」
「やだぁ!」
まずいこのままぐずり始めたらあいつらも起きちまう。
「すちわかった。いい子やから数分待ってくれ。」
「やだぁ。」
段々過呼吸になっていくすちの背中を擦りながら落ち着かせる。
「そのままやと呼吸しにくいやろ?」
「……」
「すぐ戻ってくる。約束する。」
「……」
「少しでええから待っててくれるか?」
「ごふんだけがまんする。」
「わかった。なら待っててくれ。」
「ぅん。」
俺は急いでリビングに行きブランケットと一緒に持って行った。
あいつが寝てたであろう布団に添い寝してたんだろうらんとなにかあったらすぐ動けるようにするためだろうソファにみことが寝ていた。
鼻カニューレをつけてやりブランケットを掛ける。
呼吸も落ち着いてきたらしく顔色もだいぶ良くなった。
暗くて良く見えてねぇけど。
「落ち着いたか? 」
「ぅん。」
「寂しいかったよな。ごめんな。」
俺の膝に乗せながら話しかける。
「だいじょうぶ。」
「らんと寝てたんか?」
「うん。」
「俺がいない間何してたん?」
「みんなとげーむした。」
「楽しかったか?」
「らんらんおれがいったとおりにそうさしてくれるときとしてくれないときあってちょっとかなしかった。 」
「酷い奴やな。」
「あとあんまりしょくよくなかったからぜりーしかたべれなかった。」
「でもゼリーは食ったんやなお利口さん。」
「えへへ。」
「そろそろヨーグルトに変えるか?」
「うん。ちょっとのみこみにくくなってきたからヨーグルトのほうがいいかも。」
暫く色々と話しているとすちが眠くなってきたのか喋るスピードが落ち始める。
「いるまちゃんはやくなおるといいなぁ。」
「そうやな。てかなんでわかったん?」
マスクしてるだけでバレるか?
「なんとなく。」
ようやく寝たと思ったらリビングのドアが勢いよく開いて前髪ピンクの野郎が顔面蒼白で出てきた。
「良かったぁ。すっちー居なくなってたから心配した。」
「お前ちゃんとリビングのドア閉めとけよ。俺の部屋まで這ってきたんやけど。」
「えっ。這う力なんてあると思わなかったから。」
「俺もいまさっき知った。」
「どこにそんな体力あったんだよ。ところでいるま体調は大丈夫そう?」
俺の隣に座りながら聞いてくる。
「大分良くなったわ。ありがとな。」
「困った時はお互い様。」
「すちと寝てたんやな。」
「嫉妬ですかぁ?」
「いや別に。ぐずったんか?」
「そうなんだよね。寝室連れていこうとしたら駄々こねられて諦めてオレとみことで何かあってもすぐ対応できるようにソファで寝ようとしたら離れてくれないしで大変だったよ。」
「おつかれ。ところでなつこさは?」
「寝室で寝かせてる。」
「なるほどな。それと、ありがとな。」
「全然。ところでさ、ちょっと話せない?」
「別にええけど毛布取ってきてくんね?このままじゃすちが風邪引く。」
「おけ。」
そそくさとあいつは毛布を取りに行った。
「はい、毛布。」
「あんがと。」
らんから毛布を受け取りすちにかける。
「で、話したいことって?」
「別に大した事じゃないんだけどさ。」
「ふーん。」
「いるま、今から言うことはリーダーとしてのLANからの言葉な。」
「おう。」
「お前も活動休め。これ以上は体もたないだろうしこれからもっとすちに時間を割り当てないといけないだろ?お前まで倒れたら流石にオレらもきついから。」
言い返してやりたかったが正論だったので言い返せなかった。
「これから言うことはリーダーじゃないらんからの言葉な。ほとんど本音。」
「おう。」
「オレらを頼って欲しい。オレたちも少しでもすちと一緒にいたいんよ。いるまが一番すちの看病の仕方を知ってるのはわかってる。けどオレらだって少しでもあいつとの思い出を増やしたい。だからさ予定があるから見ていて欲しいとかじゃなくていいんよ。なんなら毎日来たいくらいだし。」
「つまり、すちに毎日会いてぇってことやろ?」
「うん。」
「別に構わねぇよ。」
「ほんとに?」
「嘘ついてどうすんだよ。」
「お前ならダメって言うと思ったんよ。」
「少しでも楽しかった時間を作って見送ってやりたいからな。」
「そうだよね。はぁ、結構言うか悩んでたのがアホらし。」
「今気づいたんかアホなの。」
「お前のそういうとこほんと腹立つわ。」
「で、話はそれだけなんか?」
「少し昔話と言うか思い出話しない?」
「なんでまた急に?」
「なんとなく?」
「意味わかんねぇ。」
「オレさすっちーがいるまと付き合うって言った時こいつ何言ってんだって思ったんよ。」
「へー。理由は?」
「だって、すっちーといるまあんま出かけてるとこ見た事なかったし、二人きりになってもそんな雰囲気出してなかったから。」
確かに俺もすちに告白した時好きだと言われて驚いた。
あいつ隠すの上手いし誰にも相談せんかったみたいやし。
俺はなつには相談しとったけど。
「俺やってこいつに告白するまでこいつが俺のこと好きなんて知らなかった。てか、お前らもやろ。」
「だってからかわれるの目に見えてたから。付き合うか振られるまでは黙っておこうと思ったの。案の定からかわれたけど。」
確かなつとからかったんよな。
すちはそん時どんな顔しとったけ?
