テラーノベル
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(気持ち悪い……)
撮影中にもかかわらずガンガンと襲ってくる頭痛に思わず目を閉じてしまう。いつもは楽しい皆との掛け合いも今は騒音でしかなくて。早く終わってほしい、なんて最低なことを思ってしまう。
「それでいったら太智じゃない?」
「……っ、あぁ!うん!」
「……?なんだよ!また興味ない話だった!?」
「いやいや!そんなことないって!ちゃんと佐野さんの話聞いてたよ!」
何の話だったんだろう、急に話を振られて少し反応が遅れてしまった。佐野さんは勘がいいから気づいちゃったかもだけど今は無視。
そうしてなんとか撮影が終わって休憩に入り、皆がぞろぞろと部屋を出ていくのに俺はその場から動けなくなっていた。
(やばい…移動しないとなのに……動けん……)
しかしずっとここにいることはできない。せめて移動はしないとスタッフさんにも迷惑がかかる。なんとか重い身体に鞭打って椅子から立ち上がろうとしたとき、俺の頭上から声がした。
「太智…やっぱり体調悪いだろ」
「じんと……大丈夫…」
「大智が大丈夫しか言えない時点で大丈夫じゃねえんだよ。とりあえずソファーに行こう。歩けそうか?」
「……ごめん…」
「わかった。ちょっと待ってて」
仁人が俺を置いてどこかにいく。さっきまで俺の肩に触れていた温もりが消えていく。きっと誰かを呼びに行ったんだろうけど弱っている俺の頭では置いて行かれたとしか思えなくて。……こんな気持ちになるのはきっと体調が悪いせいや。仁人に行かないでほしいなんていつもの俺なら思わん。
「……うぅ…」
「太智!大丈夫か!!」
「勇斗!静かに!太智体調悪いんだから。」
「あっ、ごめん仁人……太智、今から移動させるけどいい?」
「はやと……」
「こりゃ重症だ。仁人そっちもって。太智、ゆっくり行くけどきつかったら俺か仁人叩いて。止まるから」
そうして2人に支えられながらなんとかソファーまで行くことができた俺は静かに横になる。勇人が俺のおでこを触り熱を測る。
「ちょっと熱いか…?…太智、朝から調子悪かった?」
「………いつもの事だから朝はなんとかなると思った…」
「いつもの?」
「……っ、雨の日はあたまいたくなる……」
「片頭痛か。あー最近雨続きだったもんなぁ」
勇斗が優しい手つきで俺の頭を撫でる。その撫で方がどこか小さいころを思い出させて思わず涙が出そうになる。もう頭なんて撫でられることないと思ってたんに……
仁人はどこから持ってきたのか俺の身体に毛布を掛けてくれて、思わぬところで二人の長男力を見た気がする。なんて思ってたら姿の見えなかった柔太朗と舜太が扉から入ってくるのが見えた。
「はやちゃーん、今大丈夫?言われたの買ってきたよー」
「おっ、柔太朗、舜太ありがとな。え、冷えピタも買ってきてんの天才??」
「柔がないよりはあった方がいいって言ってさ!」
「さっすが柔太朗!太智ちょっと熱もあるっぽくてまーじ助かったわ。…太智ちょっと冷たいぞ」
勇斗は袋から冷えピタを取ると俺のおでこに張り付ける。
「つめたぁ……」
「大智は一旦寝ろ。あっ、先に薬飲んだ方がいいのか?」
「すきっ腹に薬ってどうなんだろ。一応ゼリーとかも買ってきてるけどだいちゃん食べれそう?」
「さっき気持ち悪いって言ってたからもしかしたら吐いちゃうかも」
「あー、ならやめとくか。動けそうになったら病院かな」
みんなが静かに話し合いをしているのを見ていると、申し訳なさが込み上げてくる。
「みんな、ごめん……俺のせいでみんなに迷惑かけて……」
「別に太智のせいでも何でもないでしょ。確かに体調悪いのを隠してたのはムカつくからそれは太智が元気になったら怒るとして、俺たちは迷惑なんて思ってない。むしろ隠され続けてどっかで倒れたとかの方が迷惑掛かるわ」
「仁人の言う通りだぞー。めっちゃ心配したし!これに懲りたら今後はちゃんと言えよな」
「太ちゃんは言わんでいいことオープンなくせに言わないといけないこと隠すのがね」
「ほんまに!仁ちゃんから話聞かされた時の柔の慌てようヤバかったんやから!」
「ちょっと、俺だけじゃなくて舜太もだろ」
「それ言うなら勇斗もかも。あの顔写真撮っとけばよかったかなー」
「あっ!おい、バラすな!」
俺が気に病まないようにいつもの調子で、でも静かに騒いでいる皆を見て思わず笑みがこぼれる。
「……みんな、ありがとう……」
そうして目を瞑る最後に見えたのは皆の優しい顔。
もう雨はやんでいた。
コメント
1件
めっちゃ好きです…! 最高ありがとうございます