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第13話:「管理人・中村颯太、沈黙の代償」
静まり返るスタジオの一角。
モニターの前で、中村颯太はじっと画面を見つめていた。
彼の目に映っていたのは、配信準備画面と、もう一つ――“未送信のメッセージ”。
To:山本蓮
件名:最後の確認
本文:お前、本当に話す気か?
今からでも止められる。
俺たちの企画は、これで終わりだ。
震える手で「送信」ボタンに指をかけるが、押せない。
「……もう遅いんだよな」
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【マジで颯太くん来たぞ】
【運営が語るとか最終章感】
【てかこの人、前から怪しかったよね】
【“選ばれる”仕組み、絶対なんかあるって思ってた】
【期待しかない。頼むぞ管理人】
薄暗い部屋に座る颯太は、映る自身の顔を見て、静かに笑った。
「皆さん、こんばんは。告白ノ間、管理人の中村颯太です」
彼の声は、意外にも落ち着いていた。
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「“このチャンネルは、真実を暴くために作られた”――そう言えば、聞こえはいい。
でも実際は違う。俺たちが作ったのは、“沈黙に代償を払わせる仕組み”だ」
「人は、真実を隠すためにウソをつく。
ウソを守るために金を払い、時に人を殺す。
でも、暴かれるリスクがあると知れば、少しはまともになるんじゃないか。
……そう信じていた、ある男がいたんだ」
画面が一瞬暗転し、一人の男の映像が映る。
山本蓮。
彼がまだ20代だった頃、某大学の心理学研究室で行っていた極秘プロジェクトの映像だ。
「これは、“告白による心理開放”をテーマにした実験だった」
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「田中蒼が巻き込まれた事件――
それは最初から“実験対象”だった。
蒼がかつて勤めていた商社では、情報操作による内部スキャンダル隠蔽が常態化していた」
「だが彼は、一線を越える“証拠”に触れてしまった。
そして……周囲の人間が、次々と彼を切り捨てた。
最初に手を引いたのが、“小林悠斗”。
情報を売ったのが、“加藤翔”。
そして、仕組んだのが“伊藤悠真”――かつての家庭教師だった男」
コメント欄は一気に炎上。
【うわ……登場人物みんな繋がってるやん】
【小林と加藤って、蒼の親友じゃなかったの?】
【伊藤やばすぎる】
【てか、全部知ってたんだろ、颯太】
「俺は全部、知っていた。
知っていながら、何も言わなかった。
……言えなかったんだ。あの夜、“彼女”が死んでから」
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「村瀬美月――蒼の恋人だった女性。
彼女は“証人”だった。
蒼の無実を証明できる、唯一の存在だった」
「だが、証言をためらっていた彼女に、俺たちは“チャンス”を与えようとした。
このチャンネルのβ版……【#confess_test】と名付けられた配信で、彼女は真実を語るはずだった。
でも配信直前、彼女は……突き落とされた。
……誰かに、ビルの屋上から」
「犯人はいまだにわかっていない。
けれど俺は知ってる。“この中にいる”って」
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「僕が今こうして語っているのは、赦しを乞うためじゃない。
“全ての登場人物”を、もう一度“あの夜”に引きずり戻すためだ」
「このチャンネルはもうすぐ終わる。
だけど、最後に一つだけ残す。
“最終スピーカー”の名前を」
画面に浮かび上がる、次回のタイトル。