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ふ、と意識が浮上する。何度か瞬きをして、焦点を恋人の寝顔に合わせた。安らかな寝息を立てて眠るシャークんの姿を見て、無意識に唇の端が緩まる。
もう桜も満開を迎える頃だというのに、今日は酷く冷え込んでいる。微かに肌寒さを感じて、少し逡巡した末にゆっくりと彼の胸元に収まる。線の細い体に腕を回せば、じんわりと体温が共有されていくのを感じた。
まだ微かに残る眠気が思考を緩慢にする。さらなる暖かさを求めて、足も絡ませた。ダブルベッドの上で彼とぴったり密着すれば、幸福感に包まれるのを感じる。
たいてい先に起きるのはスマイルで、けれど平日は仕事の関係でシャークんがまだ目を覚さない間に家を出てしまうことも多いから、こうして彼が起きるのを待っていられる休日の朝が好きだった。サイドテーブルに置かれた時計に目をやると、時刻は8時を少し回った頃。まだ当分起きないな、と思う。
そういえば有給を消化しないといけない、とぼんやり考える。久しぶりにまとまった休みが取れる。2人で旅行に行こう、と言ったら了承してくれるだろうか。あるいはモノパスで行くのもいい。彼と一緒に過ごせるならなんだっていいのだけれど。春先に行くならどこが良いだろう。まだ雪の残るところに行ったって、無難に桜を見に行ったっていい。
ともかく、まだ何も決まってはいないが思い立ったが吉日、年度が切り替わるまでにさほど時間もないから、今日のうちに予定を練り始めようと寝返りを打ってスマホに手を伸ばす。けれどギリギリ指先が届かなくて、一度シャークんの腕を退かそうとした。
「どこいくの」
耳元で響いた低音に、びくりと肩を震わせる。どうやら目を覚ましたらしい。まだ全然起きないと思ったのに。
「え、いや、スマホ取るだけ……」
「……ん」
普段よりももっと低く、少し不機嫌そうな声色。そんなところにもきゅんとしてしまう自分がいる。スマホを手にして、すぐにシャークんの腕に戻った。
「……ねむい」
「寝てていいよ、まだ8時」
「はやいぃ……」
むにゃむにゃと寝言のようにごねるシャークんがかわいくて、ふわりと笑う。その首元に腕を回して頭を撫でる。
「すまいる」
「ん?」
「……んー」
ぐりぐり、と肩に顔を押し付けられ、髪の毛が当たって少しくすぐったい。
「……スマホ見んなよ。おれを構えよ」
「えぇ……」
「今週スマイル不足なんだよ」
「なんだそれ」
笑いながら、仕方なくスマホを置く。
「月末有給取ろうと思ってるから旅行行かない?」
「え」
勢いよく顔を上げるのがおもしろい。相変わらず目元には隈があるが、ぱちりと見開かれた翡翠の瞳を見るにどうやら眠気は飛んでいったらしい。
「2人で?」
「あー、ふたりでもモノパスでもどっちでも。どっちがい」
「ふたり」
「はいはい」
即答するところもかわいくて、我ながら甘いなぁと思ってしまう。けれどなんというか、飼い主にくっついてくるわんこみたいな気を感じてどうしてもかわいがりたくなってしまうのだ。
「待って、マジで嬉しい。今日予定立てよ」
がばりと上半身を起こすシャークんにスマイルも引っ張られる。腕相撲で負けたときも思ったが、その細い体のどこにそんな馬鹿力があるのか。
「もうちょいベッドいようよ……」
「せっかく早起きしたんだからもったいない、朝飯作ってくる」
「……ん、」
体温が離れて、寂しいと思ってしまった自分がいる。こういうとき素直に、もう少し抱き合っていたい、といえたらどんなにいいことか。
いまさら追いかけるわけにもいかないのでベッドにくるまったまましばらくXを見たり春の名所を調べたりしていれば、キッチンからいい匂いが漂ってきた。そろそろ起きなければいけない。のそりと起き上がって顔を洗いに行く。
「おはよ。もうすぐできるよ」
「おはよ……コーヒーでいいよね」
「うん」
