定例のお茶会は終了し、アルメダとエルスは帰っていった。
私はリンと二人で、大きな庭を眺めながら一息ついていた。
「リン。嫌だったら、別に来なくても大丈夫なのよ? 私がきちんとみんなとの関係は保ってあげるから」
「えへへ。ありがとう。でもそういうわけにはいかないよ。私も一応は貴族の娘、家の利益になるためにできることはしなくちゃ」
悪口を言われても、リンは気にしない素振りをする。だが、心の中では傷ついているのが、私には手に取るようにわかった。
これはスキルの効果じゃない。幼馴染みとしての勘だ。
「アルメダとエルス、どっちも根は悪い子じゃないんだけどね」
「うん、私もそう思うよ」
リンは強く同意するように頷く。
その優しさがもっとみんなに広く知られればいいのに、と私は思う。
「そう言えば、キリナは聞いた? エルスさんの家のスキル研究所のこと」
「カンガード家のスキル研究所? それがどうかしたの?」
「なんかね、最近、誰かが研究所の周辺を調べている痕跡があるんだって。研究データを盗もうとしている盗賊団の仕業じゃないか、って言われてるの」
「へえ……だから、今日はエルス、余計にピリピリしてたのか」
「え? エルス、ピリピリしてた? いつも通りに見えたけど」
「あ、えっと……何となくそう思っただけよ」
『敵意把握』でわかったなどと言えるわけもないので、そうやってごまかす。
「それにしても盗賊団、ね。あり得ない話じゃないけど……よくそんな話知ってたわね」
私がそう聞くと、リンは少し誇らしげに胸を張った。
「一般国民の間では話題になってるんだよ! わたしが町を歩いていた時に、知り合いのお店の人が教えてくれたの。貴族の間には、まだ広まってないみたいだけど、時間の問題だと思う」
「一般国民の話題は、やっぱりリンが一番強いかぁ。そういう強み、もっと生かせるといいね」
「うん!」
そうして、私とリンは別れた。
翌日、赤フードを被った私が冒険者ギルドを訪れると、受付のお姉さんが飛んできた。
「あ、赤フードさんっ! ちょうどよかった!」
「どうしたの、落ち着いて」
「カンガード家の所有するスキル研究所から、赤フードさんをご指名の依頼です!」
嫌な予感がした。
「どんな内容?」
そう聞くと、受付のお姉さんは答える。
「盗賊団から研究所を守る、警備任務だそうです! なんといってもですね、報酬金がすごいんです! 受けてくださいーーー!! ギルドのためにも!!」
はぁ、と私は息をついて、詳細を聞くことにした。
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