少々レイプ・モブ春描写有り
バッドエンド編とは全くストーリーは異なります。
春千夜と別れた。いや、ちゃんとした別れ文を言って別れた訳ではないが、ほぼ類似している言葉は言った。あの時言った言葉はちゃんとした本心だ。しかし、帰って少し頭を冷静に整理すると少しばかりの後悔。だが、俺は間違っていなかったと勝手に上書きした。彼奴とは今は一切話したり連絡をしてない。そもそもあの時帰ってすぐに連絡先を消して、彼奴には悪いが合鍵も捨てた。
「兄貴〜…って、うわっ、香水くっさ。」
「今日の女失敗したわー。マジ最悪。」
今は彼奴の事を忘れるかのように女遊びをしていた。しかし、それは毎回何かと当てはまらなくて不完全燃焼。何かのモヤを残しながら俺はいつも家に帰る。今日も同じ様に女と遊んだ。だが、今回は香水の匂いがキツく、話もつまらない。毎日が退屈な日々だった。
俺は匂いを洗い流そうと服を脱いで風呂に入った。温かいお湯にふぅと息を吐きながら浸かる。風呂に浸かる理由は疲れを取るため。しかし、ここ最近はそうではなかった。風呂に入る度に彼奴の事を脳が勝手に思い出してしまう。そう、元恋人の三途春千夜だ。何故が毎回「今どうしてるかな。」「あの時、他に良い言い方とかあったかな。」などと頭は春千夜の事で一杯になってしまう。
「あー考えんなよー…」
濡れた髪をワシャワシャと乱して、俺は風呂から出た。風呂から出ると、これも日課のように後悔が来る。もっとこうしてれば、と思い心がズキッと痛む。何かの病気だろうか?
俺はまたモヤを残しながらリビングに行き、先にソファーに座っている竜胆の隣にお構いなしに座り、携帯を弄り始めた。竜胆は何も言ってこないから別に良いだろう。
「ねー、見て兄貴、これオモロくね?」
「んー?
うわ、なにそれ」
竜胆が携帯の画面を見せてきて、それを覗くように見る。竜胆の言う通り面白くて少々笑ってしまう。
ヴー、ヴー
竜胆の携帯の画面が変わり、電話の着信音が響く。俺はその画面を見て止まってしまった。何故か。それは通話相手が三途春千夜だからだ。
「久しぶりだな、ここも…。」
鼻が少し赤くなるほどの寒さの中、俺はとある場所にいた。そこは、かつて蘭に告白された場所。まるで昨日の事かのように俺はそこら辺を散歩していた。あれ以来、俺は蘭と関わっていない。連絡先は消していないが、相手は確実に消しているだろう。
「うぅ、さみぃ。」
自分を抱きしめるような形で俺は寒さに身震いした。薄着で来るんじゃなかった。俺はもういいかと思いその場に離れようとする。すると後ろから数人の不良らしき者が現れてきた。
「おいおい、ネズミちゃんがココに何かようかよー」
「…誰だテメェら。」
「可愛らしいネズミちゃんじゃねぇかぁ。ここは俺らのナワバリなんだよ…ってお前確か関卍の副隊長じゃねぇか。」
「まーじかよ。大物がここにいるなんて…随分舐められたもんだなぁ。」
チンピラ野郎はバッドを持ちながらまるで見下しているかのように言ってきた。ほう、やるつもりか。相手は数十人。少々多いが倒せられない数じゃない。俺は目の前にいるムカつく奴を膝蹴りして一人目をまず倒し始めた。それを見て他の奴らは恐れながらも俺に向かって一斉に襲ってきた。視界に入ってきた奴を片っ端から殴り蹴りして倒していく。
「今度俺に挑む時はせいぜい100人は連れてくるんだな。」
俺はそう捨て台詞を言って去ろうとする。すると、後ろからガンッと何か重たいもので殴られ、俺は地面に倒れた。倒し損ねたのか、俺は意識が遠のきながらそう思った。
バシャッ
いきなり冷たい水を被らせてきたため、俺は最悪な目覚めをした。視界がぼやける中、俺は辺りを見渡す。少しずつ視界がはっきりしてくると、そこは何処かの廃墟なのか、人気のなさそうな場所に拉致られていた。しかし、少しだけ見覚えのある場所。
「おー、やっと起きたかよ三途春千夜くーん。」
金髪のダサい男が俺の髪を乱雑に引っ張って無理矢理視点を合わせてきた。そいつは俺の記憶上、最初に倒した相手。俺はそいつの顔にペッと唾をかけてやった。しかし、それは悪夢の始まり。男はそれにブチギレて、加減なんて考えずに俺を壁にぶつけた。
「ゲホッ…お”ェ…」
「随分と余裕じゃねぇかよ、あ”ぁ?
