今日 は特別な日。いつも、屋上で煙草を吸っている貴方。私だけが知っている。貴方をいつも見ていたから。今日は貴方に会いに行く。特別な日。階段を登る。屋上に近づくにつれて私の心がはねてゆく。
「先生」
…………ふぅー
煙草の匂いが、鼻にくる。元々、煙草の匂いは好きじゃない。貴方と話すために今は我慢することにするよ。
「‥おいおい、受動喫煙。習ったばっかだろ。五十嵐。」
空を見ながら笑う貴方。片手にはスマホ。
(私を見なくても、私ってわかるんだ。)
くだらないことに嬉しさがでる。
何か話さなきゃ。息を吐く貴方に言う。
今気になったことを、頭の中で整理して、話す準備をする。
「なんで、私だって分かったんですか?」
「……そりゃー、まぁ、声だな。声」
嬉しい。貴方がこっちを見ていなくて良かった。こんな真っ赤な顔見せられない。恥ずかし紛れに、適当な話題を出す。
「煙草、やめないんですか?」
今日初めて私の顔を見つめる先生。
(悪い話題だったかな)
さっきまで、ずっと空を眺めていた貴方だったから、何か気に障ることがあったんじゃないかって不安になった。
少しの沈黙の後、口が開く。
「…昔、一回あったなぁ、彼女に言われてやめたんだ。まぁ、失敗したけどな。」
「そ‥うなんですね」
『彼女』というワードを聞き、戸惑いを隠せたか。考える前に言葉が出た。
「彼女さん、いるんですね。」
また貴方は笑う。
「別れたよ。」
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