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充電済みのスマホのアラームで、目が覚める。
…はずだった。
起きて早々、ベッドの上でマイナス思考。
あー、クソ… いかにも、だ。
思わず、舌打ち。
なーんでそんなに機嫌悪いのかなー…
どうしてこう、登校日に限って___
ピカッ…ゴロゴロ…
びくっ「…っ!!」
声にならない声、息を喉元で止める。
脊髄で合図を感知し、布団を頭まで被り、耳を塞ぐ。
う、わ……やば、ぃ…だめだこれ、無理。
冷や汗。
神経が通ってないみたいだ。 小刻みに動く手を止められなかった。
やめて、駄目。
無理無理、ここから出られない。出たくない。
一瞬の光もこの視界に入れたくない。
地響きのように身体の奥深く、骨の髄までも揺らしてしまうあの音も、絶対に聞きたくない。
今日は月曜日、か…なんで?なんで昨日鳴らなかったの?昨日鳴ってたら多分今日は鳴らない日になってたはず。意味わかんない、絶対狙ってんじゃんこんなの。
もう考えてるだけで吐き気する。やめてくれ。
あー…天気操れたら良かったのにな。
いわゆる、天気の子ってやつ?手握って願ったら天気変えれるのかー。いいなー…やってみようかな?笑
…いや、全然笑えないから。今の状況。
本気でこの部屋から出たくない。
一瞬でも耳から手を離したら死ぬ。確実に。
絶対に聞きたくないから。
…嗚呼、遠くでお母さんの声が聞こえる。
多分、起きてるの?早く起きなさい!とか言ってるんだろうな。分かってる、起きてるよ、ごめん、今行くね。
本当は行きたくないんだ、ごめんね。
でも行かなきゃ、学校、遅刻する。
耳を塞ぎながら、細目で、微かな五感の情報を頼りに、私は部屋を出た。
ドアノブを握る事も、毎日している事なのに、抵抗、嫌悪、アレルギーのように、すぐには触れられず、上手くできなかった。
何とか部屋から出た時、充電していたスマホを耳を塞ぎながら持っていたせいか、一階に繋がる階段の手前で落としてしまった。
ギリギリ階段から転がり落ちる事は無かったが、今の若者には命の次に大事であろう物だ。私も咄嗟にスマホに手を伸ばす。
…その時、意図せず、耳から手を離してしまった。
…と、同時に。
私の視界に入り込むな。
目の前の階段、反射。
光、一筋の光。
一瞬の筈なのに、フラッシュバックの様に、
ずっと、ずっと。ずっと。
頭に、目に、耳に、残っていた。
あ、駄目だ。
手の感覚がない。
…じゃなくて、あれ?脳…の、か…んかく?
視界が、暗く歪む。
身体に、頭に、顔に、鈍い感覚。 衝撃。
…痛い。
いたいとか、あるんだ、こういうとき。
膝から崩れ、頭に、全身に衝撃。
ニ階からそのまま。
…鉄の匂いがする。
真面目に考えた事ある?