「どっちから告白したん?」
「おっ!のってきたな?このまま恋バナするか?」
「しゃーなし、付き合ってやるよ。」
「長くなるけど寝るなよ?」
「お前風邪引いるやつにそれ言うか?」
「質問してきたのいるまじゃん!」
「大声出すなや。」
「ついつい。」
「はぁ、俺が寝るまではだからな。」
「はいはい。で、質問の答えなみことからだったよ。」
「へぇ。俺はお前からやと思ってたわ。」
「なつこさにも言われた。けど、すっちーはなんも言ってこなかったな。」
「興味無かったんじゃね?w」
「お前ほんとさぁ、」
誰かがめっちゃ大声出してる。
すちが起きんだろうが静かにしろや。
「……き!」
「まにき!らんくん!おきて!」
「……こさめ、うるせぇよ。」
「なんで廊下で寝てるんよ。風邪酷くなるし、すちくんに風邪うつるやろ!」
「おはよぉ、こさめ。朝から元気たね。」
「もう、らんくんも!」
そうだった。
すち抱いたまま寝落ちたんやった。
みことが起きる前に部屋に戻らねぇと。
立ち上がろうとした瞬間リビングのドアが開いた。
俺、終わったやん。
「らんらん、いるませんせい。すちくんと廊下で何しとるん?」
「これは、その、ねぇ、いるま。」
「その、これはすちから来て。」
「すちくん歩けへんのに行くわけないやん?」
完全に怒ってる。
当の本人は寝てるし。
「とりあえず廊下寒いからリビング行った方がええと思うんよ。ねぇ、なつくん。」
「みこと、とりあえずリビングで話そうぜ。」
リビングに向かい布団にすちを寝かせる。
熟睡してるみたいで嬉しいんだかなんだかよく分からん気持ちになる。
「で、なんで廊下で寝とったん?」
みことの前で二人して正座する。
「えーっと。深夜かな確か、起きたら隣にすっちーいなくて慌てて探しに行ったらいるまと一緒にいたって感じです。」
「起きたら廊下から這うような音がしてドア開けたらすちがいました。」
「おっ。すち起きたか。おはよ。」
「すっちー、おはよう!」
「ひまちゃん、こさめちゃんおはよぅ。」
「すちくんおはよう。」
そう言いながらすちの元に笑顔で向かうみこと。
「すちくん。あのな質問あるんやけど。」
「なぁに?」
「夜中いるませんせいのところ這って行ったってほんと?」
「うん。そうだよぉ。」
「そうやったんやね。すごいねすちくん。」
この日は珍しくすちの機嫌が一日よかった。
季節は巡りみことの生まれた月が来た。
大分秋と言うには朝晩冷え込むようになってきた。
それでも、あいつの生きる強さはこんなにもあいつとの思い出を沢山作らせてくれた。
本当は病気なんてもう治ってんじゃないかと思った。
だからだろう。
神様とかいう奴の最後の悪あがきに苦しめられるなんて。
「おじゃまします。いるませんせい。」
「あれ?今日らんが来る予定やなかったか?」
「急用で来れんくなって変わりに俺がきた。」
「まぁ、来てくれるだけでも助かる。」
「すちくんは?」
「今は寝てる。気になんなら見といてくれると助かる。俺は買い物に行きてぇから。」
「わかった。まかして。」
とりあえずみことにすちを頼み家事を済ませ買い物に行こうとした矢先の事だった。
いるませんせいに頼まれてすちくんの様子を見に部屋に入ると気持ち良さそうに寝てるすちくんがいた。
いつもならこの時間は起きてるのになんて思っていると急に呼吸が荒くなって血を吐き始めた。
「いるませんせい!すちくんが!」
慌てているませんせいを呼ぶ。
「いるませんせい!すちくんが!」
みことの声で慌てて駆け寄ると前見たあの光景が蘇る。
まだ、逝かせる訳には行かねぇんだよ。
「みこと、救急車呼べ。」
「……」
「みこと!大丈夫やから、救急車!」
「……ゎかった。」
「すち、大丈夫やからな。すぐ救急車来るから。あと少しの辛抱や。」
みことにほかのメンバーにも連絡してもらいすちの治療が終わるのを待ちながらあいつらも待つ。
「いるま。」
「よう、らん。」
「大丈夫?顔色悪いよ?」
「みことたちは?」
「みこち落ち着かせるために外にいるよ。」
「そっか。」
「みことから話は聞いた。前回より酷かったって。」
「らん、あいつまだ死なねぇよな。」
「いるまがそう思ったらそうなっちゃうよ。けど、オレは帰ってくるって信じてる。」
「そうだよな。余命宣告よりも長生きしてるもんなあいつ。」
「そうそう。」
「いるまが弱気とかお前すちと永く一緒にいんのに馬鹿じゃねぇの?」
「なっちゃんたちおかえり。」
「らんらん、ぎゅってしてええ?」
「おいでみこち。」
「すちくんなら大丈夫!こさめたちとまだまだやりたいことしかないやろ?」
あいつらの励ましがなかったらきっと立ち直れなかっただろな。
「お久しぶりです。皆さん。と言ってもいるまさんは定期検診でよくお会いしてますが。」
「すちはどうでした?」
「どうにか一命は取り止めました。それと前回のことについてお話しましょう。前回言った訪問医師の件です。」
「わかりました。」
「ここからは看護師が案内します。」
「いるまさん、ご案内します。」
いるまが看護師さんに連れられて別室に行くのを見送る。
「あの、訪問医師ってどういうことですか?」
「皆さんにもお話しますね。」
そう言ってオレらも別室に案内された。
「すちさんですが、日に日に弱っていました。」
勿論オレたちは気づいていた。
「病院に来るのも辛いだろうと我々も心配になり訪問医師と言って自宅に医者が赴く制度を使ってみてはどうかと提案していたんです。」
全然知らなかった。
なぜオレたちには話してくれなかったんだろう。
「でも、すちさんご本人がそれを嫌がったんです。」
「すちくんが?」
「彼は本当に頑張り屋さんですよ。辛いだろうに『生きたい』って気持ちが強い子で。」
「確かに俺たちが見ててもそうだった。」
「ですが、彼がまた吐血した場合かなり生きられるタイムリミットが迫っているってことは伝えていました。」
「てことは、もう永くないんですね。」
「脈は大分安定してきましたがもう、目を覚ますことがない可能性がかなり高いです。それと、今まで使っていた薬ももう使えなくなりました。」
「それって、」
「つまり、もうすちの体には合わないってことですか?」
「今まで使っていた薬は症状を遅らせることに特価していました。ですが、もうそれすら効き目がないとなるとあとはなるべく痛み等を抑える薬しか残っていないんです。」
いるまからは強めの薬とは聞いていたが、何に強いかは言ってなかった。
多分あいつなりに気を使ったんだろう。
「皆さんにお願いがあります。」
「なんですか?」
「あの二人を私の分まで見守っていてあげて下さい。そして、いるまさんを皆さんが支えてあげてください。」
話が終わりオレたちはすちの病室に向かった。
前は人口呼吸器なんて付けなくても元気だったのに今はもう、付けなければ生きられなくなってしまった。
