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最後のツッコミ最高w
桃視点で始まります。
自衛は各自でお願い致します。
それはある穏やかな昼間の事だった。
久しぶりにゆっくり出来る貴重な時間、俺はコーヒーをいつもより丁寧に抽出し、久しく見ていなかったニュース番組をつけて社会情勢を確認する。
これぞ優雅で文明的な朝!休日!パラダイス!!
今日は誰にも邪魔されずゆっくりタイムを過ごすのだ。
「た、たたたたた大変だよないちゃんんんんん!!!!!」
「ウェルカムトゥーザないこハウスウウウウ!?!?!?!!」
「ウェルカムトゥーザないこハウス!」
「ウェルカムトゥーザないこハウス!!」
「うわああああぁぁおおおおおおおまえらなんで俺ん家いんのおおおおお!?!?!?」
ばーん!!と扉を壊さん勢いで入ってきたほとけっちに驚いていると、どこからかりうらと初兎ちゃんがひょっこり出てきたもんだからさらに驚いた。
俺の優雅な休日はこうして幕を閉じた。
____________
「で、不法侵入についてはもういいから、何があったのほとけっち?」
「そ、それがね!」
本題に入ろう。
果たしてほとけっちがあんなに慌てるなんて一体何があったのだろう。
いや、ほとけっちいつもうるさいわ。そんな大したことじゃないなこれ。
「い、いふくんとアニキが別れるかもしれないの!!」
「へぇ〜まろとアニキが別れるねぇ…」
ふーん、うちのダイスナンバー5と6が別れるね。
お酒とガチャに金を捧げたダメ人間カップルがね。
「はぁあぁぁぁぁ!?!?!?ま、まろとあにあにあにきが!?!?わ、わか、別れるぅぅ!!?!?」
「ね!ね?!大変でしょ!?!」
「いむくんカレンダーよく見て。今日エイプリルフールやないで。そんな馬鹿なことあるわけないやん」
「うちの看板カップルが別れるなんてそんなまさか(笑)」
「(笑)とか言ってる場合じゃないってりうちゃん!これ!コレ見て!!」
阿鼻叫喚と化したこの空間にさらに爆弾を落とすかのように突き出されたスマホの画面には、
『お前に頼み事をするのは癪だがアニキの様子をそれとなく探ってほしい。今俺がなんか話しかければ最悪絶交されるかもしれん。』
何でとか、何があったとかは書かれてないけど、どこか逼迫したような文面に俺たちは言葉を失った。
「これ、って…」
「悠くんとまろちゃん、喧嘩しとるんちゃうん?」
「ほとけっちにもの頼むなんてまろもだいぶ追い詰められてるんだね…」
「ね?ね?言ったでしょ?だからさ、僕も一応心配だったわけだしアニキに連絡取ってみたけど何の音沙汰もないんだよ…」
アニキの方で連絡つかないとなると家に突撃するか?
そう考えてれば、
「え、りうら昨日ラインしたよ?」
「まじ?ど、どんな内容?」
「え、今度どっかで2人の歌みた録りたいねって話。」
まさかの天からの救いならぬりうらからの既成事実。
別に特段変わった内容ではない。
ではなぜほとけっちの連絡には応じなかったのだろうか。
「ほとけっちはどういうふうに聞いたの?」
「アニキ元気?いふくん心配してたよって…」
「それまろちゃんの名前出したから連絡つかなかったんやない?」
確かに…。
「とりあえずアニキに何かあったみたいなことは無さそうだし安心ではあるかな?」
「ないちゃん、いふくんに元気そうだったって連絡しておく?」
「うん、お願い。なんか一報入れておかないとアイツめんどくさいでしょ」
そこで俺はある違和感を覚えた。
そもそもあの二人に何があったのか。
文脈的に喧嘩しているのではと結論付けてしまったが本当に喧嘩をしているのだろうか?
「ほとけっち、まろに何があったか聞いてもらってもいい?」
「うん、いいよ。…わ!返事はやっ!」
「なんて?」
「『なんでアニキの状態分かんねん』って!理不尽すぎるでしょ!そっちで聞けって言っといて!!」
キャンキャンと子犬のように吠えるほとけっち。
まぁでもこれはまろが悪いでしょ。ほとけっち責められる謂れないと思うけどね。
普段の行いかな。
「結局まろちゃんは悠くんと何があったかは教えてくれへんの?」
「あ…いや、今返事来たよ。えーっと……はぁ!?!」
「なになに?」
ほとけっちが余りにも呆れたような声を出すから驚いてスマホを覗き見たら、
『まちがえてあにきのぷりんたべた』
この単純な文面に俺たちは1度息を吐いて、
「くっっっっっだらねぇな!!!!!!!」
全力で叫んだ。
そりゃもう喉を痛める勢いで叫んだ。
窓も開けて叫ぼうかと思ったがそれはさすがに自重した。
いや、くだらねぇ!嘘だろコイツら、そんなベタなことするの?バカなの?
