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※注意
◯シリーズ名『ボクと君と媚薬と。』ですが今回は媚薬出てきません。
◯登場人物はフロリドの2人とジェイドです。
◯アンチ大歓迎です。全然来てください。
◯TELLER処女作なので色々分かっていないところも多いです。多めに見てくださると嬉しいです。
「んっ……」
舌が絡まる。
頭の中は真っ白に染まり、胸の辺りはポカポカとした感覚に包まれる。
(嗚呼、なんて幸せなのだろうか)
この幸せが永遠に続けばいのに─────……
しかし、幸せとはやはり長くは続かないもので。彼は既に準備を済ませ帰ろうとしていた。
「金魚ちゃん、明日も来てい〜い?」
「そうだね……。課題を全て終わらせたら、いいよ」
「なにそれぇ……。まぁ金魚ちゃんに会いたいし、それくらいなら別にいいけどぉ」
……正直に。欲を言えば、もっと一緒にいたい。一緒にお茶会だってしたいし、外へ遊びに行きたい。いっそのこと、その先も─────。
けれど、それは許されない。
前提として、ボクは人間、彼は人魚。種属が違う。確かに世の中には普通の人間と獣人のハーフは存在している(事実、ボクの後輩の一人は人間と妖精のハーフである)。それでも、種属違いの結婚というのは珍しい。
それに、ボクらは男性同士。世の中では『愛に性別は関係ない』と言う風潮は広まりつつある。ボクだってそう思う。しかし、やはり同性間での結婚というのはまだ珍しく気味悪がられることも多い。
……とグダグダと言ってきたが。正直、この2つはそこまで大きな問題ではない。
問題は、ボクのお母様だ。
「……はぁ」
「どうしたの? 金魚ちゃん」
眼の前にいる男────フロイド・リーチ。自由奔放で気分屋。何を考えているのか全く分からない『リーチのヤバい方』と言われる、彼。哀れなことにボクは、そんな彼のことを好きになってしまった。
「いや、なんでも。ただ、君はいつになったら自分の寮に戻るのかと思ってね」
「えぇ〜、金魚ちゃん冷たぁい。オレ、今は金魚ちゃんと一緒にいたい気分だもーん」
「はぁ……あと5分だよ」
「なんだかんだオレに甘い金魚ちゃん大好き〜」
「知ってる」
突然だが、ボクらにはあるルールが存在している。
1つ。してもいいのはディープキスまで。『そういうこと』はせめて成人になってからすること。
2つ。自らボクらが好き同士だということは言わないこと。
3つ。この関係は4年の学外研修中は一時的に辞める。
4つ。卒業したら、この関係からも卒業する。
ハートの女王の法律に比べ、とても簡単な上少ないはずのこのルールはボクらにとって、簡単で困難なもの。
これらは全て、これ以上お互いが苦しまないように。好きにならないように話し合って決めたもの。
ボクもフロイドも、納得して今の関係でいる。
そう、納得している。この関係に。
(……納得している、はずなのに)
「……はぁ」
何と言えばいいのか。どこにぶつけるべきか。何もわからないこの感情は、今日もボクを苦しめる。
「リドルさん、体調が優れないようですが……何か、フロイドとありました?」
6時限目の授業終わり。フロイドの双子の片割れであるジェイド・リーチは、心配しているようなしていないような。そんな目でボクを見ていた。
「そう見えるかい? 特に昨日は何もなかったけど……」
「なら、いいのですが。……もし良ければなんですが、このクッキー、いりませんか?」
「クッキー……? いいのかい?」
「えぇ。最近、フロイドの機嫌が良い日が多くてこちらとしても助かっているんです」
「……? フロイドの機嫌とボクに、関係なんて何もないだろう」
「あるんです、それが」とジェイドは笑う。あぁもう、本当にこの双子の思考は読み取れない。
「取りあえず、貰っておいてください。『慈悲の心』です」
「……まぁ、貰っておいて損はないね。ありがとう、ジェイド」
「いえいえ」
「……これで、少しでも楽になってくれればいいんですが。
お互いに、ね」