「お前らの方が先に来てたんやな。」
「話は終わった?」
「あぁ、手続きもしてきた。」
「それって申請したってこと?」
「そう。すちにはずっと黙っとったけどいつでも済ませられるように準備はしてたんだわ。」
「……ひどいね、いるまちゃん。」
声の持ち主の方を慌ててみるとすちと目が合った。
「すち!」
いるまが走ってすちを抱きしめに行く。
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話が終わりオレたちはすちの病室に向かった。
前は人口呼吸器なんて付けなくても元気だったのに今はもう、付けなければ生きられなくなってしまった。
「お前らの方が先に来てたんやな。」
「話は終わった?」
「あぁ、手続きもしてきた。」
「それって申請したってこと?」
「そう。すちにはずっと黙っとったけどいつでも済ませられるように準備はしてたんだわ。」
「……ひどいね、いるまちゃん。」
声の持ち主の方を慌ててみるとすちと目が合った。
「すち!」
いるまが走ってすちを抱きしめに行く。
すちを抱きしめながらあいつの温もりを感じ取った。
もしかしたら目が覚めないかもしないと言われていたのにこいつは本当に想像以上のことをしてくれる。
「……ごめんね。いるまちゃん。めいわくかけて。」
「お前が生きてさえいてくれればそれでいい。」
「すちくん。」
「……みんなきてたんだ。」
「心配したよ。けど、よかった目が覚めて。」
「それと、すちお前1週間入院な。」
「……かえれないの?」
「お前血吐いといてすぐ帰れると思うなよ?それに少しやりたいことあんだよ。」
「大丈夫オレたちが見舞いに来るから。ね!みこち!」
「うんうん!来るから気にせんでええよ。」
「……わかった。」
病院からの帰り道あいつらに事情を説明した。
「なんで、すち退院させなかったん?」
「お医者さんは別にええって言ってたけど?」
「部屋の模様替え。」
「なんでまた。」
「リビングにベッド移したいのとあいつのこれからに合わせて訪問医師と打ち合わせ等やんねぇといけねぇから。」
「模様替えなら俺とこさめちゃんで手伝うよ?」
「サンキュ。意外とやらねぇといけねぇこと多いから手伝ってもらえるとありがてぇ。」
「最後まで俺らはお前らを全力でサポートするけぇなんでも言えよ?」
「ありがと。」
退院してから一週間は起きてる時間が多かったが最近は基本寝てる時間が多くなった。
起きていても話しかけても返事が返ってこないことが多くなったがそれでもあいつが必死に生きようとしてることはわかった。
すちが退院してから俺もリビングに布団を用意して寝るようになった。
いつでもすちに何かあった時対応できるように。
そして、みことの誕生日が来た。
「おじゃまします。」
「邪魔すんでぇ。」
「おじゃまします。」
「すっちー遊び来たぞー。」
「お前らうるせぇな。」
「起こしてやろうと思って。」
「いるまなにか手伝おうか?」
「こさめも手伝うで!」
「みことは大人しく座ってろよ、今日の主役なんやから。」
「みことはすっちーの相手してて、次手伝いでもしようとしたら、ね?みこち。」
「·····わかってます。」
リビングに戻るがあいつは寝ていた。
よくこんな騒がしくても寝てられんな。
まぁ、薬と病気のせいなんやけど。
「すっちー寝てんのか。」
「パーティー始まったら流石にうるさくて起きるでしょ。」
「会議前によく気絶してたやつやからあんま信用ねぇぞ?」
あいつらが手伝ってくれたおかけで早く準備が終わった。
「そういえば、今日は誰が泊まってくん?」
「今日はこさかな?」
「あんま呑むなよ?」
「わかっとるよ!」
「さて、準備も終わったし始めますか。みこち、誕生日おめでとう!」
「おめでとう、みこちゃん!」
「みこと、おめ。」
「おめでと、みこと。」
「ありがとう!みんな。」
プレゼントを渡したりなんだかんだしていると時間はあっという間に過ぎた。
「すっちー結局起きんかったな。」
「しゃーないやろ。」
「すちくん、また来るね。」
「……みこ……ちゃん?」
「あっ!すっちー起きた!」
「すちくん、おはよ。よく寝れた?」
「…ん。……みこちゃん。……たんじょ…うび……おめで…とう。」
「ありがとう。グスすちくんの誕生日も盛大に祝うからね。」
「……たのしみ…にしと…くね。」
久しぶりにすちの笑った顔を見た。
「すちくん笑っとる。」
「これは、いいもん用意しないとな。」
「ありがとな、お前ら。久しぶりにすちの笑ってるとこ見たわ。」
「すっちー、オレら帰るけどまた遊び来るね。」
「……うん。」
あいつらに礼を言いながら見送った。
「すち。」
「……なぁに?」
「プレゼントなに欲しい?」
「……とくに……ない…かな。」
「そっか。なら、お前の欲しそうなやつ適当に買うわ。」
「……うん。」
「だから、まだ逝くなよ?」
「……うん。」
12月に入ると益々すちの症状が悪くなっていった。
今では俺は活動を休んでるし、あいつらも個人配信を1枠に減らすのと公式配信も告知等して終わらせるようになった。
診察も2日に一回のペースに変化していった。
今日はすちの誕生日に向けてプレゼント等案を練るためにあいつらが集まっている。
すち本人に聞かれたらどうすんだか。
「オレはブランケットがいいと思うんだけど、どう?」
「こさめはパジャマがいいと思う。これから寒くなるだろうし。」
「俺もパジャマがええと思う。」
「俺はらんと同じでブランケット。」
「やっぱり割れるよなぁ。」
「最悪二つ渡すっていうのもありやない?」
「いるまはねぇの?すちに必要なもんとか。」
「別に今んとこねぇしな。」
「すちくんが欲しがってものとかは?」
「前聞いたけどねぇって言ってたしな。」
「もう、使えない彼氏だな!」
「使えない彼氏でどうもすみませんね。」
結局両方渡すことにしてこの日はお開きになった。
12月17日
すちの誕生日前日。
今日はらんが泊まる日だった。
いつも通りの日常だった。
天気予報では夜から雪なんでほざいてて最悪だなんて言ってた。
「すち、今日起きなかったね。」
「今月入ってから起きてたのって片手で数えられるくらいやな。」
「明日は起きてくれるよね?」
「きっと起きんだろこいつの事だから。みことの時もあるしな。」
「そうだよね。」
「お前も早く寝ろよ?作業とかしてたらぶっ飛ばすかんな?」
「はいはい。もう寝ますよぉっだ。」
すちの頭を撫でながら、らんがおやすみの挨拶をする。
「おやすみ、すち。また、明日ね。」
そう言って俺の使っていた部屋に入っていく。
俺も寝ようと準備をしてると名前を呼ばれた気がしてすちの方を見た。
「すち、起きたんか。」
「……いるま?」
「俺はここにいるぞ?」
「……あのね。」
「ん?」
「……ぎゅ……してほ……しい。」
起きたと思ったら急に甘えて来んなよ。
