[ どうせ朽ちて仕舞うのならば。 ]
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↳ 1. 我に返って
↳ 2. 背中を追い続けた理由は
↳ 3. さようならの合図と共に
↳ 4. 燃える夕陽に誓って
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1. 我に返って
「叶羽ちゃんのバカ……っ」
え、私何しちゃった?
と聞く暇もなく、
ただその言葉を残して、早足に去っていった親友。
否、もう “元” 親友か。
抑始めから、私が可笑しかったのかもしれない。
あんな子を “親友” と言っていた私が。
私の元親友 ・ 早瀬 一桜は、世の言う 『 ぶりっ子 』 だった。
対面で話す訳だから、語尾にハートが付いているわけではないが、心做しか付いているように聞こえる程の。
「叶う羽で かなは って読むの!?すごい!カッコイイ!」
人前ではそう、高い声で褒めちぎり、
「ねー。はなちゃんってあんま可愛くないのに先輩と付き合えるとか有り得なくない?笑」
影では人を貶すような人だった。
そんなことが分かっていても、ずっとバカにされてた名前を褒めて貰えた嬉しさは私の身に残り続け、どんな褒め言葉も、悪口も、 うんうん、そうだねと頷いて仕舞っていた。
それがいけなかったのだろう。
自分でも大概だと思うし、一桜の性格の悪さは分かっていた。
それでも離れることが出来なかったのは、きっと今でも私を縛り続ける呪いのせいだろう。
まぁ、呪いと言う程のものでもないのだが。
2. 背中を追い続けた理由は
正直に言わずとも酷い性格をしている一桜の背中を追い続けたのはそれなりの理由がある訳で。
また、それには見合わないとも思ってしまう理由な訳で。
今思い返してみれば直ぐに「有り得ない」と言ってしまいそうになることも、その時の私は必死で気が付かなかった。
始まりを辿ると、やはりこの名前からだろう。
私は月詠 叶羽。
変わった漢字と読み方の名前を持つ、変わった子。
先ずは私の外見、見た目から話すべきだろうか。
私の目は青色だった。
他の子達とは違う、とは小さい頃から勘づいていたけれど、まさかイジメられる程だとは思っていなかった。
だってお母さんの目の色も、おばあちゃんの目の色も青かったから。
それは特別変な事じゃないと思っていたから。
月詠 という苗字は母の家計からだった。
母は “長女だから ” 家督を継いで行かなければいけないとかなんとか。
そのお陰で私は母から青い目と変わった苗字を譲り受けたのだった。
名前を決めたのは父らしい。
ネーミングセンスが恐ろしい程なかった父がつけた名前だ。
始め、父は「かなこ」や「はなこ」等の、私からすれば古臭い名前(かなこさんとはなこさんごめんなさい)を候補にあげていたらしい。
そんな中、「叶羽(かなは)」という少々奇抜な名前をあげると、その名前が目立ち、輝き、 「 いいじゃん! 」に辿り着くのだ。
……と、母が言っていた。(
とまぁ、簡単に言えば、私の容姿や名前は、周りの人とは違っていた。
だから、小さい頃はよく父と母を恨んだものだ。
なんて苗字と目を寄越してくれたんだ
なんて名前をつけてくれたんだ
と。
中学生になった頃はもう諦めていたと思っていたのだが、まさかあんな性格の子にオモテで言われたことを本気で捉え、浮かれてしまう程に気にしていたとは思ってもいなかった。
一桜も思ったことだろう。
コイツは使える、と。
名前と目さえ褒めれば、どんな酷いことをしても着いてくる、と。
そのような性格だと言うことは分かっていた。
それなのに離れることが出来なかった。
挙句、捨てられてしまった。
そのことは、一体何時まで私の心に居座るのだろう。
考えただけで吐き気がした。
3. さようならの合図と共に
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おかしい
そう気がついたのは、きっとそのような態度を取られて直ぐだっただろう。
「 皆さん、さようなら 」
先生とお決まりの会話を終えた後、彼女は真っ先に私の席にやって来る。
「 ねぇねぇ、先輩見に行かない? 」
と、甘ったるい声を出して。
なのに、ある日を境にパッタリと来なくなったのだ。
「 嫌われてしまったのだろうか 」
私の頭の中は、その単語で埋め尽くされた。
あんな子に嫌われても別に平気だし
という考えはなかった。
ただ、「なんで、」という気持ちだけが渦巻いていた。
今迄ずっと、一桜の近くにいた。
だから友達なんて一桜しかいない。
一人は嫌
そう思った瞬間、堪えきれなかった。
「 ねぇ、一桜。 」
帰ろうとする一桜を呼び止めた。
口調なんか気にせず、でも笑って言った。
「 なんで避けるの? 」
怒っている訳じゃない。
責めている訳でもない。
ただ、悲しかった。
だからね
「 …… なんのこと? 」
そう、知らんぷりされた時、すごくすごく
辛かった
なんでなんでなんでなんでなんで
どうしてなの?
