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ひと通り城の中を案内してもらい、最上階の広く立派な部屋に連れてこられた。どうやらここが、ギデオンの部屋らしい。 だが、ついこの前に泊まった最高級の宿の部屋より質素に見える。いや、質素に見えるだけで、よく見ると家具や調度品などは品があり良い物を使っているようだ。

リオはキョロキョロと部屋の中を見回し、奥の大きな窓ガラスに近寄り手のひらを当てて、外の景色を眺めて感嘆の声をあげた。


「わあ…ここからの景色も綺麗だ」

「確かに。この部屋を訪れることはあっても、ゆっくりと景色を見たのは初めてだ。いい眺めだ」


再びピタリとひっつくように隣に来たケリーから即座に離れて、リオは早口で告げる。


「ケリーさん、俺はここでギデオンが来るのを待ってるから、もう戻ってください。案内してくれて、ありがとうございます」


リオはそう言うと、ぺこりと頭を下げた。

ケリーは少しだけ目を見開いた後に、奇妙な顔をする。怒っているのか困っているのか、よくわからない表情だ。そして更に距離を取ろうとしたリオの腕を、咄嗟に掴んできた。


「いたっ!なにっ…」

「痛くはないだろう。そんなに強く握っていない。なぁ、俺はリオともっと話がしたい。なのにその態度は嫌だな」

「俺はただの使用人です。構わないでください。特に話すこともないから。それに早く仕事に戻った方がよくないですか?」

「ちっ…」


ん?今舌打ちした?やっぱり怒ってる?なんでだ?一介の使用人のことなんか気にすることないじゃん。ほおっておいてくれよ。

ケリーがちっとも手を離してくれなくて、無理に引き剥がしてもいいだろうかと困っていると、胸元から「ウウッ」と唸り声が聞こえた。

ずっと眠っていたアンが起きたのだ。起きて、牙を剥きながらケリーを睨んでいる。

ケリーがアンを見て、ようやくリオから手を離した。しかしその手をアンに向かって伸ばそうとする。

咄嗟にアンを守るように抱きしめたリオの背後から、「何をしている」と低く冷たい声がした。とても冷たい声なのに、リオはひどく安堵した。知らず知らずに入っていた全身の力を抜き、ゆっくりと振り返る。

ギデオンがリオの真後ろに立っていた。リオの頭の上から、いつもの冷たい目でケリーを見下ろしている。

しかしケリーに慌てた様子はない。ゆっくりと手を引き、軽く頭を下げた。


「案内が終わりましたので、二人でこちらの部屋から見える景色の感想を言い合っていたところです」

「そうか。おまえがリオを捕まえようとしてるように見えたが」

「誤解でございます。アンを触ろうとしていただけです」

「なるほど。わかった、下がれ」

「はい」


ケリーはもう一度頭を下げ、一瞬だけリオを見て出ていった。



狼領主は俺を抱いて眠りたい

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