危うく叫ぶとこやった。
一旦すちを車椅子に移す。
すちの生命を繋ぐものを調節して俺はソファに座ってすちを抱きしめる。
「急に甘えるなんてどうしたん?」
「……なんと……なく。」
「そうか。」
カーテンの隙間から外を見ると雪が降っていた。
「すち、雪降って来たぞ。これは明日も雪やな。」
「……くりす……ますに……ふれば……よかった……のに。」
「確かにな。寒くねぇ?」
一応何重にも毛布はかけてるが一応確認する。
「……だいじょぶ。」
「ならよかったわ。」
「……あのね……いるま。」
「ん。」
「……おれのこと……すきに……なって……くれて……ありがとう。」
「俺の方こそこんな俺のこと好きになってくれてありがとな。」
「……おれ……ずっと…………いるまの……こと……あい…………してる……よ。」
「俺も愛してるよ。」
「……いま……まで……ありが……とね。」
「急に改まるなよ。怖ぇよ。」
「……いま……いい…………たかっ……たから。」
「そうかよ。」
「……おや……すみ。」
「ん。おやすみ。いい夢見ろよ。」
時計の針が12時を指した時の事だった。
すちが大きく息を吸った音がした。
まさかと思って確認しようとした瞬間、機械の警報音がなった。
けたたましい警報音で慌てて飛び起きてリビングに向かうとすちを抱きしめたまま大泣きしてるいるまの姿が目に入った。
いるまがこんなに泣いてるってことは……
機械の警報音を止めてすちの担当医に電話する。
『どうされました?』
「機械が警報鳴らしてて、モニター見ると心拍数がゼロになってて。」
『いるまさんは?』
「すち抱きしめて大泣きしてます。蘇生した方がいいですか?グスこのままはダメですか?グス」
『今から向かいますね。他の皆さんにも連絡してあげてください。』
「……わかりました。」
みんなに連絡し、急いで来るように伝えた。
「いるまさん。少しでいいのですちさんのこと観させて貰えませんか?」
「いるま、大丈夫だから。」
「……いやだ。」
「わかりました。手首だけでもいいので診察させてください。」
抵抗しながらも片手だけならいいのか医者に観させるいるま。
「12月18日、午前12時15分。お亡くなりになりました。すちさん、よく頑張りましたね。いるまさんも、すちさんを最期まで見守られて、よく頑張りましたね。」
「先生、短い間でしたが、ありがとうこざいました。」
「沢山褒めてあげてください。こんなに頑張って生きたんですから。落ち着いたら連絡ください。」
「はい。」
お医者さんが帰ったあと皆が来た。
「すちは?」
「すちくん大丈夫?」
「まにきも心配なんやけど。」
「みんな一旦止まって。リビングに行く前に言うことあるから。」
「まさか、」
「そんなん聞きたくない。」
「すちは……もう。」
「なんで、今日なん?」
「ほんと、神様っておらんのや。」
「みんな、頑張ったすちとそれを支え続けたいるまを褒めてあげて?」
そう伝えてリビングの扉を開ける。
いるまはずっとすちを抱きしめたまま離さなかった。
「いるま、」
「すちくんと会わせてくれへん?」
首を振って拒否する。
「いるませんせい。」
「まだ、すちに誕生日おめでとうって言ってねぇのに。」
「そうやね。」
「最期の会話があんなのってなんでだよ。」
「いるま。」
「まるで、自分がいつ死ぬかわかってたみたいに。」
すちを抱きしめるいるまの手に明らかに力が入ってる。
「なんで、」
「いるま!それ以上力入れたらすちが可愛そう。苦しそう。」
「ごめんな、すち。」
そのままベットに運ぶいるま。
「よく、頑張ったなすち。お前は偉いよ。」
「いるま。」
「みんなも褒めてやってくれ。」
あれから半年過ぎたけどいるまは未だに立ち直れないのか活動に復帰してこない。
だけど、裏方の仕事はしているから大丈夫だとは思う。
「流石に様子見に行った方が良くねぇか?」
「一応連絡取ってる分には大丈夫そうやけど、まだ荷物とかそのままなんやないかな。」
「医療器具とかそういうのは返されてるらしいよ。」
「あいつまさかとは思うけど。」
流石に心配で様子は見に行きたい。
「オレとこさめ、この後打ち合わせあるんだよね。」
「なら、俺とみことで行くけぇ気にんすな。それに、彼女組が行くのが一番あいつには辛いだろうし。」
「なら二人ともお願い。何かあったら連絡して。」
「おう。」
いるまの家の前に着きインターホンを押すが反応がないから勝手に合鍵使って部屋の前まで来た。
「出かけとるんかな?」
「ラインも既読になってねぇからなんとも言えねぇ。」
とりあえずインターホンを押す。
「なんか聞こえたか?」
「微かに物音は聞こえるけど。」
合鍵で開けようと思ったら中から鍵の開く音がした。
「……はいってお前らかよ。」
「よう、いるま。寝癖すげぇな。写真撮っていい?」
「無理に決まってんだろ。」
「寝てたんやね。ごめん。」
「別にええけど何かあったんか?」
「ちょっとお前の様子見に来た。」
「まぁ別に構わねぇけど、とりあえずあがれ。」
部屋にあげてもらいリビングにいく。
途中すちの部屋が見えたがドアが閉まっていて中は見れなかった。
リビングに着くとあいつがコーヒーを持ってきてくれた。
「まぁ、飲めよ。」
「ん、あんがと。」
「ありがとう。」
「で、なんでわざわざ様子見に来た?別にいつも通りラインかdiscordで話せばええやろ。」
「お前飯はちゃんと食ってんのか?」
「……食ってるけど?」
「ちゃんと寝れとる?」
「寝れとるけど?もしかして心配してんのか?」
「そりゃあ、半年経ってんのに未だに活動復帰しなきゃ心配になるに決まってんだろ。」
「あー、たしかにな。」
「無理にとは言わんけど、リスナーの皆も心配しとるよ?」
「復帰しようとは思ってんだよ。けど、すちのこと言われたらって思っちまって。」
やっぱりまだ立ち直れてねぇのな。
「いるませんせい。」
「ん?」
「すちくんの最後の願い探したいんやけどええ?」
「書いてるとは限らねぇd」
「すちくんのことやからきっと書いとるよ!」
「なら、今度にしてんくね?」
「なんで、」
「今日お前ら公式配信やろ。それまでに俺は資料とか作らねぇといけねぇから。」
「わかった。ただし、配信出なくていいけぇ見とけ。コメントを特にな。」
「わかった。」
らんの作戦を決行する日が来た。
なっちゃんから連絡をもらって例の作戦を決行することにした。
「みんな、わこふぉにー!残念だけど今日もオレが司会です。声とか大丈夫そう?」
『いるまくんまだ立ち直れないか』
『大丈夫です!』
『聞こえてます!』
『らんらん、こんばんは!』
「今日はね、みんなに聞いて欲しいことあるから早速メンバーにも出てきてもらうね。」
『まさか脱退しちゃうの?』
『そんなのいやだ!』
『いるまさんとすちさんがいてシクフォニだったのに』
『まにき帰ってきて欲しい!』
