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夕方。家の前にはケットやムツキ、手伝いに来たクマやゴリラなどが立っていた。今日はもう遅いので、クマやゴリラには空き部屋に泊まってもらい、明日から取り掛かることになった。
「ただいま! ムッちゃん!」
リゥパやルーヴァ、アルが戻って来た。リゥパは、ムツキを見つけると居ても立っても居られなかったようで、名前を叫びながら抱き着きに向かった。
「おっと。リゥパ、どうした?」
ムツキはリゥパの衣服が土や木片などで汚れていることに気付き、何かがあったようだと察した。
「褒めて! とびきりに褒めて! いつになく褒めちぎって」
「いつも明るくて朗らかで素敵だよな。リゥパがいると俺まで明るくなれるよ。いろいろと話も聞いてくれるから安心できるしな。可愛いからドキッとすることも多いし」
ムツキは言われた通りに、普段から思っていることを感謝の意味も込めて伝えていた。リゥパは嬉しくなって彼の身体に顔を埋める。
「ありがとう! いつもそう思ってくれているのね! でも、そうじゃなくて」
「リゥパ、今の今まであーたが何をしていたのかを伝え忘れているわよ……」
ムツキが不思議そうな顔をする前に、ルーヴァがフォローを入れた。彼女はすっかり疲れてしまったのか、近くの木材に止まり、弱々しい声を出していた。ムツキは心配そうにルーヴァを見つめるが、ルーヴァは問題ないといった雰囲気で翼を横に振った。
「あ、そうだった。さっき魔物がいたから退治したって言い忘れていたわ」
「ええ。リゥパはがんばってくれましたよ。おかげで助かりました」
リゥパは言われてハッと気付き、今まで何をしていたのかを伝える。アルは約束通り、彼女の援護をする。
「そうなのか? それはお疲れ様だったな。よくがんばってくれた。ありがとう」
ムツキはリゥパの頭を撫でながら、魔物退治のお礼を伝える。彼は彼女との出会いの時も魔物退治のときだったなと懐かしい思い出が蘇ってきていた。
「えへへ。ぎゅー。……今はとても甘えたいの!」
「いいこだな」
こういうピュアなスキンシップもいいよな、とムツキは考えていた。元々、彼の願うハーレムは学園モノ的なピュアで初々しい感じのものだったが、ユウのハーレムに対するイメージと自身のスケベさによって、割とムフフな感じのものだらけだった。
もちろん、彼は後悔などしていない。
「…………ただいま戻った」
「はニャー……」
遠くからナジュミネが声を出した。彼女は高さだけでも自分の身長の数倍はあるような岩を担いで帰って来たのだ。想定よりも大きすぎる岩にケットは思わず口をあんぐりと開けて、呆けたような声を上げてしまった。
「ナジュ、おかえり。大丈夫か?」
「おかえり、ナジュミネ。よくそれで平気でいられるわね……」
ナジュミネはそう言われてしまい、不思議そうな表情で2人を見つめる。
「え、頼まれたから持ってきたのだが……サイズも多分合っていると思うぞ。ケット、石はどこに置けばいい?」
「……ニャ! ありがとニャ。助かるニャー。ここに置いてほしいニャ」
どうも伝わり方が違ったようだとケットは気付いたが、今さら指摘したところで誰も喜ばないので、素直に受け取ることにした。もちろん、使い道はたくさんあるからあっても困りはしない。
「ムッちゃん。ナジュミネも褒めてあげないと」
「え、あ、そうだな」
リゥパはさすがに自分だけ甘えるのに気が引けたのか、まだポジションを確保しつつもナジュミネにも意識がいくようにムツキにそう促した。
「ナジュ」
「ん?」
「ありがとう。ナジュが重い物を運んでくれて助かったよ。手伝えなくてごめんな」
ナジュミネはその言葉に照れながらもぶんぶんと首を横に振った。
「あの程度、軽いから全然問題ない」
「そこは素直に、ぎゅーってして、甘えればいいのに」
リゥパはナジュミネをけしかけるように言葉を掛け、ムツキの身体に頬を寄せる。
「なっ! 妾はリゥパのようにはできん!」
「私のように、じゃなくて、ナジュミネができる素直さを出せばいいじゃない。素直で真面目なところがいいところなんだから」
リゥパは自分で良いことを言ったなと自画自賛し、鼻が高々になっていた。
「そうじゃなくて……」
「???」
ナジュミネは何かを言いあぐねているようで、珍しくもじもじとしていた。
「汗をたくさんかいた状態で臭いが気になるんだろう。よくリゥパは気にならないな、と言いたいんじゃないか?」
「クー!」
クーがナジュミネの隣から何気なく一言呟く。ナジュミネもさすがにあの岩を持ち上げて来たので、汗をかかないわけがなかった。自分が汗臭くないか、そして、リゥパは土や木片でドロドロとした衣類でムツキにくっ付けているな、すごいな、と思っていた。
「…………」
リゥパはムツキから無言で離れた。
「リゥパ?」
ムツキはなんと声を掛けていいのか分からず、ひとまず名前を呼ぶことにした。
「ごめん……全然、ちょっと、そういうとこ、気にしてなかったから……」
リゥパは先ほどとは別の意味で顔を真っ赤にして、徐々にムツキから離れていく。声も徐々に音量が小さくなり、最期の方は聞き取るのも困難だった。
「いや、何も問題ない」
「もう! 私の方に問題あるだけだから! ……ぐすっ」
リゥパは少しずつ離れた後に、へたり込むように座った。
「……お風呂ニャら準備できているニャ。今日はもう遅いし、明日から頑張るニャ」
ケットがリゥパのそばまで駆け寄り、前足で彼女の肩をポンポンと優しく叩く。肉球の感触がリゥパにはより優しく感じた。
「リゥパ、一緒に入るか? 妾も汗を早めに流したいところだ」
「そうね……」
ナジュミネとリゥパはその後一目散に風呂場へと直行し、丁寧に全身を洗い流したのだった。