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「地元の有力者とか、海外とか……そんなの、俺の知ったことか!」
凍りついた空気を切り裂いたのは、若武の怒鳴り声だった。髪を振り乱し、真っ直ぐな瞳で黒木くんを指差す。
「黒木! お前がインフォーマントから得た情報だろうが、実家の繋がりだろうが関係ねえ。KZのメンバーに牙を剥くような奴らがこの裏にいるなら、リーダーであるこの俺が、全員叩き潰してやる!」
「若武……」
小塚くんが気圧されながらも、若武の言葉に小さく頷いた。
だけど、上杉くんの怒りは収まらない。瞳を険しく尖らせ、黒木くんにさらに一歩詰め寄る。
「誤魔化すな、黒木。お前の誕生日のコードが、なぜこんな場所に登録されている。これがただの偶然である確率はゼロだ。お前、本当は――」
「上杉、そこまでにしとけよ」
遮ったのは、忍だった。
ノートパソコンから目を離し、二人を静かに見つめる。結ばれた髪を揺らしながら、人を傷つけない優しい声で、だけど毅然と言った。
「これ以上はIT、つまり俺の領域(テリトリー)だ。このコードの出処も、仕掛けられたバグの正体も、俺の技術で全部引き摺り出してやる。だから仲間割れなんてするなよ。……任せろって言ったろ?」
忍の言葉に、上杉くんは忌々しそうに拳を握りしめ、ふっと視線を逸らした。
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### 2.
「……ありがとう、七鬼。助かるよ」
黒木くんのその微笑みはあまりにも完璧で、血の通っていない冷たい彫刻のようだった。
「せっかくの現地調査だ。俺は少し、周囲の見回りをしてくる。これ以上ここにいると、上杉の脳がオーバーヒートして可哀想だからね」
「あ、黒木くん……!」
私が思わず一歩踏み出すと、黒木くんは私を振り返り、低く、突き放すような声で言った。
「ついてくるなよ、アーヤ。……お前はそこで、大人しくみんなと一緒にいればいいんだ」
それは、明確な『拒絶』だった。
私をこれ以上踏み込ませない、明確な線引きはあまりにも切なくて、私の胸はズキリと痛んだ。
黒木くんが一人で茂みの奥へと消えていく。その背中を、翼がじっと見つめていた。
「……アーヤ」
翼が私の前に立つ。
「……俺、悔しいよ。アーヤの『心の友』は俺なのに。アーヤがそんな顔をして見つめる相手が、どうして俺じゃないんだろう」
「翼……」
翼の真っ直ぐな言葉に、私は言葉を詰まらせた。
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### 3.
その時、忍の持つノートパソコンから、警告音がけたたましく鳴り響いた。
「――っ、全員警戒しろ! 磐座のアンテナから、高周波のジャミングの逆探知(バックトラック)が来てる! 奴ら、俺たちに気づいたぞ!」
「なんだと!?」
若武が叫ぶ。
朝霧が急激に濃くなり、周囲の雑木林から、ガサガサと不審な人影が近づいてくる音が聞こえた。
黒木くんの隠された過去、そして彼の家庭が差し向けてきた「追手」の手が、ついにこの神聖な磐座の結界を破って、私たちに襲いかかろうとしていた。
私は手を強く握りしめ、震えながらも黒木くんが消えていった闇の奥を、ただ必死に見つめ続けていた。
コメント
1件
読み終えました……第8話、すごくいいところで終わりましたね。 若武の怒鳴り声から始まる緊迫感、そこに上杉の疑念、そして忍の「俺の領域だ」という言葉がすごく効いてました。それぞれの立場がはっきりしているのに、仲間割れになりかねない危うさもあって、目が離せなかったです。 黒木くんの「ついてくるな」の拒絶も切なかった……。翼の告白も胸に刺さりますね。 追手が迫るラスト、続きが気になりすぎます!