午後5時半。授業も終わり放課後に差しかかろうとする時間帯。
このまま真っ直ぐ帰ろうか
ゲーセン、マック、本屋、どこか寄り道して行こうか
そんなこんな考えていると
いつものルーティーンと化されたバカでかい声が聞こえた。
pn 「らっだぁーーー!!!かえろー!!!」
ホームルームが終わり、帰りの支度ができ次第いつもクラスまで迎えにくるこいつ。
家も近く、小学校から一緒にいる幼なじみってのもあって成り行きで一緒に登下校をしている。
rd 「あのさ、聞こえてるからもうちょい声のボリューム下げてみたら?お前、毎回すげぇ目立ってんの知ってる?」
pn 「えなに、嫌だった?」
rd 「いや別そういう訳じゃないけど、あー、もういいわ。
ほら早く一緒に帰んでしょ」
そういうと満面の笑みで頷いた。
どうせ何を言ってもあのデカイ声が小さくなることは無いのだろう。そういう奴だ。
無駄な体力は使わずに諦めるのが1番手っ取り早い。
pn 「ねぇねぇどっか寄る?それとも俺んちで
ゲームしてく??」
rd 「あーー、マック行きたい。腹減った」
pn 「いいねぇ~。俺期間限定にしようかな~。」
ーーーーー
マックに着くと、ちょうど放課後の学生で混み始めていた。
ぺいんとが勢いよくドアを開けて入っていく。あの元気な背中を見てると、なんか置いていかれるみたいで、思わず早足になった。
rd「お、おい、お前急に走るなよ」
pn「えーー!だって期間限定チョコパイ売り切れちゃうかもよ??」
rd「ガキかよ」
そんなぶりっ子したぺいんとに笑いながら、ビックマックセットをふたつと三角チョコパイを注文しトレーを手にしていつもの席に並んで座る。
なんだかんだでこうやって二人でマックに寄るのはもう何回目だろう。
なんてドリンクのストローをいじりながら考える
rd「……なに」
pn「え、なにが?」
rd「いや、お前がずっとニヤニヤしてっから気持ち悪いなって」
pn「ひっど!俺そんなニヤけてた!?」
rd「とても」
そう言いながら目をそらす。
笑い合うたび、ふとした沈黙のたびに、胸の奥がざわつく。
店を出ると、外の空気は冷たくて少し耳が痛い気がする。
それに夕方の空が、紫とオレンジの境目みたいな色でなんとなく静かだった。
pn「うわ、もう暗っ」
rd「さすがに11月だしね」
pn「らっだぁ、、暖めて?」
rd「おっまえ、気色悪い声をだすな」
口では突き放すのに、歩幅はいつのまにかpnに合わせていた。
いつも通り、馬鹿みたいに明るく笑う声がすぐ隣にある。
その距離が、なんだか今日はやけに近く感じた。
pn「らっだぁって手、冷たそう」
rd「は?いきなり何……」
そう言う間もなく、ぺいんとの手がふいに俺の手を掴んだ。
温かかった。
ただそれだけのはずなのに、心臓がひどくうるさい。
pn「うわ冷た。ほら、あっためてやるよ」
rd 「…え」
pn「せっかく優しい親友があっためてやろうとしたのに」
rd「……いらねーよ、ばか」
その言葉に、ちくりと胸が刺さった。
“親友”って言われて、安心するはずなのに。
それからもなんとなくで喋っていたものの先程の出来事でぼやぼやっとしか脳に入ってこずにいた。
家に着いたのは、午後七時を少し回った頃だった。
玄関を閉めた瞬間、外の冷たい空気が一気に遠のいて、代わりにぺいんとの笑い声がまだ耳に残っている
リビングに母親はいるが挨拶する余裕もなくそのまま2階に上がっていく。
上着も脱がずに制服のまま、ベッドに倒れ込む。
天井を見上げても、頭の中はさっきのことでいっぱいだった。
手、つながれたんだよな。
それもほんの一瞬。
ぺいんとにとっては、きっとただの「友達のスキンシップ」みたいなもんなんだろう。
なのに、あの感触が、ずっと離れない。
rd「……バカみたい」
目を閉じても、指先がまだ熱い。
笑って誤魔化したつもりだったけど、あのとき顔、絶対赤かった。
気づかれてないよな……。
カーテンの隙間から、街灯の光が差し込んでる。
淡い橙色が部屋の壁に滲んで、なんとなくぺいんとの横顔を思い出させた。
無駄に明るくて、うるさくて、でも――なんでだろう。
時々、ちゃんと優しい。
rd「……ほんと、ずるいよな」
呟いた声が、自分でも驚くほど小さく響いた。
胸の奥がじんわり熱い。
これはきっと、風邪でも、疲れでもない。
けど、その名前をまだ口にする勇気はなかった。
𝐧𝐞𝐱𝐭…🧸𓈒 𓏸➤♡500
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