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タイトル:水面下のレッスン
「体の力を抜いて、水に預けてください。」
透き通った水面の下、インストラクターの瀬尾の声が耳元で囁く。彼の手が、背中から腰にかけてそっと支えるたび、水の冷たさと指の温かさが交互に押し寄せてきた。
奈々は成人向けの水泳教室に通い始めてまだ数週間。けれど、瀬尾の指導はいつもどこか“距離が近い”気がしていた。
「力みすぎると浮かびませんよ。ほら、深く息を吸って…そう、いいですね。」
彼の手がゆっくりと奈々の腰に沿って動く。滑るような水の中、彼の指先が意図せずして水着の布の縁をかすめる。
(……いま、わざと?)
奈々はそう思いながらも、抗うことができなかった。水中では声を上げることもできず、むしろその密やかさが心拍数を上げていく。
「ちょっと、仰向けになってもらえますか?」
背後から支えられる形で、彼女の体が水面に浮く。瀬尾の手が腹部を支える…と思った瞬間、その指はわずかに下腹部へと滑り落ちた。
「……瀬尾さん……っ」
「リラックスしてください。水はすべてを受け入れますから。」
水音の下で、二人だけの世界が静かに熱を帯びていく。目を閉じれば、プールの蒼さと肌に残る微細な感触が鮮明に浮かんだ。
レッスンはまだまだ、終わらない。