色違いのコップを取り出して、コーヒーを淹れる。目玉焼きとベーコンとトースト。朝はパン派の2人の朝食はイングリッシュブレックファストが大抵だった。と言ってもスマイルは最近めっぽう忙しく、栄養ゼリーなどに頼ってしまっているが。
「いただきます」
シャークんの目玉焼きには醤油がかかっていて、スマイルのものはそのままだった。料理は彼の担当だが、恋人同士であるということを抜きにしても10年来の付き合いで食に関する好き嫌いは完全に把握してくれている。
「おいひい」
「よかった」
食パンを頬張りながら言うと、微笑むシャークん。
「とりあえず25-27あたりでどう?」
「おっけ。楽しみー、まさかスマイルから提案してくれるとは思わなかったわ」
「有給取れって言われてどうしようか考えてた」
「あーね。何日くらい?」
「たぶん7、8日くらいあると思う」
「マジ?めっちゃ遊べんじゃん」
少年のようにはしゃぐ姿は学生時代から変わらない、と思う。うん、と返し、切り分けた目玉焼きを口に運んだ。
「……シャークんとの朝ご飯、久々な気するわ」
「ん?確かに……1週間ぶりか」
「なんか、いいね、……幸せだ」
ぽろり、そんな言葉が口からこぼれた。この数日撮影以外で、ふたりきりでゆっくり過ごした時間は一体何時間あっただろう。何食シャークんと同じものを食べられただろう。数えるのに両手を使うまでに及ぶだろうか。
新入社員、昇進、異動。目まぐるしく周囲が移り変わるこの季節に、まだ慣れることができない。来る者に手を差し伸べることも去る者の腕を掴んで引き留めることも苦手だから、自分から離れていく背中を見つめていることしかできない。
いつか自分にも大きな転機が来るかもしれない。それが嬉しいことか否かはわからかいけれど。そしてシャークんにも同様で、そのとき彼との関係も変わらずにいられるだろうか。
「あ」
「……え、?」
ふと。顔をあげると、スマイルの皿に最後に残った一切れのベーコンを差し出すシャークんがいた。
「あーんして」
困惑しながら口を小さく開くと、それを押し込まれる。流されるがまま咀嚼したのち嚥下すると、コーヒーを飲み干し立ち上がるシャークん。
「歯磨きするぞ」
「……はぁ」
目的はよくわからないが、別にいつも通りの休日のルーティンではあるのでその背に続いて洗面所へ向かう。
隣り合って歯を磨いて、リビングに戻って。テレビでもつけようかとソファに腰掛けようとしたところを、腕を引かれて目を見開いた。
「え、しゃーく」
名前を呼び終わるのが早いか否か、勢いのままベッドにダイブする。
「な、なに……っ」
かと思えばぎゅう、とシャークんに抱きしめられて。突飛な行動の真意をはかりかね、けれどその体温に安心する自分もいて、おずおずと腕を彼の背に回す。
「……大好きだよ」
「へ、っ」
耳元で、大好きな低音が囁く。びくりとスマイルの肩が震える。頬が熱を持つのが自分でもわかった。
「大好き、スマイル、……愛してるよ」
「な、ぇ、」
「今週全然言えなかったからさ、一週間分言わせて?」
あぁもう、ずるい。あっけらかんと笑いながら時々スマイルの心を見透かしてくるから、隠しものをするように固く握りしめた拳を優しく解いてくれるから、ドキドキしてしまう。
「も、もう十分、」
「足りない、……スマイル、」
瞬きをする間に覆い被さられていた。顔の両隣に手をつかれて、逃げ場がない。
「、ん……っ」
何かを言いかけて小さく開かれた薄い唇に口付けが落とされる。シャークんは目を瞑っていて、まつ毛長いなぁ、なんてどうでもいいことを考えている間に舌を絡められていた。
「ぁ……ふ、」
ちゅく、ちゅく、と水音が響く。もうくだらないことを考えている暇はなくて、口内をまさぐられる感覚に身を委ねる。
「っ、……ん、んぅ……」
長い、長すぎる。キスに不慣れなほど初心なわけではないけれど、それでも呼吸が続かないくらいには長い口付けに目を細めたとき、だった。
