「……朱莉、朱莉!起きて!」
優華の柔らかい声で朱莉はようやく目を覚ました。
彼女の目にまず飛び込んできたのは白い床。視線を上げても白い壁。おまけに天井も白い。
朱莉以外の3人も困惑している様子だった。
「まさか本当にこんなことになっちまうとは……」
「本当はこれからの展開にわくわくしちゃってんじゃないの?お兄ちゃん?」
「流石に焦ってますが!?」
兄の悲鳴混じりのツッコミで空気が和らぎ、楓と優華が笑みを漏らした。
その時、彼らの反対側からドアノブを動かす音がした。全員がそちらを振り返る。
そこにいたのは、黒いスーツに身を包んだ男性……いや、男の子だ。何故か右目元は長い髪で完全に覆われていた。
「や、皆さんどうも。お目覚めになられたようで」
「えっと……あなたは誰、ですか?」
少し恐怖感を感じる声で楓が問いかける。
「そうですね、まあ、空とでもお呼びください。それよりもまずは皆さんのお話です。願いの間へのご招待、おめでとうございます。心よりお祝い申し上げます」
そう言って少年はぱちぱちと拍手をする。状況の全く掴めない4人はもちろんぽかん。
「あ、あの……願いの間って言うのは、何ですか?」
「ああ、優華さん。確かに貴女の言う通りだ。説明させていただきますね」
間違いなく名乗っていない相手に名前を呼ばれ、優華は驚きと恐怖から目を見開いた。
「願いの間は皆さんの秘めた願いを叶える場所です。貴方達にはこの場所から色々な所へ行ってもらいますので、それを通じて自分の本当の願いを見つけてください」
「……見つけられなかった場合はどうなるの?」
「それは、永久ここに来れるというだけです。願いが見つかればここには来れなくなりますし、見つからない限りはずっと来ることが出来ますので、安心してください、楓さん。まあ、皆さん今は急なことでお疲れでしょう。一旦帰ってもらいましょうか」
「お、おい。ちょっと待ってくれ」
「どうされました?千紘さん」
「またここに来れる、みたいな事を言ってたが……また来るためには4人でもう1度大樹に集まらないといけないのか?」
そう言うと、空はくすくすと笑いを漏らした。
「硬派ぶっている貴方からこんな積極的な質問が来るとは、少し予想外でした」
「……うるせえよ、引っかかったから聞いただけだ」
「はい、そういうことにしておきますね。次からここに来るには、家で眠って頂ければ大丈夫です。眠れば自動的にここに転送されます」
「眠ると転送される?どういうことよ?瞬間移動するの?」
「いえ、流石にそんなことは出来ません。ここはあくまでも意識上の世界。意識だけここに飛ばされるというだけです」
朱莉はふうん、と言って、納得したような素振りを見せた。
「じゃあ、帰って頂きましょう。次から帰る時も僕に言ってもらえれば大丈夫ですので。それでは、また」
空がぱん、と手を打ち鳴らすと、また白い眩い光に辺りが包まれ、4人は意識を宙に浮かせた。
朱莉はぱっと飛び起きる。どうやら今度は私が最初に起きたようだ。
先ほどの事を振り返る。空という少年に出会い、願いの間というものの話をされた。本当の願いを見つければ叶う、みたいな事を言っていた。
本当の願い……本当の願いなんて、私は……
「朱莉?今度は最初に起きてたんだな」
千紘が目を擦りながら朱莉に話しかける。
「何だったんだ?今のは……」
「さあ……まあ、1個分かるのは、よくわかんないことに巻き込まれたってところかな」
「それはそうだな……まあでも、よくわからないことに巻き込まれる、っていうのに関してはプロだろ?」
「まあね」
えへへと間延びした声を漏らして、朱莉はふにゃんと笑ってみせた。
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