テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
本垢で公開するものですが、尻叩きにこっちでちょっと公開します🫵
(コメ欄に設定等色々書いてるので先にそっちを読んだ方が理解しやすいです)
日が沈みだす黄昏時。
人の世から身を隠すよう滝の裏の洞窟に身を重ねる一匹の狼と一匹の山羊。滝の音に溶け込んだ二匹の声が外に漏れることは終ぞ無かった。
*
風が吹き荒れ、雨が猛り狂う。
一瞬でも気を抜けば飛ばされそうな悪天候。やっとの思いで入り込んだ滝裏の洞窟には不幸にも先人がジッとこちらを睨んでいる。もしも夜目が効かず、後ろの御仁に気づかなければどれだけ幸せだったろうか。
「やっぱ全滅か…」
鈍く光る双眸に知らぬ振りをしながら、懐に入れていた火口箱を取り出すが、火口どころか火打石まで濡れている。これでは暫く震えているしかないだろう。
「なあ、」
何分、何十分、何時間が経っただろうか。嵐が弱まる気配は無く、雲が重なり、更に見えずらくなった洞窟の奥。無駄な足掻きと分かりつつも、できるだけ視線に入れないようにしていた双眸から声がした。声一つで体全体が震え上がり、全身に力が入る。向こうが肉食動物で、自身が草食動物である限り、俺の選択肢は嵐の中飛び込み死ぬか食われて死ぬかの二択だ。
法というものが存在しているが、この状況でどのくらい通用するのか計り知れない。
せめて死に方は選びたいと賽の河原で石を積み、震えた声で「…ハイ」と返した。
「寒い?」
「は?」
予想外すぎた返しだった。てっきり「どこの肉が一番肉付きがいい」とか「醤油か塩のどちらがいい」とか聞かれるのかと全身の毛が逆立っていたのに。
「え、寒い……です…」
「じゃあこれ使い。奥に貯めてたやつだから濡れてへんよ」
感謝を零しながら受け取ったのは自身のとは違い、カラカラに乾いた火打石と火口、そして蝋燭と蝋燭台だった。ご丁寧に掛け布まで手渡された。
「…俺はお前食うつもりはないから安心してな。」
話しかけながら一歩、また一歩狼が近づいてくる。とても怖い。助けて欲しい。
ついには壁に背が当たる程に追い詰められてしまった。これ本当に食べるつもりではないんですか。
「食わんから、知ってたらこの山羊の一族、どこにおるか教えてほしい。」
懐に手を入れ、小刀か何かを探り当てたかと思ったら出てきたのは人相書きだった。一族とは言っているが、実際描かれているのは五人といない。
しかし中央に大きく描かれた、その妙に癪に障る顔を知っている。金持ちで常に威張っていて、草食動物の癖に狩りが好きな地主だ。最新の武器を集め、月に一度や二度、森に入っていくのを目にしたことがある。狩られた獲物が放置されていたのを見てしまった時から自身の中の評価が地の底なのは言うまでもないだろう。自明だが、村一番の嫌われ者だ。
「あぁ、うん。知ってる。俺の村の地主。村ついたら嫌でも目に付くからすぐ分かると思う」
狼はそうかと短く相槌をうち、目を伏せ奥に引っ込んでいった。いつとはなしに嵐は過ぎ去っていた。
コメント
1件
狼×山羊の青桃です。室町〜江戸あたりを想像して頂ければ読みやすいかと!!(多分)(日本舞台ではないですが日本が元なので…👉👈) 狼と山羊を使いたかっただけなので(一応調べてはいるけど)おかしいところは見逃してください🥺