「ッ……!」
どくん、と心臓が高鳴る。狭まった視界で、ゆっくりとその翡翠の瞳が見開かれたのを見た。伏目がちの彼が醸し出す色気に、心拍がうるさいほどに逸る。
「ぷは、っ、は、はぁ……っ、」
ようやく口を離されて、滲んだ視界の中、彼の唇と繋がった糸が切れるのが見えた。なんだかそれが酷く寂しく思えて、乱れた呼吸もそのままに今度はスマイルから唇を重ねる。
「、!……っ、」
「ん、ふ……ッ、ん、」
シャークんはキスが上手い。だからこんな拙いやり方じゃ満足させられない。いつもならそんな思考にはならないはずのに、今日はなんだか持ち前のポジティブシンキングがうまく働いてくれない。
「ぅ、……ん、っ」
くやしい。一緒にいて、も、抱き締めて、も、大好きも、愛してるもうまくいえないこと。シャークんにたくさんもらっているばかりで、スマイルからは相応のものすらも返せないこと。やけになってシャークんの舌をぺろ、と舌先で舐める。
「スマイル」
顔を離される。ほら、おまえがうまくできないから。頭の中で、ひとりの自分がそう非難してくる。もう彼の顔さえ認識できないほど視界は滲んでいる。
「……ごめ、」
うまくできなくてごめん。シャークんにしてもらってばかりでごめん。全然一緒にいられなくてごめん。素直になれなくてごめん。そのどれも言葉にはならず、腕で顔を隠そうとした。
「だめ、隠さないで」
けれどその腕を掴まれて、シーツに縫い付けられて。
「寂しかったな。いっぱい頑張ったな」
ぼろぼろと涙が溢れて止まらない。子供じゃあるまいし、と思う反面、うん、がんばったんだよ、と言って縋ってしまいたい心根もあって、せめぎあう。
「俺の前で泣いてくれてありがとう」
髪を梳かすように優しく頭を撫でられ、嗚咽がこぼれた。
「しゃぁく、すき、」
「俺も好きだよ、スマイル」
「すき、すき……」
は、は、と浅い呼吸を繰り返して、シャークんの服の裾を弱々しい力で掴む。
「いかないで、ごめん、どこにもいかないで」
「……行かないよ。ずーっとそばにいるよ」
「きらわないで……」
「嫌いになったことなんて一度もない」
指の腹で涙を拭われ、おそるおそる顔をあげれば柔らかく微笑む彼の姿がある。
「不安にさせてごめん。今日一日はお互いのこと充電する日にしよ」
「……なにそれ、」
ふ、と笑った拍子にまた目尻から雫が伝った。
「いっぱいぎゅーする日〜」
「……かわいい」
おどけるようにそう言うシャークんに、普段は心の中に留めている言葉もこぼれてしまう。
「自己紹介?」
瞬間、すっとその双眸を細め、顎クイをしながらそう言われてスマイルの思考回路が停止する。
「さっき俺の舌舐めてきたよね」
「ぇ、あ……う、ん」
「誘ってる?」
「え……、んん……ッ」
ぎゅーどころかキスの日じゃん、とか思いながらすでに三度目のキスに目を回していると、両耳を塞がれて。
「は、っん、ッ……っ、」
ぐちゅ、くちゅ、ちゅぷ。脳にいやに大きく水音が響いて、くらくらと目眩がしそうな心地になる。シャークんの舌が触れた部分が悉くあつくて、きもちいい。
「ぁん、ん……ぅ」
貪られるようなキスだった。スマイルもシャークんの首に腕を回してそれを受け入れた。
「っ……ふ、もっと欲しいって顔」
肩で息をするスマイルの下唇を親指で優しく撫ぜると、それだけでぴくりと震えるのが愛しくて、シャークんは唇の端を緩める。
「でも今日はぎゅーの日だから」
「、じゃ、なんでこんな、きす……」
「スマイルがかわいかったからね」
首に回された腕はそのままに、ベッドに横たわりふたりで毛布を被る。
「今のキス、お気に召した?」
「……っ」
紅潮した頬が、答え。それでもシャークんは口ごもるスマイルの言葉を待った。
「……ぎゅーの日じゃないときに、またしてほしい、」
あぁ、本当に、
「……いくらでも」
どうしようもなく愛しくて、困ったな。