コメント
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うわー、マジ泣けます!こんな感動的な小説をありがとうございます✨あと、こんな本欲しいですwまじて、あったら泣くかもしれませんw
うぅ(泣)
本だったんだ...!?こんなにも切なくて感動する本...そりゃあ選ばれてもおかしくないわ...え、欲しいんですけど(?)
パタッと音を立てて本を閉じた。とてもいいお話だった。
これは本当にあった戦争の時代のことを、作者さんは上手く幸せに感じるように仕上げられている。
戦争なんて、幸せじゃなかっただろうけど。
お話の主人公、『ドズル』はもの凄く優しい。
このお話の中で、一度も怒った描写は書かれていない。
それと、1日を1話で区切ってあって、毎話毎話絶対に、「満面の笑み」という言葉が出てくる。
このお話のお陰で、読書感想文が進みそうだ。
「ご飯よ〜。」
母さんが僕を呼んだ。晩ご飯ができたようだ。
僕はすぐに返事をして、部屋を出た。
「お部屋で何してたの?」
温かいシチューとパンを頬張りながら母さんは問う。
「戦争の本読んでた。」
「ふぅん、どんなの?」
母さんに分かりやすいように、あの本について説明する。
「へぇ、面白そうね。」
「今度読んでみる?」
分かりやすく目を輝かせた母さん。僕の説明で読みたくなったんだろう。
『本当に、凄い人でした。』
たまたま付いていたテレビの音声が耳を通った。
そのテレビの番組のテロップに書いてある内容に「えっ、」と声をもらす。
【約80年前、戦争はどんなものだったのか。】
【[人気上昇中]文庫[本物の笑顔を求めて]について】
【「戦争というものの怖さを分からせられる。」との声も。】
僕は母さんと、丁度この本の話をしていた。
僕は晩ご飯そっちのけで、テレビの画面に食らいついた。
『実はですね…この本に出てくる『ドズル』という御方に助けられたんです。』
テレビの画面に映るおじいさんは、ゆっくり、ゆっくりと話す。
『この本は、紛れもなくノンフィクションでしょう。』
多分、このおじいさんは本で出てきた、抱えられた男の子だ。
『私は当時、とても幼かった…。彼は、不安でいっぱいの私に言ったんです。「大丈夫。絶対に、僕がこの世界を平和にしてみせるからね。」と…。』
このセリフは、本の中で本当に出てくるセリフだ。
『とても、暖かかった。安心しました。私を防空壕へ誘導したら、すぐ姿を消してしまいましたけれど。』
この「本物の笑顔を求めて」は、実際に金庫から原稿が出てきて、それを文庫化したものらしい。
だからこの本には、あとがきはないし『ドズル』の個人情報も一切載っていない。
原稿は、国宝化されるほど大事に保管されているそう。
テレビの話が終わった。僕は食卓に向き直る。
『ドズル』が、どんな想いで原稿を書いていたのかは全く分からない。
でも、戦争は人々を揺るがす存在であることは痛いほど分かる。
夏休みが明け、たくさんの日々を過ごしていくうちに、いつの間にか涼しい季節になっていた。
今は、学校で朝会が行われている。
僕はあの本の読書感想文で、表彰されるそうだ。どんな賞かは聞かされていない。
僕の番が来て、校長先生の前に姿勢正しく立つ。
なんと、最優秀賞を獲得していた。
この感想文は、市を出て、県、国まで行ったそうだ。
たくさんの大人たちが戦争について、改めて考えさせられたらしい。
僕は、たくさんの人に戦争というものを分かってくれて嬉しかった。
僕は満面の笑みでお礼をした。