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どうでもいいはずなんだ。
俺は父親が嫌いだ たしかに、尊敬できる部分も多かった。でも、自分勝手なんだ。 いつも俺よりも、あいつのことを優先する 今日も、あいつ元へ行ってしまった。 ……だから嫌いなんだ。
そんなある日、あいつの父親が俺の父親と話していた。 俺たち後継者である、国についてだった。 後継者は簡単に言えば、後継者が出てきたら確実に戦争に負けて国は消える。 そんなの…あんまりじゃないか
そう思った瞬間、胸の奥がひどく冷えた。 後継者は希望のはずだ。 国が続くための、未来のはずだ。 それなのに、現実は逆だった。 後継者が生まれた瞬間、 その国は「終わり」に向かって歩き出す。 ……ふざけるな。 俺の父親は淡々と話していた。 戦略だの、均衡だの、必要な犠牲だの。 まるで命じゃなく、石ころでも並べてるみたいに。 そして、あいつの父親は―― 何も言わなかった。 ただ、静かに頷いていた。 その時、俺は理解した。 あいつが最近、ずっと一人だった理由を。 父親が、あいつを見る目が変わった理由を。 「守る対象」から 「処理すべき存在」に変わったんだ。
その数日後、あいつはあいつの父親に連れられてどこかに行った。 どこかは分からなかった、別に興味もない 友達でもないんだ。ただ親の付き合いで仲良くしてはいたが… でも。俺の中で少し突っかかった。 本当に……どうでもいいのか?
そう思った瞬間、胸の奥に小さな棘が刺さった。 気にしなければいい。 今までだって、俺はそうやって生きてきた。 あいつが一人でいても、 あいつの父親が冷たい目を向けても、 「国の事情だ」で全部片付けてきた。 なのに。 あいつが連れて行かれた日のことだけは、 妙に鮮明に覚えている。 振り返らなかった背中。 何も言わなかった横顔。 ……助けを求めていなかった、あの態度。 あれは、諦めていた顔だ。 俺はその場で立ち尽くして、 結局、声をかけなかった。
それから、あいつの姿を見かけることは無くなった そして、あいつの父親はいつもよりも鼻歌が多くなり、ご機嫌のようだ ……本当にこいつには、俺と同じ血が通ってるのか? どうしてそんなにも無情になれるんだ? 分からなかった。
理解したくもない。
ある日、夜目覚めてしまった。 ベットに父親がいなかった。寝る前はいたのに 俺は気になり、廊下に出た しばらく歩いていると、父親の仕事部屋の前に目を大きく見開いて、口を抑えて顔を青くする人物がいた。
海(かい)だ。 海は父親とあいつの父親の友人だが、とても優しく、俺たちにも気を使ってくれる。 海はこちらに気づいたようで、ハッとした顔をしてこちらを見る 「あ…いたんですね……」 彼はそう一言だけ言った 「どうしたんだ?親父は?親父はどうしたんだ?」 「…」 彼は答えなかった。 「あなたのお父さんは、今疲れて休憩しています。…こんな時間ですが、訪問客も来るようなので、今夜は私の家に泊まりませんか?」 「!お泊まり!!」 「そうです、好きな絵本を選んできてください、出来れば急いで欲しいです。そうしたら、沢山読み聞かせできるので。」 「うん、うん!わかった!」 俺はすぐに部屋に戻り、本を何冊か取り出した。
「持ってきましたね、では行きましょう」
「…?おいこっちは遠回りだぞ?親父のいる部屋の前を通った方が近いぞ?」
海は困った顔をしてこういう 「起こしてしまったら申し訳ないので、遠回りですが裏口から出ましょう?」
「…わかった。」
俺は、数日海の家に泊まることになった。 そして、俺は
新たに。後継者ではなく。国となった。
おかしい。後継者は…前の国が……まさか…そんな…
俺は息ができなくなった。 苦しい。悲しい。 どうして?あんなにも嫌いだっただろう?今更なぜ泣くんだ? その時、海が外から帰ってきて、俺を見てすぐに駆け寄ってきた。
数日後、一度家に帰ることになった。
誰もいない。静かな俺の家……いや、元父親と俺の家
父親の部屋に最初に行った そこには、元から赤いカーペットなのに、上から更に一部があるひとつの場所から広がるように赤黒くなっていた。 ……ごめんなさい。
そして、ふと頭をよぎったとは、あいつの存在。 今、あいつはどこで何をしてるのだろう? 俺が国となったということは、おそらくあいつもそろそろ国となる。 俺は何も考えず、あいつの家へと走った
あいつの家について、真っ先に向かったのは、しばらく使われてない旧館。 どんだけ趣味の悪いやつが作ったんだと言わんばかりにコンクリートだけで固められている。 まるで牢獄みたいな雰囲気だ。 館内を歩いていると、不自然にドアノブの壊れた扉を見つけた
俺は、あいつの家のどこかに斧があったことを思い出した。取りに行こう。 無意識に、そう思った
俺は自分より少しだけ小さな大きな斧を引きずり、さっきのドアへ向かった
不意に、あいつの名前をさけぶ なんでかは分からない でも、こうしないときっと後悔する そう思ったんだ。 俺は扉の前に着くと、思いっきり斧を振り、トビラを壊し始めた それと同時に、中で何かが倒れる音が聞こえた
扉が徐々に壊れ、出入りができるようになった時、俺は息を切らしながらそいつが居そうな方を見る そこには
……誰かわからないぐらいに痩せこけて、髪が伸ばしっぱなしで汚れたあいつが倒れていた
俺は泣きそうになった、いや、泣いていたと思う。 なんでだろう?どうでもよかったんだろう?なんで……
なんでこんなに胸が痛むんだ
俺はそいつに駆け寄り、持ち上げる。 軽い。当たり前だ、逆にこの見た目で重い方が怖い。 そして……なぜこいつは笑ってるんだ? どうしてこの状況でも笑っていられる?頭のネジでも抜けたのか? …… 俺は、そいつを抱っこしたまま、外に出た 彼は。こう言ったんだ
「空って、さ?綺麗だよね」
それを聞いて、空を見上げると、夕暮れで茜色に染まった空が広がっていた。
たしかに、綺麗だな。
終わり。