「その村の名前は?」とシュリメルが聞いた。するとハラートは「バランシェ村という小麦が有名な村ですが…」「おっ?今から里帰りか?」「里帰りと言いますと?」「実は彼、そのバランシェ村が出身なんです」「作用でしたか。でしたら村長に宿を貸してもらえないか聞いていただけませんか?」「任せてちょーよ」「これは助かります。隊長無しでは傭兵をやすやすと泊めてくださる方なんてめったにいませんからね」「と言いますと?」「最近は武装集団と傭兵団を勘違いする人が多いのですよ」「その武装集団とは?」「一部では実力はあるのに問題行動ばかりで組合から追い出された奴らの寄せ集めですとか反帝国主義者ですとかとにかく様々な噂があるのですよ」「仮に自由戦士などだった場合雇い主が居るはずです」「その通りです」「この武装集団を捕まえたとなればカリオの方は戦う理由がなくなるはずだ」「やってることと言えば国や周りの諸国に対する威圧だけだから捕まえるのは難しいんじゃない?」とリーニ。「仮にドランシアの内戦や侯爵と関わりがあるなら侯爵への毒が効き始めたら動かざるを得ないじゃないかと思ってる」「どういうことですか?」「私は侯爵に金貨2億枚分の武具を売りました。そしてノルディアで万が一鉄がまた高騰し武具の価値が上がったら私が買ったときと高騰した時との差額を侯爵が払うという契約書を渡しました。こうなれば侯爵は迂闊に他国への軍事侵攻ができる程の経済的余裕は無くなります」「他国への軍事侵攻と言いますと?」「ハラートさんはまだ知らなかったのですね?侯爵の噂の中に戦争のどさくさ紛れてミヤシロを制圧しようとしているっていうものがあるんです」「そうだったのですか」「しかし侯爵がミヤシロを制圧したとして何の得があるのです?」「鉱山資源などの確保をして鉄が高騰しているノルディアに転売を行い内戦による損失額をなくそうとしているのだと思いました。しかしロエルの動きや私がノルディア製の武具を売った時に見せた鉄の値段表を見ても特に表情は変わっていませんでした。つまり侯爵には別の目的のためにミヤシロを制圧しようとしているのだと思います」「別の目的ですか…。一体何が侯爵をそこまで掻き立てているのでしょうか?」「それによ、侯爵がミヤシロを制圧すれば軍の偽金貨騒動やドランシアの内戦事情の情報が漏れた時真っ先に情報が集中してかつ外部に広がる可能性が高いのがミヤシロだからじゃね?」「だとしたら制圧と言うか貴族統治に政治方針を変えさせればいいだけだと思うが…」「考えても仕方ありません。ほらバランシェ村が見えてきましたよ」「そうですね。シュリメル、悪いが村長さんに話を通しに行くとき俺もついて行っていいかな?」「いいけど何で?」「ちょっと聞きたいことがあってね」「別にいいよ」「ありがとう!それじゃハラートさん。我々は村長のところに行くので村の入り口で待っていてもらえますか?」「わかりました」そう言って俺らは村長の家へ向かった「村長〜!今帰ったぜ☆」「シュリメル!急に旅に出るとか言って出ていったきりだったのに帰ってくるときも急だな…」「悪い悪い。実はノルディアのルメル港市支店?に行くことになってその途中だから宿借りられないかなって?」「それは構わんが…ハヤセルさんの後ろにいる人は…」「村長さん。こちらは訳あって一緒に旅をしているリーニです」「おぉそうですか。でしたら3人部屋のほうがよろしいですかな?」「2人部屋を2つお願いできますか?」「わかりました。今鍵を持ってきますね」そう言い村長は部屋の壁にかけてある鍵の中から木で”Ⅱ”と”Ⅲ”と書かれた札を持ってきた「こちらが部屋の鍵でございます」「ありがとうございます。それとこれよければ新しい農具を買うときにでも使ってください」そういい俺は聖金貨を1枚渡した「よろしいのですか?」「いつもお世話になっているお礼です」「そうですか…ではありがたく」そういい俺たちは村長の家を後にした。「ハラートさん。お待たせ致しました2人部屋が二部屋取れましたが何かご要望はありますか?」「いえ、特には」「でしたらシュリメルと相部屋でもよろしいですかね?」「構いませんよ」「助かります」「それじゃシュリメルまた明日」「あぁ、また明日」その言葉を言え頃には日はとっくに暮れていた。