テラーノベル
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体育館に、拍手が響く。
卒業証書を受け取るたびに、名前が呼ばれ、三年 生が一人ずつ席を立つ。
ひよりはその様子を、在校生席から静かに見つめていた。
生徒会長だった一ノ瀬。
副会長の朝比奈。
書記も、会計も。
全員、もうすぐこの学校を離れる。
式が終わり、校舎は写真を撮る生徒たちでにぎわっていた。
ひよりは、いつものように生徒会室へ向かう。
扉を開けると、そこには卒業生たちがいた。
「来たな」
朝比奈が笑う。
「最後だからな。ここ」
机の上には、きれいに整理されたファイル。 引き継ぎ資料だった。
「これ、全部……」
「小鳥遊がまとめたんだろ?」
「手伝っただけです」
そう言うと、一ノ瀬が首を振った。
「違う」
ひよりの前に立ち、まっすぐ言う。
「ここは、君 が繋いだ」
静かな声だった。
「俺たちは去るけど、生徒会は続く。その中心 に、君がいる」
ひよりは、言葉を探して、でも見つからなくて。 ただ、深くうなずいた。
「…..頑張ります」
「知ってる」
一ノ瀬は、少しだけ笑った。
帰り際。
生徒会室の前で、皆が立ち止まる。
「小鳥遊」
朝比奈が、照れたように頭をかく。
「困ったら連絡しろよ。卒業しても、副会長だから」
「それはもう副会長じゃありません」
書記が即座に突っ込む。
「うるせ」
笑い声が上がる。
最後に、一ノ瀬がひよりに言った。
「ここは、君の居場所だ」
「俺たちは、それを見つけただけ」
夕方。
卒業生たちは校門を出ていった。
ひよりは一人、生徒会室に戻る。 少しだけ広く感じる部屋。
でも、不思議と寂しくなかった。
机に座り、引き継ぎノートを開く。
そこには見慣れた文字と確かな想いが詰まっている。
(私、大丈夫だ!)
地味子と呼ばれていた時には、想像ができなかった今の気持ち。
小鳥遊ひよりは、
誰かに選ばれ、守られ、そしてーー受け継いだ。
生徒会室の窓から、夕焼けが差し込む。
物語は、本当にここで終わる。
睡蓮
633
mo4民のちい
4,238
#多分病み系
コメント
1件
卒業式のシーン、じんわりと胸に沁みました。特に一ノ瀬の「ここは、君の居場所だ」という言葉、あれがひよりの成長をすべて物語ってますね。生徒会室で一人になったとき「不思議と寂しくなかった」という感覚、先輩たちから託された信頼がちゃんと伝わってるからなんだなって。引き継ぎノートに詰まった想いも、夕焼けの余韻も、とても美しい終わり方でした。卒業って通過点なんだと改めて感じさせてくれる、素敵な話をありがとうございます。