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『朝日が昇る夜に』
村人)「うわぁぁぁあ!!!!!!誰か助けてぇえ!!!!!!」
村人)「あいつだ!しゅ、しゅ‥‥」
??)「ぁあ?ギャーギャーうるせぇな。俺がなんだって?」
その声を聞いた村人は恐る恐る振り返った。
するとそこには人の大きさなど優にこえた「鬼」がいた。その鬼は村人に向かって大きく拳を振りかぶった。
村人)「酒天童子だぁぁあ!」
グシャ
村人の頭は地面に血しぶきを撒き散らした。
酒天童子)「おい!俺に酒を持ってこい!」
その鬼は酒を好み、酒を求め日々村を襲っていた。
二本の角を持ち合わせ、鋭い眼孔にぶっきらぼうの言動。人々は酒天童子を恐れた。
そんなある日のことだった。この鬼の手に小さな少女の手のひらが重なったのは。
酒天童子)「この屋敷にはたんまりと酒がありそうだ!」
その日酒天童子は森の奥に隠れるように建てられた大きな屋敷を見つけた。そしてどう侵入しようかと考え込んでいる。
酒天童子)「あー、どうやって入るか‥‥考えんのめんどくせぇ!」
酒天童子は正面から堂々と歩きだしていった。
門番)「おい!止ま‥‥
グチャ
酒天童子は目に写る人間を次々と殺していった。
人間を殺すことなど酒天童子からすれば赤子の手をひねるようなものだろう。
屋敷を漁っている中、酒天童子の前に1人の男が立ちはだかった。怯える素振りを見せず酒天童子に向かって刀を突き立てた。
男)「初めましてで悪いんですけども。ここの部屋だけは守らなけりゃいけないんでね。死んでもらいますぜ。」
酒天童子)「この部屋だけ妙に人間が多くて嫌な感じがすんなぁ?‥‥この先に何かあんだろ?」
それを聞いた人間たちは皆震え上がった。
男)「この先には一歩も近づかせられませんな。それでも進むのならば私を倒してから
ザシュ
まばたきの間に男の頭は一瞬で床に転がり、血が吹き出た。
酒天童子)「わりぃ。何か言いかけてたか?俺そういうの興味ねぇんだわ。」
周りで見ていた人間も一斉に酒天童子に向かって飛びかかった。が、酒天童子はそれをものともしなかった。人間の血しぶきが飛び散った壁や床。その先には厳重に閉められた扉があった。酒天童子はその扉を怪力でこじ開けた。
酒天童子)「ほーん。この先地下になってるな!なーんかありそうだ!」
地下への階段を下りていく。
静けさが漂い、光など到底届くわけもないほど深い。
するとそこには檻があり、何かを鎖で繋いでいる。そして酒天童子は広がる光景に目を見開いた。
檻の中にいたのはまだ五歳かそこらの少女だった。
首もとを鎖で繋がれており、髪は整えられておらず、ボサボサ。服は泥だらけ。目には包帯が巻かれている。体は痩せ細り、骨張った皮膚が少女の今までの人生を物語っていた。
少女は怯えることも泣きわめくこともなく、ただ生きることを諦めているようだった。
酒天童子)「なんでお前‥‥いや‥‥」
酒天童子が少女の方へと一歩ずつ近づいていく。
そして少女と同じ目線になるまでしゃがみこんだ。
酒天童子)「‥‥ここ出たいか?」
少女は酒天童子の方へと顔を向けたままなんと返せばいいのか分からず固まっていた。
酒天童子は立ち上がり瞳の中から少女を外した。
その瞬間だった。酒天童子は何かに服を掴まれた。
あの少女だ。
少女)「で、でた、、い、!」
今まで声の出し方を忘れていたかのような、かすれた声。だが、それは強く切望する声でもあった。
少女の瞳に巻かれている包帯が涙で滲んでいった。その一滴が落ちるよりも速く酒天童子は動いた。
ドガン!!
少女の前にあった檻が、今の一瞬で全てへし折れ床に転がっている。
少女は驚いたまま座り込んでいた。
酒天童子)「もうお前は自由だ。自分の見たいものを見て、食いてぇもん食って、好きに生きろ。んで、次また会ったときは殺す。」
酒天童子は来た道を戻ろうと振り返った。
酒天童子は少女から離れて行く。
少女)「ま、、、って」
少女は酒天童子を追いかけた。そして手を伸ばす。
ガバッ
酒天童子)「ぁあ!?何やってんだ!お前!」
少女は酒天童子の片足に抱き付きへばりついた。
酒天童子)「離れろ!」
少女はそれでも手を離すことはなかった。
その瞬間。
ゾワッ!!
酒天童子は悪寒がした。何故か分からない。
酒天童子は吸い込まれるように少女の方を見た。
少女の瞳には包帯が巻かれている。
にも関わらず少女から刺すような視線を感じた。
そして口を開いた。
少女)『私を一緒に連れて行け。』
ドクン!!!
酒天童子は心臓が強く鼓動したのが分かった。
酒天童子)(なんだ‥‥今のは!?)
そう思っていると
ゴボッ!
少女は血を吐いた。
そしてよろめき後ろに倒れそうになった。
酒天童子)「おいっ!!」
酒天童子は少女の手を取り、倒れないように抱き寄せた。
初めてこの鬼の手に、小さな少女の手のひらが重なった瞬間だった。
少女は動かず、意識がないようだった。
酒天童子)「大丈夫か!?‥‥もしかして死んだのか!?」
スーピー スーピー
酒天童子)「‥‥‥‥寝ただけかよ!」
少女の手のひらに重なる酒天童子の手は、まるで人間を殺めてきた残虐な手には見えない。
心から少女を心配する優しい手。
酒天童子)「あー、どーすっか?こいつ?」
入り口からこぼれた月夜の光が静かに二人を照らしていた。
2話へ続くかも‥‥