「ばーか。いるまがそう簡単に辞めるわけないやろ。」
「そうそう、脱退する訳やないから安心してー。」
「もう、らんらんが不穏な言い方するから。」
「えー、これオレが悪いの?」
『らんらんが仕掛けてきた』
『らんくんが悪い!』
「お前ら相変わらず冷たいのな。」
『話ってなんですか?』
『もしかしているませんせい帰ってくる?』
「いるまのことなんだけど、皆に約束して欲しいことがいくつかある。なっちゃんから言ってもらってもいい?」
「あいつが帰ってきたとき、おかえりって言ってやって欲しい。がんばったなって。」
「まにきに今まで、配信どうしてたか伝えて欲しい!らんくんじゃ頼りにならんのよ。ほんまに。」
「おい!こさめよりましだかんな?」
「けんかしない!」
「いるまが帰ってきた時、なるべくすちの話は避けてあげて欲しい。本人がすちの話をするまでは、ね?」
「もちろん、俺たち全員揃ってシクフォニやけど、すちくんのこと忘れず覚えてて欲しい。」
「で、配信聞いてるか知らねぇけど。いるま!お前の帰りを待ってるヤツらがこんなにいるんだけど、いつまでうじうじしてるつもり?早くしないとオレのリスナーになるよ?」
『それは無いから大丈夫』
『らんくん以外のリスナーになるから平気』
『元々らんくんリスナーだから安心して』
『まだ、復帰しなくてもまにき推しのままだよ!』
「お前ら相変わらずほんと冷たい。オレじゃなきゃ泣いてるよ。」
『いるませんせー見てたらコメ見てほしい!』
『いつまでも待つよ』
『Xは浮上してくれると嬉しい!』
少しはこれで立ち直ってくれたらいいんだけど。
配信を見ろと言われて見ていたが多分俺にこれを見せたかったんだろう。
わかってるんだよ、待たせてることは。
コメ欄見れば俺を励ましてるヤツらがいる。
そんなことを考えてたらあるコメが目に入った。
『そんなんじゃすちくんが心配するよ?』
時々紛れてるせいか誰も気づいていないらしい。
『すちくんのためにも元気になって欲しい』
『すちくんのためにも立ち直って前向いて欲しい』
『すちくんが悲しむよ?』
『すちくんのためにも活動に復帰して欲しい』
シクフォニのファンマの横にすちのマークをつけたやつがずっとそうコメしてる。
明らかに俺に見せるために。
『すちくんの願い叶えてあげてよ。最後まで』
俺にそんなこと出来るわけない。
結局最後の願い叶えられてねぇのに。
配信終わったあとあいつがdiscordに来なかった。
だから、また、みことと一緒にあいつの家に来た。
「このまま強行突破しようぜ。逃げられる可能性あるけぇ。」
「この前と同じ様に部屋まで行くってこと?わかった!」
この前と同じ様に玄関の前に行きチャイムを鳴らす。
「·····はいってまたお前らかよ。」
「よう、いるま。今日は寝癖ないんやな。」
「すちくんの最後の願い探しに来たんよ。」
「俺も一応探してんだわ。」
廊下がちらかってんなぁと思ったらそういうことか。
「なら手伝うわ。」
「あぁ。」
すちの部屋にそのまま通される。
「あの頃のまま残しとったんやね。」
すちがまだ元気だった頃のままにされていた。
「方そうとは思ってたんやけど。そしたら、あいつのこと忘れちまいそうで。」
「とりあえず、手分けして探そうぜ。俺は本棚辺り見るわ。」
「俺は引き出しとか見る。」
「じゃあ俺は小物入れとか見てくわ。」
暫く各々探してると突然みことが大声出してびっくりした。
「あった!あったよ!」
封筒に丁寧に入れられていた。
『終わるその時までにしたいこと、10個目』
すちの字で書かれていたそれをいるまに渡す。
「『大好きな人の温もりに包まれて終わらせたい』って。」
「お前、叶えられたってことじゃね?」
らんから聞いた話を思い出す。
「手紙もあるけど、いるませんせい。」
「読んでくんね?」
「わかった!」
『いるまちゃんへ
これ読んでるってことは10個目見つかっちゃったかぁ。
上手く隠したつもりだったのになぁ。
見つかったってことは俺もう死んじゃった?
ごめんね。病気なんかになっちゃって。
けど、いるまと生きられて嬉しかったよ!
最後の願い叶えられてなくても平気だよ?
ずっと傍にいてくれるだけで俺は幸せだから。
だから、活動なるべく早めに復帰してね?
らんらんたちだけに任したらダメだよ?
それと、これは俺からのお願いね。
俺が死んだ後部屋は好きに使っていいからね?
もし、好きな人が出来たらその人のことを俺以上に幸せにしてあげてね?
俺がいるからとか変な事考えないでね?
幸せになってくれないと俺恨んで出るからね?
どのくらい長く生きられたかわかんないけど、俺よりも長生きしてね?
先に逝って待ってるからね。
俺の分まで頑張る必要は無いけど俺の願いをいるまにみんなに託すね。
ずっと愛してるよ。
すちより( ᐛ )
そうだ、いるまのクマのぬいぐるみグズるたんびにかりてごめんね。
いるまの香りで落ち着くんだぁ。』
「あいついつの間に書いてたんかよ。」
「いるま、すちにこんなこと言われてんのにまだ復帰しねぇつもりか?」
「まだなにか入っとるよ。」
みことからいるまに渡すそれを見るとしおりとメモだった。
しかも二つ。
みことからしおりを受け取り花を見たがなんの花かわからず調べる。
『オウバイとギンモクセイ』だった。
オウバイは俺の誕生日花だった。
「メモにはなんて書いてあんだ?」
「ぅえっと、『オウバイは誕生日に渡す』って書いとるよ。『ギンモクセイはタイミング見て渡す』って書いてあるよ。」
「もしかして、まだ病気が発覚する前なんじゃね?これ用意してたの。」
「たしかに、そうかもしれんな。って、いるませんせい大丈夫?」
あー。
あいつはやっぱりまだ生きたかったんだな。
まだ活動したかったんやな。
「わりぃけど、俺一人にしてくんね?」
「わかった。とりあえず帰るけどなんかあったら言えよ?」
「お片付けぐらい手伝うけど。」
「いや、大丈夫やから。みこと、見つけてくれてありがとな。」
「そんな大したことしてへんよ?」
「そんじゃ帰るわ。行こうぜみこと。」
「おじゃましました。」
あいつらが帰ったあと引き出しとかを見る。
そしたら、俺の予想していた通りとあるノートが出てきた。
『誰にも見せたくない』
まぁ、そう書いてあっても見るんやけどな。
そこに書いてあったのは病気が発覚してからのあいつの弱音だった。
『余命が半年しかないって言われた
まだ、やりたいことあるのに
まだ、みんなと一緒に居たいのに
だけど、心配かけちゃうから、弱音はここにだけはく
みんなの前では絶対に言わない
口に出したら負けた気がするから』
『朝から調子悪くてせっかく出かける約束してたのに行けなかった
悔しい
辛い
なんで、俺ばっかり』
『薬が合わないらしい
すごい気持ち悪い
飲まないといるまが悲しむから飲むけど俺は飲みたくない
辛いのに後どれだけ我慢しないといけない?
