暗い部屋に小さくランプが灯る。
肩幅の広い男は溜息を吐きながら目の前の紙に感情を乗せる。
「私には夢が無い、何処へ行けばいいのか」
下らない言葉を綴れば、それを消し、また綴る。
「私には才能が無い、何の結果も残さない」
机の横にあるゴミ箱に紙が日に日に増えてゆく。
「私には忍耐が無い、言い訳ばかりの日々」
煙草にライターで火をつけては咳き込む、目の端に映るのは燃えゆく紙。
「私には自我が無い、人の言葉に操られる」
ランプに自分の姿が映る、それははたまた人なのか、何なのか。
「私には情熱が無い、価値が無いのと同義」
ランプには2つの炎が揺らぐ、片や周りを照らす火、もう1つはライターのような火である。
ライターのような火、それは曖昧だ、その火で進むべき道を示せるか、私はそうは思わない。
ライターのような火、それは過程だ、その火で成果を残せるか、私はそうは思わない。
ライターのような火、それは刹那だ、その火で永い安定をもたらすか、私はそうは思わない。
ライターのような火、それは道具だ、その火で自らの為に光れるか、私はそうは思わない。
こんなに拙い火に誰が意味を持たせるのか、否、持たせること等できないだろう。
私はそう思う。
そうだ、私がそう思っただけなのだ。
目を向けてみろ、ライターの火は役に立っていないだろうか。
否、そんな事は無い。
進む道は見えなくとも、歩く事はできる。
成果は無くとも、過程の結果が生まれる。
安定は無くとも、何度でも燃え上がる。
自分の為にならなくとも、誰かの為になれる。
拙い火同士が大きな炎を生み出すのだ。
人間も同じだ。
ひとつ言うなれば。
その火を決して消すことなかれ。
コメント
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プロムンを感じるけど、なんか深すぎてホントに君が書いたのか疑問に思った