恐怖症について。
人それぞれ、苦手な物、受け付けられない物、関わりたくない物、あると思う。
でもね、その物に対する気持ち、その理由は何なんだろうって。
いつもそれがわからない。
私はそれが知りたい。
もしそれが分かったら、少しは…少しは、マシになったりするのかな。
雷なんて、小さい子が怖がる物でしょ?とか、大人になれば怖くなくなるよ。とか、逆に対象のものにテンションあがっちゃう人とかいるけどさ。
本当に同じ人間なのかなって、疑う時もある。
ここだけの本音ね。
びっくりするから。そうやって私に言える事に。
…本当に、怖い物なのかな。対象の物って。
いや、その人にとっては凄い怖い物っていうか、何かわからないけれど、心の底からとにかく強い恐怖が生まれるわけ。
私の場合は雷だけど、雷…何度も見たり聞いたりしたら、慣れるかな。怖くなくなるかな。
そこまでいける自信がないんだよね。
一つ思ったのが、恐怖症を持ってる人って、想像力が豊かなのかなって事。
自分にこんな事が起こるかもしれない、対象の物がこんな事を起こすかもしれない、こんなことになったらどうしようとか。
沢山、沢山考えるから、結果「怖い」に繋がるのかな。イメージマップみたいに。
…私、こんな事思ってるのかな? 自分でも分からないや。
でも多分、一瞬にして沢山頭の中で生み出した情報を読み取って、その中で不安とかマイナスの感情は一際目立ちやすい物だから、そこを記憶、脳に刻んでしまうのかな、って。
雷怖いな、自分に落ちてきたらどうしよう。
一瞬凄い明るくなるのと、大きな音が苦手かも。
とか、そういう表向きのマイナス思考。
…だけじゃなくて、
すごいな、みんな平気で。
よく普通にしてられるね。
羨ましい。私だけじゃん、怖がってんの。
みたいな、また別の体験とか、経験を積んで新しく入ってきた情報を刻む。特に身近な事から考えて記憶する。裏向きのマイナス思考。
「なんでこんなぐらいで泣くわけ?意味わかんねー!笑」
「もう高校生なんだから、ね?大丈夫だって!ほら、行くよ!」
「いつまでも他の人に頼ってないでよね。」
「こっちも泣かれると困るわけ。誰もどうにも出来ないタイプの人だからさ?君は。」
人の気も知らないで、よくそんな事言えるな。
「分かるよー、おっきい音、怖いもんねー。」
分かってないでしょ、適当に流すな。
生徒の気持ちを分かってあげるのがスクールカウンセラーの仕事なんじゃないの?
そんな単純な話じゃないんだよ!
年頃の子供にはありがちな感情でしょ?
大人にもある?もしかして。
分かんないや、私はまだ子供だから。「大人」の気持ちは。
…恐怖症が、トラウマに繋がる。
それが月日が経ってフラッシュバック。
その繰り返し。
これほど最悪な事はないでしょ。
天気が悪くなったり、天気予報見るだけでも、
「あー、今日も鳴るのかな…」
って、落ち込んで。
結局、私の助かる居場所は無いんだって。
同じ立場の友達も分かってくれない、私より経験豊富な大人も分かってくれない。
恐怖症があるか無いかで、こんなに違うの?
こんなに違う思いをしなきゃいけないの?
怖い、怖いの。
私が怖いのは、雷だけじゃない。
どうしてそこに気付かないのかなぁ。
どうして他人の目になって物事を見れないのかなぁ。
それは私も同じ。
みんな同じ。
私もこんな事言える立場じゃ無いよね、知ってる。
ただ、私は貴方たちよりもずっと、ずっとずっと経験している。恐怖、憎悪、苦悩、悲痛。
色んな感情がぐちゃぐちゃになって、結果的にこう思う。死にたいって。
でもそういう描写が出てくる小説や映画、写真、動画。見るだけ、想像するだけでも吐き気がする。
嗚呼、死ぬってこんなに辛いんだって。
私はそんな死ぬ勇気なんて無いんだって。
実感して、何とか昨日と明日を乗り切って。
そしてまた、フラッシュバック。
何のために生きてるんだろ。
こんな辛い思いするために?
ふざけないで、そんな思いするなら死んだ方がマシだよ。
…でも、死ねないんだってさ。
馬鹿馬鹿しい。
…嗚呼、明日になったら、怖い物知らずになってないかなぁ。そうしたら、フラッシュバックなんて言葉も知らずに、トラウマって何?って、雷?テンション上がるよねー!って、明るくいられたのかな、ってさ。
はは、あはははっ…あはは……はぁ、最悪。
どうせ、誰も助けに来ないよ。
今も、これからも、ずっと。
甘く見ないでね。どうか、私達を。
あ、足音が聞こえる。
助けに、来てくれたんだね。
今更なんだ、だけど。
…今こそ、私の気持ちを話す時かな。
よく聞いててね、小さい声しか出せないから。
「 」
あれ、言えずに終わっちゃった。