森の中にいる。
目下にはくぼみが広がっている。
その広がったくぼみの中にはたっぷりとシチューが入っていた。
私がここにいるのは、ここに来たのはこれを汲みに来る為だ。くぼみの中へ歩みを勧めシチューを汲もうとした時カサ、と音がした。音の先に目をやると鹿だ。鹿が黒い目を大きく見開いてこちらを見ている。
そして、こちらへ走り出した。目の前はシチューの池だが仕方がない、と池の中へ歩を進めた。髪先を喰われてしまったが、怪我はなくシチューもぬるかった為、火傷をすることもなくシチューの池から出ることが出来た。
くぼみからも這い上がり、家路に着く。するとまた後ろから音がするのだ。振り返るとさっきの鹿。
勿論走った。走って、走って足も縺れながら。
気づくと目の前の景色が、森から見慣れた天井に変わっていた。目が開いている。
鹿がいないことに安心し、大きく息をした。
心臓が早鐘を打っている事に気付いたのもこの時だ。
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