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久方振りに書きました。かなり鈍ってます。
牛←←←←←猫 です。報われない猫の話。
とある曲のパロディです。分かる人いるかな。ということで失恋 ・ 曲パロ おっけー!って人はお楽しみください。それでは、行ってらっしゃい。
こんな想いには蓋をすると決めた。
勇気を持って俺がこの想いを打ち明けて、あの人に届くまで、後どのくらいの時間が掛かるのだろうか、どれほど寄り道を重ねるのだろうか。今目の前に居るというのに、それが叶わないなんてどれほど俺は弱い人間なのか·····。
この人とはニコニコ時代に出会ったっきりずっと仲良くさせてもらってる。名前は牛沢、何となしに絡んでいたこの気持ちが変わったのはいつだったっけ。そんな過去に想いを馳せていれば目の前の背の低い男_牛沢に顔を覗き込まれた。
「キヨ?平気か?」
「ッ、うん、平気、ごめんごめん。」
「すっげぇ明後日の方向見てたけど。」
「ぇ、あ、、?そんなに??」
「·····やっぱお前変だな。どうした??」
そう言って俺の額に手を付けてくる。思わず肩を跳ねさせては一歩後退った。牛沢はそんな俺の姿を見て申し訳無さそうに眉を下げる。
「悪い悪い、お前ってプライベートゾーンだけは広いもんな。」
何となく聞こえた余計な一言は置いておいて、あまりにも悲痛そうな顔をする牛沢を見ていられなくて顔を逸らした。
別に、うっしーなら触れられてもいいし·····、そんな音は言葉にはならなかった。
うっしーの恋を邪魔しないように俺は身を引くべきなんだとちゃんと自覚している。うっしーみたいな素敵な人は綺麗なまま育つべき人材だと言うことももちろん重々承知である。だから俺はこの薄暗い気持ちに蓋をして生きると決めたのに。目の前の男はそんな俺の戸惑いに一切気付くことなく俺に触れて、俺に笑いかけて、俺を幸せにするのだ。あんなに綺麗事を並べたけれど、多分無理だ·····。いつかはこの想いが口を突いて出て来てしまう事だろう。
いつかの交差点でうっしーを見つけた事がある。隣に知らない女性を連れて。俺は思わず息を止めた。うっしーが俺の方を見てにこやかに手を振る。隣の女性が不思議そうにうっしーに話し掛けて、うっしーは幸せそうな顔でその女性に説明をした。その後軽く会釈される。俺は時間が止まったように動けなくて辛うじて女性への会釈はできた。音響式信号機の音が始まったことにより青になったのだと脳に届く。けれど、一向にその場から足が離れない。動けない。女性の笑い声が俺の耳に重く酷く響く。うっしーのあんな顔、俺に向けた事ないくせに、俺をあんな目で見た事ないのに·····!あぁダメだ、これ以上俺の心にうっしーが溢れてしまったら···、駄目なんだ。俺はうっしーを見守るって決めたはずなのに。それに、俺も息が出来なくなる。だから溢れそうなこの気持ちに、また蓋をした。
どうやって家に戻ったのか記憶はないがベッドに寝転び何もやる気が起きない午後を過ごしていた。もし、うっしーが今と違う顔で、もっと違った声をしていたのなら、俺はこんな想いを抱かずに苦しまずに生きれたのだろうか?そこまで考えて俺は首を振った。俺の事だ、どうせどんなうっしーでも惹かれて居た。どんな出会い方でもうっしーに惹かれる、そういうものだって俺は思ってた。
普段の仕草から分かるくらい、俺にはうっしーの仕草が焼き付いている。まるでうっしーを見ているほどに。どれだけうっしーの事見てんだって自嘲気味に笑ったが好きなのだからしょうがない。うっしーの目線を辿ったりして、見る世界をもお揃いにしたりもした。でも、最近はあの女性の話なのか胸が痛む言葉しか出てこない。
「俺、すげぇいい恋してんだよね、」
「あの人、超いい人でさ?」
「いつかキヨもあの人に会って欲しいわ。あぁでも──」
─── お前に取られると困るな。
俺の中の何かが壊れる音がした。それほどにまで愛を向けてる相手は誰?なんで俺のことを見てくれないのだろう、無理矢理にでも此方を向かせるべきなのか??うっしーには気付かれないように、あの女性を恨んだ。
恋愛は早い者勝ちではない、そんな言葉をどこかで聞いた。多少ズルをしてうっしーが手に入るのならば、俺はきっと手段を選ばない。どんな手を使ってでもうっしーを手に入れに行くことだろう。でも、そんな汚い俺がうっしーにバレてしまえば絶縁案件である。バレないように、零れ出さないように、俺はまた蓋をした。