生きることってこんな苦痛だったけ?』
『天気いいし、体調も良かったから出かけた
なのに、途中で辛くなって、いるまちゃんに迷惑かけて嫌われてないかな?
いっそ嫌われて捨てられた方が楽なのかも』
『歩けなくなった
もう立つことも出来なくなった
もう、大好きな人に料理とかしてあげられない
ただの荷物だ
そのうち捨てられるかもって不安になる』
『感情がコントロール出来ない
こんなの俺じゃない
こんなにわがままなやつは俺じゃない
俺は俺が嫌いだ』
『だんだんてにちからがはいらなくなってきた
そのうちじぶんでできることがなくなるんだろう
いっそいまおわってしまえばどれだけらくだろう
おれのせいでみんなへのふたんがおおきくなってるのはしっているのに
なんできょうもおれは』
『たぶんきょうでこののーとおしまい
じがかけなくなってきた
だからさいごくらいほんねかく
ほんとはいきたい
らいぶもいっぱいして
みんなとあっちこっちおでかけして
いるまといろんなけしきみたい
みたかった
いるまのことすきにならなきゃよかった
こんなにはやくおわかれしなきゃいけないなんて
さいていなやつだ
てがみのこした
けっこうまえにかいたけど
かいたことはぜんぶかっこつけ
でもほんね
いっしょにとしをとりたかった
きらいになってほしかった
こんなおれのそばにいたらきっとしあわせになれないのに』
最後のページはところどころ濡れていて泣きながら書いたんだろう。
前向きなやつだと思っていた。
弱音を吐かずよく我慢してるなとは思ってた。
けど、それは表向きだったんだな。
気づいてやりたかった。
けど、それをしたらきっとあいつは怒ってたんだろうな。
いるまから呼び出されたのでいるまの家に向かう。
立ち直ってくれてたらいいんだけど。
いるまの家に着きチャイムを鳴らす。
「開いてるから入ってこい。」
流石に呼んどいてそれは酷くね?
まぁ、言わんけど。
「おつおつ、みんな来るの早いね。」
「お疲れ様、らんらん。打ち合わせ無事終わった?」
「うん、問題なく終わったよ。」
「全員揃ったな。」
「なんかあったんか?呼び出すとか。」
「脱退するとかやないよね?」
「そんなんじゃねぇよ。」
「ならよかった。」
あいつとお揃いで買ったペアリングネックレスを握りしめながら伝える。
「まず、一つ目、心配かけて悪かった。」
「そんなん気にせんでええよ。」
「こればっかりはしょうがねぇし。」
「まにきが少しでも前向いてくれたらそれでええんよ。」
「ありがとうな、それと活動復帰するわ。」
「「「「えっ。/ふぇ。/ま?」」」」
「いつまでも立ち止まってたらあいつに怒られるからな。」
「いりゅまぁ!」
泣きながら俺に飛び込んでくるらんを慌てて支える。
「ようやくかよ。」
「悪ぃな待たせて。」
「まにきおかえりぃ。」
「いるませんせいおかえりなさい。」
「来週の公式配信から戻ろうと思ってんだけど、」
「いいよ!いつでも戻っておいで。もう、オレさ、司会向いてないの痛感した。あんなに大量の資料出すの無理だわ。」
「個人配信はどうする?」
「すぐ再開する?」
「ぼちぼち様子みてやっていくってのでええんやないかな?」
「その事なんやけど、公式配信後から復帰するつもりと一時間以上やらせてくんね?」
「そんなに焦らなくてもいいんじゃない?」
「そうそう、ゆっくりでええと思うよ?」
「別に焦ってるわけじゃねぇ。少しでも、あいつに顔向けできるようになりてぇだけ。」
「なら水曜日にやる?」
「なんでまた?」
「すちくんがよく配信してた曜日やから?」
「そう、そっちの方が立ち直ったんだなって思える。」
俺が言う前にらんに言われた。
初めからやるつもりだった。
「いるま、前向くことはいいことだけど、辛いこと悲しいことは隠さなくていいからね?」
「あぁ、わかってるよ。」
「みんなーわこふぉに!今日もオレが司会でごめんねなのと報告があります!」
『ん?なんだろう?』
『何かあるのかな?』
『いるまくん関係?』
「とりあえずみんなに出てきてもらうねー!シクフォニカモーン!」
『らんらんテンション高いw』
『いい事あったのかなぁ?』
『テンション高いのはいいけどイヤホン壊れそうw』
「これ声入っとる?」
「あ゛ーだりぃ。」
「みこちの声が入ってないなぁ。」
「またミュートかよ。w」
「ごめんなさい。ミュートになってました。」
『みこちゃんw』
『なんかだりぃって言ってる人いたなぁ』
『いるまくんまた居ないのか』
「えー、本日を持ちまして、司会が変わります。」
『えっ!』
『らんらんじゃなくなるの?』
『ほかできる人いるかなぁ』
「オレよりも得意なやついるけどなぁ。」
「たしかにツッコミの切れよくて頼りになるんよねー。」
「やっぱりあいつじゃねぇと締まらねぇよな?」
「確かにそうやね。」
「それじゃあ、早速呼んでやりますか。いるまーカモーン!」
『えっ、いるまくん?』
『いるませんせい帰ってきた!』
『まにき(´;ω;`)おかえりなさい!』
「長いこと待たせてごめんな。ようやく戻ってこれたわ。」
俺の手にはすちのペアリングを握りしめる。
首にはちゃんと俺のをつけて。
「てか、俺が居ないと出来ねぇとかお前らほんと、」
配信後いつも通りやるべきことを済ませてdiscordを開くとらんがいた。
「いるま、おつかれ。」
「おつかれ。」
「大丈夫?」
「あー、平気や。」
「でも、よかった。」
「いつまでも待ってくれてありがとな。」
「気にしなくていいよ。オレはオレですちとの約束果たしただけだし。」
「は?」
「みんな、すちとあること約束してんだよね。しかも、一人一人内容が違うんだよね。オレは、『いるまを死なせない』のが約束。」
「そうやったんか。」
「すちがさ、旅立ってから数ヶ月連絡取れない時は焦ったよ。ヤベェかもしんねぇって。」
確かにあん時は誰とも連絡取りたくなかった。
そもそも、世界に絶望してた。
でも、あいつの元に行ったらきっと嫌われるってのはわかってたから必要最低限の生活しかしてなかった。
「裏方の仕事してくれるようになってさ、少ししたら帰ってくるかなぁって思ってたのに一向に帰ってこないしで、正直詰んだなぁって思ってた。」
