omr side
音楽番組出演の日、ミセス3人で他の出演者さんの楽屋に挨拶周りをしていた。
とある人気男性アイドルグループへの挨拶。ただただ「本日はよろしくお願いします」とだけ言って立ち去るつもりが、涼ちゃんがアイドルグループメンバーのある2人に気に入られ囲まれてしまった。
僕と若井は涼ちゃんの方が一段落するまで少し離れたところで他メンバーの数人と話していた。
?「ほんとにミセスさん凄いですよね…!尊敬でしかないです!!」
「いえいえ全然!皆さんもほんといつも凄いなって!」
?「全然そんな事ないですよ!」
くだらない会話。
正直そんな世辞と胡麻すりばっかの話よりも涼ちゃんの方が気になる。
申し訳ないけど、僕は世間が思ってるよりも性格が悪いのだ。
?「そういえば…なんかうちのメンバーが藤澤さんのこと持って行っちゃっててすいません…」
素直な申し訳なさからの謝罪も嫌味に聞こえてくる。自分が苛立ってるのがよく感じとれた。
「あっいや、全然!」
メディアに見せるあの笑顔で首を振る。
?「なんかあいつら藤澤さんに会うの異様に楽しみにしてて、こちらからもご挨拶に伺おうかなって思ってたんです!」
「あっそうなんですね、それはそれは…」
─”異様に会いたがってた”か…
“嫌な感じ”がするなと思いながら、涼ちゃんの方に目を向ける。少し奥で笑顔でアイドルメンバーの2人と話していた。
fjsw「え〜!すご〜い!そうなんですね!」
?「そうそう〜!!それでね〜…」
fjsw「うんうん!」
?「涼架くんお話いっぱい聞いてくれるから楽しい〜〜!」
fjsw「え〜嬉しい!ありがとうございます!”?”さん方のお話だったらいくらでも聞かせて頂きますよ!」
彼はいつでも誰にでも、さり気なに好意を感じさせる褒めの言葉がとても上手い。
?「え〜!なにそれ嬉しい〜!」
─楽しそうにしてんのうざいなぁ…
こっちのこと気にする感じすらないね。
離れないって言ってくれたのにな。
大好きって言ってくれたのにな。
知らないの?大好きを安売りしちゃいけないって。特別な言葉だって。君のその行動は人を傷付けるんだって。
「…」
wki「元貴、顔に出しすぎだよ」
若井が顔を寄せて俺にだけ聴こえる声量でそう言った。
若井も涼ちゃんのことをよく気にしている。だから何かを感じとったのだろう。
顔に出てたか…
「…うん、ごめん」
素直に謝る。
?「えっと…じゃあそろそろ挨拶次行きます、?」
こっち側に居たメンバーの1人が雰囲気を読み取ってくれたらしい。申し訳無さとありがたさが残る。
最後の最後はしっかり切り替え笑顔を作り、
「…そうしますね!長々とすいません…ありがとうございました!」
wki「ありがとうございましたー」
そう言って2人に頭を下げた後、涼ちゃんの方を向いて少し大きい声で声をかける。
「涼ちゃーん帰るよー」
俺がそう呼びかけると涼ちゃんはいつも通りすぐに振り返ってぱっと笑う。
fjsw「あっはーい!」
彼の笑顔を見た瞬間、今までの苛立ちがあほらしい魔法のように少しづつ消えていった。
?「あ、ちょっと待って涼架くん!」
あちら側に居たアイドルメンバーの1人が涼ちゃんの腕を掴む。
その瞬間、腹の底から怒りが込み上げるように戻ってきた。
勝手に視点が涼ちゃんを掴む手にアップされる。
─うざい
─触んな
─俺のだぞ
?「せっかくだし連絡先交換しよーよ!」
─は?
「涼ちゃ」
止めようとした。
俺が呼びかけたのに、君はあいつの方に振り返って笑顔を浮かべた。
fjsw「いいですよ〜!」
そう涼ちゃんが快く承諾した瞬間、目尻が熱くなった。あの日と同じ。
風に靡く君が遠のいてしまいそうだという不安感に襲われた日と同じ思いがふつふつの湧き上がってきた。
でもどこか、なんとなく、あの日の感情よりもどす黒くて重たくて泥のような重量感があった。
分かってる。そんなこと。
沢山の人と関わる仕事で、そうやって交友を広めていくのはとても好ましくて、 外向的な彼にとってなんの抵抗も無く出来るってことも。
どこまで行っても1メンバーである僕がそこに違和感を覚えるのはおかしいってことも。
分かってる。嫌という程僕がいちばん分かってる。意気地無しで、ヘタレで、自分から解決しようとしない。
だって、 こんなに他人を狂おしいほど愛したことなんて、離したくないって思ったことなんて、拒絶されて離れていってしまうのが酷く恐ろしく感じた事なんて無かったんだから。初めてなんだ。
せめてもマネージャーを通して欲しかったな、
目の前ではあいつとスマホを見せ合い、嬉しそうに笑う涼ちゃんがいた。
wki「元貴…落ち着こ」
我慢と感情の整理が追いつかず言葉を探す余裕なんてなかったため、黙って僕の肩に置かれようとした若井の手を振り払った。
視界の端で若井がびくっと震え、固まったのが見えた。
ごめん、若井。ちゃんと後で謝るから。
今はもう少し、時間が欲しい。
━━━━━━━━━━
\4話後記/
今回よりも次回の方がお楽しみな気がします…!次回はちょっと短いけど…大森さんが吹っ切れ始めますので。
やっと本編らしい本編が進んで参りました。
前置きあっての本編ということで、心情の変化がめちゃくちゃ難しかったです。
自分だとどうしても100%客観的にこの作品を見れないので、皆様の評価を大切に更新していこうと思いました。
いつもありがとうございます。
今回もハートやコメント、お待ちしております🙌🏻💗
♡ 1000 = next story move
コメント
2件
こんにちは、rちゃんに対して感情劇重なm君大好きです❤️💛 また更新楽しみにしています💕