「んん゛……」
不快な目覚まし音が鳴り響き、 頭と腰に感じる奇妙な違和感に目を覚ます。重い体をベッドから引き起こし、ふらりと立ち上がる。目の前の背丈ほどの姿見に目をやると、そこにはふわふわの猫耳と尻尾を生やした自分が映っていた。
「はぁ……!!!???」
さっきまでの眠気が一瞬で吹き飛び、喉から間抜けな声が飛び出す。これは悪い夢か、ただの見間違いか。頬をつねると、鋭い痛みが現実を突きつける。目をこすっても、猫耳と尻尾は消えない。恐る恐る指先で猫耳に触れると、滑らかで柔らかな毛が手のひらを包み、耳がピクッと動いてゾクッとする感覚が背筋を走る。
「うそだろ…」
ため息と共に諦めが押し寄せる。こんな姿で元貴の前に立ったら――考えるだけで胃がキリキリする。恥ずかしさと不安が渦巻き、俺はも う一度毛布に潜り込んで眠りにつくことにした。
部屋に漂う珈琲の香ばしい匂いで、再び目を覚ます。あまり眠れなか ったな、とぼんやり思うその瞬間、
「おはよう、若井」
恐れていた元貴の声が響き、反射的に体を引いてしまう。
「随分可愛い格好してんじゃん」
逃げる間もなく、元貴の腕が伸びてきて呆気なく抱き寄せられる。距離が縮まり、彼のシャンプーの清涼な香りが鼻腔を擽る。寝起きの低 音が耳元で甘く響き、下腹が疼いて熱を帯びる。
「なぁに、これ?俺のこと誘ってんの?」
元貴の声が耳殻を震わせ、俺の心臓を締め付ける。おまけに尻尾の付け根をそっと撫でられ、鋭い快感が腰を貫く。「んっ…違う、」と否定するけど、腰が勝手にくねっと揺れてしまう。
「腰、揺れてるよ」
「ほっんと敏感だね、若井」
熱を帯びた瞳が俺を捕らえ、不覚にも期待が胸を膨らませる。尻尾を指先でなぞられると、熱い波が背筋を駆け上がり、声が漏れそうになるのを必死に堪える。
「なに、期待してんの?」
「ぇ、あ、!?違うし、!」
悪戯っぽく笑う元貴の顔が、俺の心をぐちゃぐちゃに掻き乱す。心を見抜いてくる癖、ほんと気に入らない。でも、その笑顔に抗えない。
「その期待、応えてあげる」
脳が言葉を捉える暇もなく、元貴の汗ばんだ胸が俺を押し倒し、熱い吐息と共に組み敷かれていた。
次回へと続きます
コメント
3件
たまらんです最高😽