私はずっと、ずっと……!
あんたなんかの為に尽くしてきたのに!!
ただ、嬉しかったから
恩返しがしたかっただけなのに……
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今迄知らぬ間に蓋をしていた感情たちが溢れ出した。
「うれしい」の感情に圧されていた感情たちが、一気に溢れて、溢れて。
「 最っ低 」
自分でもびっくりするような低い声で、ただ一言、そんな言葉が口から溢れちゃって。
「 え …… 」
びっくりする一桜を無視して、私は言ったの。
「 もう、一桜なんて知らない 」
一桜を手放したら、後悔するのは私なのに。
私の筈なのに。
そう言った瞬間、すっきりしたと、嬉しく思った自分がいた。
「 っは …… ? ( 小 」
そう呆気にとられたような顔をする一桜を見て、正直、勝ったと思った。
でも、やっぱり一桜の方が1枚上手で。
ニヤリ、と笑い、叫んだ。
「 叶羽ちゃんのバカ …… っ 」
と。
「 あ …… 」
やってしまった、
と思った。
これでもう、周りはみんな一桜の味方だ。
女子たちは分からないけれど、男子は確実に一桜の味方。
「 ごめ ────── っ 」
あんなこと、言わなければよかった。
私、何かしちゃった?
そう聞けばよかった。
でも、
もう、やってしまった。
誰とも顔を合わせたくない
どんな言葉も聞きたくない
私は逃げ出した。
4. 燃える夕陽に誓って
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なんで、あんなことを言ってしまったのだろう
そう後悔すること約20分
海辺に座り、ただぼーっと海を眺めては息を吐いていた。
もう日が沈む。
帰らなきゃな、と思った頃には、日は沈みかけていた。
そして半分くらい日が沈んだところで、私は息を飲んだ。
燃えるような赤い色々が、雲や海を照らしている。
それはまるで、雲や海に火をつけたようで──────
綺麗だった
ゾッとする程に染まる赤と紫。
怖い、と感じると同時に綺麗と思った自分に驚いた。
そのとき、何故か不意に「そっか」と思った。
私は、私の中に眠っていた気持ちを自覚したのだった。
きっとその気持ちは “復讐心”
嫌なことをされた
泣いているだけじゃ、嘆いているだけじゃ、誰も助けてくれない。
それならば、自分でやり返してしまえばいい。
優等生ちゃんなら、やり返すだなんてと思うかもしれないが、生憎私は優等生でもなんでもない。
どうせやるなら全力で。
私は燃える夕陽を見ながら、燃える復讐心を知った。
「 どう謝られたって許さない 」
悪役の様な台詞を吐きながら、私は夕陽に誓った。
❥ 月 詠 叶 羽
❥ 青い目を持っている
❥ 早 瀬 一 桜
❥ ぶりっ子
﹏ 白 色 ピ エ ロ の こ ん て す と ﹏
﹏ 一 次 創 作 ﹏ 連 載 ﹏ ド ラ マ ﹏
“ どうせ朽ちてしまうのならば。 ”
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コメント
3件
ぎゃあすきすぎる
待ってください神作誕生ですね有難うございます がちがち小説読んだ気分です正直読みやすすぎて何周でもいける かのはちゃんの心情が話し掛けてる様なのが大好き 「私の方が1枚上手だと思った」 「男子は確実に一桜の味方だろう」ここが個人的に悲しすぎる 自分は特に悪い事をしてないのに相手が上手ってだけで自分が責められる側になる恐怖って中々無い