うっしーは俺に言った。
「俺、お前のこと好きだよ。」
俺はどれほど嬉しくて歓喜に満ち溢れただろう、けれどその後に続けた言葉は俺を落とすのに十分だった。
「そんな俺が大好きな親友として聞いて欲しいことがある。」
親友、所詮はその程度だったのだ。俺が勝手に期待して、勝手に落胆して、こんな俺に付き纏われるうっしーはどれほど不憫なことか。
「俺の結婚式、来てくんない?」
終わりの合図。あぁ、クソ。俺の恋は報われることなく終わるんだ。でも、でも。まだ終わってはいない、最後に、一つだけ___。
「うっ、し·····、」
「···なぁに?」
「俺に、触れて·····、」
うっしーは目を丸めたあとそうっと手を伸ばして俺の頬に触れた。俺はその手に擦り寄って指先に口付けを落として、
「俺を·····、抱いてほしい。」
はっ、とうっしーが息を飲んだ。俺は固まるうっしーの顔に唇をそっと近付けて、音を立ててキスをした。啄むような、軽いキス。そのまま額をくっ付けて、うっしーの手を両手で包んで俺の何もない胸に運ぶ。
「あの人より胸はないから満足しないかも知れないけど、俺は最後にうっしーに抱かれたい。ずっとそう思ってた。こんな俺を気持ち悪いって言ってもいいよ、実際そうだから。でも、お願い。うっしーの大好きな親友はうっしーを思い浮かべて一人でシて、汚い恋心を抱いて相手の女性に嫉妬して、うっしーが好き、なんて戯言のように言いながらうっしーに組み敷かれる想像をしてる。そんな哀れで汚い黒猫に···、報いが欲しい。」
そこまで言った時、そうっと目を持ち上げてうっしーの瞳を見た。そこにあったのは軽蔑でも、侮辱でも、戸惑いでもなくて__、
「可愛いね」
___欲に飢えた獣の瞳だった。
朝目が覚めた時、隣にはもう温もりはなかった。シーツに触れてもすっかり冷えていて時間が経った事を知らされる。よたよたと歩きながらリビングへ行ってもうっしーの姿は無かった。その代わり置き手紙がひとつ。
「 昨夜は無理させてごめん、ちゃんと起きれた?俺はもう帰ります。結婚式の返事、また聞かせろよ。まぁ、拒否権とか無いけどな。 」
うっしーらしい手紙に軽く笑うと同時に涙が溢れた。俺の恋は終わったのだ。うっしーに抱かれても結婚式は取り辞めにはならない、そりゃあそうなのだ。分かりきった未来が段々と近付いている事に絶望する間もなく崩れ落ち、うっしーの手紙を握り締めて泣いた。年甲斐もなく、声を上げて。何も変わらぬ未来を呪うように泣いた。
「結婚おめでとう」
そんな言葉が飛び交うこの教会で、めでたく牛沢は結ばれた。俺も祝いの言葉を言わないといけないのに、遠くで眺めてるだけで言葉にはしなかった。うっしーはきっと、抱かれた後に気まづくなってるとでも思っていることだろう。それならそれで別にいい、気にはしない。むしろ都合がいい程だ。結婚式も終わって、あとは皆自由に談笑している。花嫁は花嫁の友達と話して笑いあってるらしい。俺はうっしーにゆっくりと近付くとうっしーの腕を掴んで協会の出口に走った。
背の低い白と背の高い黒が砂浜に並んで立っている。
「キヨ、どうしたんだよ」
「うっしー、何も言わないで」
直ぐに、返してあげるから。言葉にはせずそううっしーに言ってから、俺はうっしーにキスをした。あの頃のような啄むようなキス。うっしーの薬指から結婚指輪を引き抜いて、ポケットに仕舞う。そのまま指を絡めてその手を包むようにして片手を添えた。
「き···、よ·····?」
「·····、幸せ?」
顔を歪めてうっしーにそう聞いた。うっしーはしばらく俺の顔を眺めてから、
「幸せだよ。」
にっこりと笑ってそれはそれは幸せそうにそう言った。その言葉を聞いてからそっと手を離す。俺は目を閉じてそうだよね、なんて呟いた。
「キヨ」
ふと、そう呼ばれて目を開ける。そこは砂浜でもなくずっと居た教会だった。
「なんで泣いてんだよ。」
笑いながらそう言ううっしーのお陰で、ようやく自分が泣いてたことに気が付いた。
「···嬉しくて、」
俺は息で笑いながらそう言って涙を拭った。
「マジ?あんがと」
「·····、幸せ?」
うっしーは目を丸めた。でも、ゆっくりと笑みを浮かべて、
「幸せだよ。」
そう言った。
俺はもう終わりだって目を閉じた。何処か満足そうに息を吐いてから目を開けて、
「おめでとう!」
あけいろの空の下、精一杯の笑顔でうっしーを祝った。
うっしーの恋の終わりを願う本当の俺に、今は硝子の蓋を閉めて。
了