バカなの??
「はい、解散解散。バカップルの痴話喧嘩に付き合う暇は俺らにはないでしょ。」
「でもこれ、アニキの機嫌戻らないと今日のいふくんの放送が酷いことになるんじゃ…」
一気に抜けた力が落とされた爆弾によって再び込められる。
そうだった、あいつの原動力、最近は専らアニキだ。
「んああああぁぁぁめんどくせぇぇぇ!!!」
俺らを巻き込むなよ本当に!
こんな思いは2人が付き合う直前に巻き込まれたあのときで十分だ。両片思いのあいつらがくっつかないもどかしさに何度頭を痛めたか。
「とりあえず、まろとアニキを呼ぶ。」
「え、でも、」
たじろぐりうらに有無を言わせずコールボタンを押す。
さっさと2人で仲直りをしてもらおう。まったく、手のかかるやつらめ。
1コール、2コール、3コール目でようやくまろが出た。
『…もしもし、ないこ?』
「まろ、今すぐ俺の家に来い。」
『は?いや、今すぐはちょっと…』
「来い」
『だから、』
「来い、いいな。」
まだ何か言っていたがぶつ切りして次へかける。
「アニキ、今から俺ん家来れるね?来てね」
『は、なんや急に…』
「来いよ?」
2度目のガチャ切り。
さて、これで役者は整った。
手のかかる年長組にそれでも仕方ないで済ませることができるのはなんだかんだ俺もあいつらを応援しているからだ。
たまにじれったいしうざいけど。
___20分後
最初に来たのはアニキ。戸惑いながらも緊急なのかと急いできてくれた。
そうだよ緊急だよ。お前らのな。
程なくしてまろも来た。
なんやねん急に、と口では言いつつも簡素な身なりからかなり急いで来てくれたのがわかる。
そして互いがいることを視認した2人は、
「「なんでここにおんねん!?!?」」
わぁー息ぴったり。やっぱ喧嘩なんてしてないんじゃねこいつら?
聞いてない!と叫ぶまろとアニキは確かに今は険悪なようだ。
たかがプリンで。
「お前らが面倒臭いから俺たちが仲直りの手伝いしてあげてんの。」
「頼んどらん。」
「まろ今日放送あったでしょ?そんな不調でリスナーの前出れるの?」
「ぅ…」
「俺悪くあらへんもん」
「うんうん、アニキは悪くないよ〜。でも私情を活動に引き摺るな」
さて、2人を黙らせたところで、喧嘩の起きたきっかけを聞くか。
「で?なんでこんなことになったの?」
「まろが俺のプリン食った。」
「でも今までもあったろうに今日はどうしてこんな頑ななの?」
「やってそのプリン、俺が前から食いたいって思って並んで買ったやつやもん。」
「それはまろが悪い。」
弁明の余地が全くなかった。
そりゃ人が並んででも買ったやつ勝手に食われたら怒るよ。
「これで3回目やもん。もう許せん。」
しかも常習犯。
「まろ、謝れ。」
「まろ、それは酷いよ…」
「いふくんさぁ…」
「悠くん逆に今までよう許しとったな。」
容赦ない追随にまろは縮こまって顔を俯けた。
「……ご、めん、」
消え入りそうな声にいつもの騒がしさはない。
そんな薄い謝罪を誰が受け入れるのかとため息が喉元まであがったその時、
「しゃーないな」
呆れるような、甘やかすような、そんなとろける声が隣から漏れた。
まさかママと呼ばれるほどの激甘アニキでもさすがにと思っていたが、それは見当はずれだったようだ。
いや、違うか。まろだから余計に甘いのか。
これだからこいつらは…
砂糖に蜂蜜垂らしてさらにメープルを足したような甘ったるい空間に俺たち以下4人は空気と化した。
「はいはい、ここ俺の家だからね。イチャつくのは2人でやって。」
俺の声掛けにハッとしたアニキは顔を赤く、まろはそんなアニキを見て至福そうに顔を綻ばせた。
「じゃ、じゃあここらでお暇させていただくわ…。迷惑かけた。」
「すまんかったな」
恥ずかしそうにするアニキと、悪びれる様子のないまろに呼び出してそんなに経っていないのに厄介祓いのように追い出した。
急に温度の下がった室内で俺はやっと息ができた気がした。
「悠くんもまろちゃんも、なんか、なんかなぁぁぁ〜〜〜〜」
「僕らは一体何を見せつけられたの????」
「当分甘い物食べたくない。」
各々胸中をぶちまけてはぁ、と息を吐いた。
「とりあえず、おつかれ。解散、しよか。」
「うん、おつかれ。」
「じゃあね〜」
こうして『まろにき激甘喧嘩事件』は収束した。
「いやお前らなんで押し入れとかに行ってんの!?!?!?玄関から帰れよ!!!!!!!!」