コメント
3件
(´;д;`)良い…話だ 見るの遅くなった 自分を呪いたい…… 神作品を読ませてくれて ありがとうございます!! (* 'ᵕ' )☆
イイハナシダナー(´;ω;`) メンバー皆と作者様が幸せになれる呪いをかけときます。
リクエストを頂いていた続きでございます。遅くなってしまい申し訳ありませんでした。ちなみに書き切ったデータが一度消えてしまい心が折れそうになった作者です。
今回エーミールさんが死ぬ描写と血の描写がありますお気をつけてください。
視点 ゾム
子供の頃からたまに妙な夢を見ることがあった。酷くリアルで痛みなども感じた。それに出てくる人間はみんな必ずモヤのようなもので顔がわからなかった。真っ白な空間に不釣り合いな顔のわからない人間が出てくる不気味な夢。でもその夢をみた朝は必ず恐怖で流れたのではない涙が頬を濡らしていた。
その日も夢を見た。
また真っ白な空間で座っている自分の腕の中で顔のわからない男が血だらけで苦しんでいる。ぼやけていく視界の中で手を伸ばしてきたその男がなにかを喋った。それを合図に夢から覚める。そんな今日も今日とて友達のいない自分は何でもないどこかつまらない日常を送るのだと思っていた。
そいつが現れるまでは
普段なら絶対に行かない図書館にオカンの本を返しにきた時漫画コーナーに気を取られてつい寄り道してしまい立ち止まっていると、どさり、と言う音がなった。音のした方向へ視線を向ければ同い年くらいの奴が数冊の本を落として酷く驚いたように目を丸くしていた。 何やってんだか、と思っていればハッとして本を拾い出すそいつが何故かほっとけなくて拾うのを手伝ってやった。
「あっ!ありがとうございます。ゾムさん!」
「あ?」
「へ?」
今日初めましての奴に名前を言われ驚く。そのせいで返事にヤンキー感が出てしまったのは許して欲しい。警戒して相手をよく観察する。コーヒーにミルクをたくさん足してたような髪に白に近い瞳と珍しい容姿をしていた。でもそいつの着ていた茶色がかった制服が名門校のものでそちらに目がいった。違いましたか?とでもゆうような茶色いそいつに素直に聞いてみることにした。
「なんで俺の名前知ってんねん。」
「え!?」
どこか間抜けなその声に自分が忘れているだけだろうかと思ったが、こんなボンボン高校に通うような奴は知り合いにいない。
「嘘やろ!記憶ないやん、、、どないしよう、、、」
不思議に思いとにかく立ち去ろうとフードを被るとそれに気づいた茶色い奴が慌てて声をかけるくる。
「手伝ってくださったお礼に何か奢らせてください。ここの近くにカフェがあるんです。これも何かの縁ですし、ね?」
たかが本を拾うのを手伝っただけで普段なら人見知りな自分が絶対に頷かないその問いにハの字に眉を動かしたそいつが情けなくて頷いてしまった。トボトボと歩いてカフェに向かう、案外近くにあったようで「ケーキが美味しいんですよ」という声と一緒にカランカランという軽快な音を立てて扉が開く。ウエイトレスに案内されておすすめのケーキと紅茶を注文して無言で待っていればまたもや軽快な音を立てた扉から革靴のコツコツという音が近づいてくる。
「あぁ、なんだお前もここに来たのか。」
そんな特徴あるバリトンボイスが聞こえそちらをみると光を反射する金髪と血のように赤い目をもつまた珍しい容姿の奴がいた。私服なのだろうか、黒い眼鏡をけか、堅苦しい黒い服を着ていて何というか、その、圧があり近寄り難い。
「おや、まぁ、貴方とこの時間帯に会うのは珍しいですね。」
まぁ、俺は見たことは無いから必然的に目の前の茶色い奴の知り合いなわけで、親しげに話したあと隣に座り注文を済ませた黒い奴に同じ席に座るのかと驚いた。人見知りの自分には少々辛い。二人の喋りをどこか聞き流しながら待っていれば注文したケーキがやってきた。一口食べて幸せな甘みに舌を喜ばせていればそう言えばと茶色いやつが口を開いた。
「まだ自己紹介をしていませんでしたね。私はエーミールと言います。」
柔らかく笑うそいつの言った名前に動悸が止まらなくなる。なぜだ?どうしてこんなに頭が痛い?
「そしてこちらはグルッペンさんですよ。ゾムさん。」
そいつがまた俺の教えてもいない名前を呼んだ。その瞬間にガラスが割れるような衝撃が頭に響いた。まるで合っていなかったピースがピタリとはまるような感覚。フラッシュバックが起きた。血だらけので本が乱雑に散らかる部屋の中。お気に入りのパーカー着て座っている自分の腕の中に男がシャツに血を染み込ませ苦しそうにしている。あぁもう助からないのだと気づき涙で歪んでいく視界の中でいつも爛々と輝く真珠色の瞳を弱々しく細めて笑う男がゆっくりと手を自分の頬に伸ばす。口を開きか細く紡がれていく音を一音一音聞き逃さぬように耳をそば立てる。
『また会うその日まで、覚えていてくださいね。ゾムさん。』
一気に現実に引き戻された自分の頬を涙が濡らす。その不愉快な暖かさのせいで言葉がうまく出てこない。それでも呼びたくて、確かめたくて、必死に喉を動かした。
「え、エミさん?」
「はい。」
「グ、グルッ、ペン?」
「あぁ。」
いつものように柔らかく笑うエーミールと呆れたようにでも安心したように笑うグルッペン。それが嬉しくて嬉しくて涙が次から次へとでてくる。やっと止まったそれを誤魔化すように紅茶を一気に飲み干しているとくすくすと二人分の音が聞こえてくる。だから二人を、いや、主にエーミールを、鋭く睨む。
「俺許してへんからな。」
「え?」
そう、俺は許していないのだ。こいつが、この馬鹿が戦闘クソ雑魚なのに味方最強の脅威と言われた戦闘員だった自分を助ける為しなくてもよかった無茶をしてあんな死に方をしたのだ。やめろと言ってもやめずに無茶したこいつを俺はまだ許さない。
だから、、、、
「だから、今度改めて飯いこな。エミさん?」
「ヒェッ!」
怯えるエーミールとそれを見て愉快そうに笑うグルッペンを見て改めて思い出せてよかったと思った。思い出さずいつまでも退屈なあの日々を繰り返していくだけだった思うと恐ろしい。他の奴らも見つけてまた巻き込んでみんなでバカ騒ぎをしよう。そしたらきっと退屈とは無縁の日常を過ごせる。
それが俺達の幸せだから。
ここまで読んで頂きありがとうございます!
ちなみにグルッペンさんはエーミールさんがこっそりいじっていたスマホによって助けを求められてカフェに馳せ参じました。内心ゾムさんが思い出してくれるか不安でドキドキだったそうです。
それではまた次の作品でお会いしましょう!