なるべく生きる原動力が欲しくてとりあえず裏方の仕事をした。
「あのさ、いるま。」
「ん?」
「いるまがいたからきっとすちは頑張れたんだと思うよ。」
「·····」
「今度はすちがお前を生かしてるってオレ思うんだよね。」
「なんで、そう思うん?」
「ペアリングならまだ分かるけどネックレスでしょ?オレなんでだろうって思って、聞いたんよ。すちに。」
確か、すちが選んだ。
『お揃いのやつ何にするん?』
『俺もう決めてるんだぁ。』
『へぇ、どんなの?』
『お店着くまで内緒!』
「いるま、意味知ってた?」
「いや、そんな気にしてなかったわ。」
「やっぱりあいつ言わなかったんやな。」
「教えてくれるんやろ?そう聞くって事は。」
「なんか上から目線なの腹立つな。」
「ええから教えろや。」
「はいはい。『いるまちゃんは指輪好きだしならいいのないかなって思って、そしたらペアリングネックレスって言うの見つけて、ネックレスには絆って意味があるから。ならお揃いのつければ離れ離れになっても繋がってられるでしょ?なんか未練がましくなっちゃうけど。』って言ってたよ。」
「あいつほんと色んなこと知ってんだな。」
「だねぇ。」
「ところで他のやつらはどんな約束したのかお前知らねぇのか?」
「知らないんだよね。いるまが聞けば教えてくれんじゃない?しらんけど。」
仕方ない自分で聞くか。
「それとお前はちゃんと好きな相手には想いを伝えた方がええよ。後悔しないためにも。俺みたいになるからな。」
「うん。ありがとう。それでも、それがいるまのいいとこだと思うけどね。オレは。」
作業しながらdiscordに誰か来ないか見てたらこさめが入ってきた。
「おつかれ。」
「おつかれ、まにき。」
「お前どんぐらい作業するん?」
「うーん。気が向いたら終わらせるよん。」
「あんまやりすぎんなよ?なつが心配するから。」
「うん!」
「こさめ、質問なやけど今ちょっといいか?」
「こさめでわかることならええよ。」
「こさめはすちと何約束したん?」
「なんで約束したこと知ってんの!?」
「らんから聞いた。それもみんな違うらしいっていうのも。」
「そうやったんか。ちなみにらんくんはなんやったん?」
「俺を『死なせないこと』らしい。」
「こさめもそれに近しいで。」
「どんなんやったん?」
「ちょっと用意するから待っててくれん?」
「別にええけど。」
なんの準備をしてるかも分からずとりあえず待つ。
「まだ未完成なんやけど特別やで。」
そう言ってチャットに飛んできたのはあいつの変な絵だった。
「は?」
「やっぱり未完成やからその反応よな。」
「どこがあいつと近しいんや?コレ見て俺は何を思えばええんや?」
「笑って欲しかったんよ!」
「ならいつもみたいにボケればよくね?」
「それじゃあ意味ないんよ。」
意味が全くわからん。
「お前、すちと何の約束したん?」
「まにきを『心の底から笑わせること』。」
「なるほどな。」
まぁ、ボケるよりは絵の方が笑えるわな。
意味が分かればやけど。
ほぼ下書きと思われる状態の見たって笑えねぇわ。
「すっちーがさ、『楽しいこととか面白いことがあればきっといるまちゃんは生きてくれると思うんだぁ。次に会った時にどんな楽しいことがあったのか教えてもらいたいから沢山思い出を作ってほしいんだよねぇ。』って。」
「俺への贈り物あいつどんだけあるんだよ」
「少なくともあと二人残っとるね。」
「まぁ、こさめありがとな。」
「まだ、笑わせてないから守れてないんやけど。完成させたら笑わせたるからな!」
急になつからラインがきた。
『一緒に出掛けねぇ?』
了承して近くの駅で待ち合わせをすることにした。
「なんで、急に誘ってきた?」
「んー。何となく。」
「どっか行きたいとこあんのかよ。」
「別にねぇ。とりあえずどっかフラついてようぜ。」
何も考えずとりあえず色んな店を見て回った。
色々と見てると
[すちはこういうやつ好きだよな]とか
[すちこれ欲しがりそうとか]とか
[これ買って帰ったらどんな反応するか]とか
ついつい考えて虚しくなる。
「腹減ったし飯食おうぜ。俺いい店知ってるけぇ。」
「おう。お前に任せるわ。」
あいつの後について行くと落ち着いた雰囲気の喫茶店に着いた。
「ここの飯美味いらしいんだわ。」
食事を終えてゆっくりしてると
「お前今死にてぇとか思ってねぇよな?」
「は?」
活動にも復帰してまぁ、そんなに前以上の配信とかはしてないが心配されるようなことはない気がする。
「そう思う節あったか?」
「いんや。ほら、俺とお前性格似てるけぇ。後悔してることとか多そうやし。」
「まぁ、確かにあいつにもっと色々としてやれたんじゃないかとかは思う。けど、あいつの元に行こうとは思ってねぇよ。」
「なら、いいんだけどよ。」
煮え切らない返事を返される。
「なんかあんのか?」
「俺もお前もあんまり素直に伝えられないやん。」
「確かに、あいつも同じやったけどな。」
「前にこさめが言ってたんやけど、いるまよりすちの方が意外と愛が強めらしいぞ?」
「そうか?」
「まぁ、俺からすればどっちもどっちだけどな。」
「お前にだけは言われたくねぇ。」
「なぁ、いるま。」
「なんや?」
「やっぱりいいや。」
呼んどいてなんなんやか。
その後も適当にあっちこっち興味のある店に入って帰ろうとした時だった。
「いるま。」
「ん?」
「俺がすちとした約束は、」
今日は配信の予定もないしでとりあえずshortでも撮っとくかって思って作業してたらあいつが来た。
「なんや、みこと。」
「ご飯作りきた!」
「は?」
玄関開ければズカズカと勝手に進んでいくみこと。
「俺頼んでねぇけど?」
「今日はいるませんせいと一緒にご飯食べたい気分やったから。」
「はぁ。俺は何すればいい?」
「今から作るもの言うからそれに必要なもの用意して欲しい!」
みことの隣に立ってあいつの言う通りに食材を切っていく。
「いるませんせい手際ええね。」
「そりゃあ、すちが。」
すちがああなった後俺が作るようになった。
最初はすちが作っていたが進行していくにつれていつか倒れんじゃないかと不安になった。