そんなに痛ぶってほしいなら叶えてやるよっ!!」
相手の一人は容赦なく俺の顔を蹴り、一人は武器を持って俺の身体を痛めつけ、一人は煙草を俺の首やら腕やらに火をつけたまま当ててきた。しかし、俺はできるだけ声は出さない。声を出したら彼奴らは興奮材料としてもっと殴ってくるはず。俺は相手の思う壺にはならねぇ。
「おーい、なんか言ってみたらどうよ。
それともなんだ?もう降参ですぅーってか??」
俺を馬鹿にしてくるかのように笑いながら痛めつけてくる。全身が痛い。意識が朦朧としてくると水をまた浴びせられて目を強制的に覚ましてくる。嗚呼、俺は何処で道を間違えたのか。マイキーの一番にはなれないし、蘭の一番にもなれなかった。挙げ句の果てにはこんな弱い奴らにもやられて…。
「おーい、違う事でも考える?
余裕ぶっちゃってよー。」
一人の男が俺の服を脱がしてきた。上半身はシャツを着たまま前だけ開けられ、下は下着のみにされる。財布と携帯をとられて、一人は財布の中身を、もう一人は携帯の中をチェックしていた。携帯を見ていた奴が、お、いい奴発見と言って俺に画面を見せてくる。
「これ、竜胆ってやつ?確かカリスマ兄弟で有名な奴だよなぁ。」
「は…それが、なんだ…よ…」
「余裕ぶってる君にー、チャンスをあげようじゃねぇか。」
「チャン、ス…?」
「そそ、チャンス。
今からコイツに電話してやるからさ、自分で助け求めてみろよ。「竜胆くーん、たすけてぇー」ってよ」
面白いギャグのつもりだったのか笑いながらそう言っており、周りも狂ったツボをお持ちなのかゲラゲラとはしたなく笑っていた。
プルルルル
電話のコール音が鳴る。俺は床に倒れており、地面に顔を押し当てられていた。その横に俺の携帯を置かれ、望みたくもない電話が来るのを待つ。暫くするとコール音がなくなり、その代わり雑音が聞こえる。電話の相手の環境音か何かだろう。
『…なんだよ、用があんなら直ぐn』
「あー、君竜胆くんって奴ー??」
『あ”?テメェ誰だよ。』
「俺が誰だかは置いといてー、今三途春千夜君の事拉致ってんだけどさー、最後の一言を春千夜君に言ってもらおっかなってー」
『は?どういう意味だよ…‼︎』
「はーい、春千夜くーん。
竜胆くんに一言どうぞっ!!」
「……りん、ど……蘭のこと…たの、む…」
俺が言い終わると、盛大な笑いが飛び交った。俺はその笑いなど心底どうでも良く、ただ竜胆に伝える事を伝えて少しだけホッとしていた。男は笑うのを我慢して携帯の電話を切る。息切れするほど笑っていた一人は俺の顎を無理矢理掴み、目線を強制的に合わせてきた。
「蘭ってやつは恋人か何かか??
