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今日はアリスもとっても笑っている
北斗の家族以外の誰かとこんな風に話をするなんて本当に久しぶりだ
そしてこの二人はアリスにとても好感を持ってくれている、手土産もフラワーアレンジメントも大切にするとものすごく喜んでくれてかえって恐縮してしまうぐらいだ
天気の良い眩しい陽光がジンの、大きくて美しい庭に差し込み心地ち良い、そよ風が吹いてくる
北斗とジンが花壇のレンガを積み上げ、貞子とアリスが縁側に座って庭仕事をしている、男性二人を眺めながらも話は尽きない
やっぱり北斗さんの方がよいお尻をしている
貞子が言った
「本当なら自宅出産を希望していたんだけど、町で唯一の産婆さんのネネ婆さんが、階段を踏み外しちゃって今歩けないのよ 」
「もうろくしたんじゃないのか?」
麦わら帽子を被ったジンが言う
「ネネ婆さんの事をそんな風に言うものじゃないわ、ジンだってあのおばあさんに取り上げて
もらったのよ、だからジンの母さんもネネ婆さんが良いんじゃないかって言ってたんだけど・・・」
「それで急遽、隣町の総合病院で産むことになったのか?」
北斗も土いじりから腰を上げ、心配そうに聞いた
アリスも二階の子供部屋を見せてもらった時、入院グッズが置かれているのを見た、いつでも入院できるように貞子は準備している
「隣町の総合病院だったら安心だな」
「ここから1時間ぐらいかかるけどな、何かあった時に心配だ」
「でも初産は陣痛が来てから生まれるまで、半日かかるって言うわ」
アリスがポタポタ焼きのせんべいを、袋から一枚取り出して、自分に一枚、貞子に一枚差し出す
「まだ・・・陣痛の気配は?」
貞子が首を振ってポタポタ焼きをかじる、パリンッと周りに、良い音がした
「さっぱり何の気配もないわ・・・のんびりした子よ、今週いっぱい待って陣痛が来なかったら入院して、陣痛促進剤で出すって担当の先生が―なるべく自然に産みたいのに・・・」
貞子が大きなおなかをさすりながら、不安気に言う
「ママのお腹の中が気持ち良いのは、わかるけど早く出てきてね~」
アリスは両手を口にそえて貞子のお腹に向かって叫んだ
キャハハハと貞子が笑う
「ジンと同じことしてる~」
「おーい!さっきからずっとスマホが鳴ってるぞ 」
縁側に置いてあるジンのスマートフォンを、指差して北斗が言う
「親父だよ!早くイノシシ肉を取りに来いって言ってるんだ」
貞子が顔を輝かせた
「今夜はぼたん鍋パーティーしましょうよ、ねぇアリス!晩ごはん食べてってよ!」
アリスが両手を合わせて北斗に、期待の視線を向ける
「私イノシシのお肉食べたことないわ、食べてみたい 」
「好き嫌いが分かれるけどな、俺は好きだな」
北斗もアリスを見て微笑む
「新鮮な肉はそれは上手いぞ!」
「ジン!北斗と取りに行ってきてよ!」
貞子の言葉にジンが心配顔になり、ふだんのおどけは影をひそめた
「でも・・・・行って帰って来ると、1時間はかかるぞ?その間にもしお前に何かあったらどうする? 」
「だぁ~いじょうぶよ!アリスがいるから」
貞子にぐいっと抱き着かれて、キャハハとアリスは笑った
「それに今日も明日も生まれる気配は全く無いわ、私はもう来週促進剤で出す決意は固まったわよ」
「でも・・・・ 」
ジンが唇を尖らしたり、ひっこめたりする、貞子の傍を離れるのが心配でたまらないのだ
そしてそんな陰鬱なジンの顔が、たとえ1時間でも見なくて済むなら、今の貞子は何でもしそうな勢いだった
「とにかく!北斗とお義父さんの所に、イノシシ肉を取りに行ってきて!、久しぶりに私が腕をふるうわ」
「貞子さんのぼたん鍋たっのしみ♪ 」
「私のぼたん鍋を食べたら、美味しすぎてほっぺが落っこちてしまうわよ」
「女性陣に結束されたら、俺たちゃただの奴隷さ、行こうかっジン 」