だから、なるべくあいつが元気なうちにと色々と教えてもらった。
おかげで今ではみことと並んで料理できるようになるとはな。
「らんとは作んねぇのか?」
「うーん。作る時もあるけど基本俺が作っとる。」
「嫌なんか?」
「嫌やないよ。けど、俺が作ったご飯を美味しいって食べてくれる表情が好きなんよ。」
「へぇ。」
「聞いといてそれ酷いと思うんやけど。」
「まぁ、その気持ちも分からんでもないからな。」
作り終え向かいあわせで食べる。
「そういえばらんはどうしたん?」
「今日はなっちゃんとこさめちゃんとご飯行くって言うとったよ。」
「へぇ。」
珍しいこともあるんだな。
「なぁ、みこと。」
「んぇ?」
タイミング悪くあいつが口に運んでる時に声かけちまった。
「すちと一番仲良かったやん。」
「ん。そんなことないと思うけど。」
「お前ら性格似とったやん。」
「そうやね。」
「俺の事なんか言ってなかったか?」
「なにかって?」
「例えば愛情表現が下手とかちゃんと好きなのかわかんねぇとか。」
「らんらんが前に聞いとったけど。その質問。」
「なんか言ってたか?」
「俺もやけどさ、すちくんもすちくんで、あんまりそういう事言うの得意じゃないんよ。けど、すちくんは遠回しでもそいう気持ちは伝えたいって言っておったし、いるませんせいにちゃんと愛されてるって思える瞬間があるって言っとたよ。」
「……それならいいんやけど。」
「なんかあったん?」
「いや、気になったから聞いただけやから気にすんな。」
「ほけ。」
「みこと、お前はあいつとなんの約束した?」
「俺はね、『生きることに迷子になってそうだったら手を差し伸べてあげて』って約束した。」
やっぱり。
彼女組の二人には守りやすい約束を。
なのに、なつとみことには難しい約束を。
ちゃんと見てないと気づけないことをあいつは約束にしたんだな。
「なっちゃんとはどんな約束してたん?」
「なつとの約束は、」
「俺がすちとした約束は、『生きることを諦めてそうだったら俺の声真似で叱責して。それでも、無理そうだったら本当は嫌だけど俺はそんな姿見たくないから嫌いって言って。』これどう聞いても約束と言えねぇだろ?」
「結構グサッとくることを。」
「あいつらしいっちゃらいしけどな。」
「いるませんせいは今でもすちくんのこと好き?」
「好きやけど?」
「よかった。」
「なんや急に。」
「なんでもない。気になったから聞いたんよ。」
あいつが去って2年が過ぎた。
そして今日、
「ようやくここまできたー!」
「長かったよな。」
「色々あったもんね。」
「いるま、ちゃんと持ってきた?」
「ちゃんとあるよ。」
すちの大切な形見のペアリング。
ライブの時は必ず首から下げるようにしてた。
「すちすごいよ。見えるかな?てか見てるか。」
「見ててな!絶対成功させたるからな!」
「で、らんはまた泣くと。」
「うるさいよ!なっちゃん。」
すち、お前のおかげで今日まで来れたぞ。
多分お前との約束のためにあいつらも頑張って来れたぞ。
「家出る前ちゃんとすちくんにお花添えてきた?」
「あぁ、添えてきたよ。」
「何添えたん?」
「白いルピナスをな。」
「ほぇー。後で花言葉教えてな?」
「その前に成功させることを考えろ。」
「それじゃあみんないくよー!」
俺が死んだ後きっと彼は生きる気力を無くしてしまうかもしれない。
俺が死んだ後誰かが彼を助けてくれるだろうとは思う。
けど、もし彼に感化されて一緒に来たりしたら大変だし、夢を諦めて欲しくないから無理やり『約束』と言うなの呪いみたいなものを彼らに託した。
彼は優しいからきっと『こうすればよかった』『ああしてやればよかった』なんて考えてしまうと思うから。
俺は俺なりに幸せな時間を彼と歩めたからそんなこと考えないで欲しい。
彼が来るまで俺はゆっくり待っていようと思う。
どんな人生を歩んでここに来るのか楽しみ。
その時は沢山『愛してる』って言うんだ。
病室の窓の先を眺めているとふと誰かに呼ばれた気がした。
気のせいだろうとまた外を眺めていると季節外れの雪が降ってきた。
もう5月というのにおかしいな、なんて思ってると窓に反射して写ってい人物に驚く。
ボロボロな翼が背中に生えていて、とうとうその時が来たんだなんて思いながらその人物に顔を向ける。
「もう、時間か?」
驚いた顔しながら俺のよく知ってる笑顔で手を差し伸べてくる。
「お前には似合わないな、そんなボロボロの翼なんて。」
差し伸べられた手に触れるとボロボロだった翼が綺麗な形になった。
どうなってんのか気になったがまぁ気にしなことにしておく。
「お前だけズルくね?」
そんなことを言えばあいつが笑いながら俺の背中を指さす。
なんだ、俺にも生えてんじゃん。
「待たせて悪かったな。」
『約束守ってくれてありがとう。』
「お前に嫌われたくなかったからな。」
『嫌いにならないよ。でも、こっちに来るのが早かったらしばらく怒ってたかも。』
「だろうな。」
あいつに引っ張られて慌てて起き上がる。
「お迎えに来たよ。」
「そのセリフ、手を差し伸べる前に言うやろう。」
「もう、俺の彼氏さんワガママなんだから。」
「はいはい。ちゃんと連れてってくれよ?俺の可愛い彼女さん?」
「はーい。」
「すち。」
「なぁに?いるまちゃん。」
「愛してる。ずっと。これから先も。」
「俺もずっと愛してるよ。これから先も。」
「来世でも一緒にいような?すち。」
「うん。一緒にいようね。いるま。」
あとがきです
しぶのほうではいつも死ネタは花を添えています
理由はとある曲に影響されてです
花言葉↓
ギンモクセイ『初恋』『唯一の恋』
オウバイ『期待』
白いルピナス『感謝』『あなたは私の安らぎ』
です。
ちなみに最後にボロボロの翼と書いたのは『アスノヨゾラ哨戒班』のMVを参考にしてます。
綺麗な翼は『Genesix』のMVを参考にしてます。
チャットも使ってみようと思ったのですが意外と難しくて( ˊᵕˋ ;)
使い方等おかしかったら教えてください
m(*_ _)m
それではまたお会いしましょう
(しぶの投稿が優先のためこちらはあまり投稿しないかもです)