蘭を頼むって…はー、何度思い出しても腹千切れるくらい笑えるわ。」
「チャンスを水の泡にするなんて…君も相当なおバカさんだねぇ」
馬鹿でもアホでもなんとでも言え。最後に言いたい事も言えたのだ、それだけで俺は良い仕事をした。最後か……
蘭の顔、一回くらい見たかったな。
「あー、悪い兄貴。
嫌なもん見せたよな。」
竜胆はすかさず画面を俺に見せるのをやめた。「嫌なもん」この言葉が俺は少し胸に引っかかった。確かに今の俺にとっては合っている。合っているはずなのに。そう悩んでいると竜胆は少し俺から離れて電話をしようとする。
「竜胆、スピーカーにして。」
「え、でも。」
「良いから。」
多分今後一切、春千夜の声は聞かないと思うとせめて最後くらい声を聞きたい。まあ、聞くだけだ。話はしない。竜胆は渋々俺の元に帰ってきて、通話ボタンを押した。
「…なんだよ、用があんなら直ぐn」
『あー、君竜胆くんって奴ー??』
「あ”?テメェ誰だよ。 」
電話の先からは電話主である春千夜の声ではなく、全く別の赤の他人の声が聞こえた。それに対して威圧的に竜胆は聞き返す。俺はここで嫌な予感を察知した。黙って電話の会話を聞いてると頬に冷や汗を垂らした。
『俺が誰だかは置いといてー、今三途春千夜君の事拉致ってんだけどさー、最後の一言を春千夜君に言ってもらおっかなってー』
「は?どういう意味だよ…‼︎」
『はーい、春千夜くーん。
竜胆くんに一言どうぞっ!!』
『……りん、ど……蘭のこと…たの、む…』
プツッ、プー、プー
俺らの空間に無言が続く。嫌な予感は的中していた。俺は数秒経った後立ち上がり、家を出て行った。
「兄貴!!」
弟の声なんて耳に入れずにただただ探した。場所なんて何処か知らないけれども、思い当たる場所、不良集団が良く溜まる場所などを片っ端から探しに行った。
春千夜なんてどうでも良いと思っていた。だけど、それは俺が表面上に見せていた意志。だけど、それはあくまでも表面上。本当は春千夜の事を未だに好きで好きで愛している。それは前の俺ですら分かっていなかった思い。けれども、今なら分かる。まだ春千夜は俺の一番この世で愛している存在。ごめんね、春千夜。「蘭の事頼む」って、俺の為に言ってくれた言葉なんだろ?最後の言葉考えてたよな、俺なら分かるよ。だって恋人だせ?お前が恥ずかしがり屋なのも、思いを上手く伝えられない生きるのが下手なのも俺知ってるぜ。お前「自分は普通じゃない」って悩んでたの俺知ってるよ。知ってたのに…。だからさ、もっかい会いたいよ。俺、お前に沢山謝って、沢山また愛を伝えたい。今までよりも比にならないくらいに好きって、愛してるって伝えたい。春千夜は今俺の事どう思ってる?早く会って聞きたいよ。
「あとはここぐらいしか…。」
最後の思い当たる場所。そこは俺がかつて春千夜に告白した場所の近くにある倉庫。昔の話をすると、ここは春千夜のお気に入りの場所だった。冷たくて誰も来なさそうな静かな倉庫。ここにいた春千夜の横顔は今でも鮮明に覚えている。場所は暗くて、少なくとも人が来ないような所にポツンと一人だけ立っている。俺が扉を開けた場所から光が漏れ、丁度春千夜に当たった時は本当に時間が止まった感覚に陥った。さらさらでアイボリー色の髪が煌びやかに光り、長い白睫毛の奥にある翡翠色の瞳は少し経った後、視界に俺を映してくれた。あの時が多分春千夜に俺の心を奪われた瞬間だったであろう。
またお前の瞳に俺を映してくれ。
なあ、三途春千夜。
バンッッ
「…は、春千夜!!」
「誰だテメェ!!」
見たくもない光景がそこにはあった。倉庫を開けると男集団…そして、その真ん中にはほぼ裸の痣だらけで誰かの白濁した体液が付いていた。怒りが沸々と込み上げてくる。
「おい、おめぇら春千夜に何したんだよ。」
「あ?テメェには関係ねぇだろ。」
「…おい、コイツってあの六本木のカリスマ兄弟で有名な灰谷蘭じゃねぇか?!」
「んでテメェがここにいんだよ!」
ガンッッ
「ぐはっっ‼︎」
俺はゴミカス野郎達の戯言など聞かずに近くにあったパイプで怒りを混じりながら思い切り振った。相手の後遺症なんて考えずに、ただただ殴って、蹴って、二度と春千夜に傷をつかせない為に。ブスな顔がもっとブスになっていく様は本当に滑稽で、竜胆にも見せてやりたかった。
暫くすると集団の奴らは全員気絶していて、動く気配などしなかった。一人ぐらい殺しちゃったかも。まあ、どうでも良いけど。
「ら…ん……?」
「春千夜…‼︎」
俺は我に帰り、倒れている春千夜の元に向かった。その姿は俺でも可哀想だと思うほど痛々しい。体は痣と傷で一杯で、汗じゃない体液がベタベタと付いており不快でしかなかった。俺は直ぐに自分が着ていた上着を着させて抱き寄せた。呼吸は浅く、俺を掴む手も弱々しい。
「春千夜、大丈夫?
俺の事わかる?」
「ら、ん…なんで、来た、の…?」
いつもの威勢のいい声とは裏腹にか細い声で聞いてくる。目は虚で、今にも閉じそうな瞼。
「俺、春千夜に謝りたくて…前はあんな事言ったけど、まだ春千夜の事が…大好き。
あんな酷い事言ってごめん。助けに来るのも遅くなってごめん…。許してくれなんて言わない…けど、春千夜にちゃんと謝りたかった。」
先程よりも強く抱きしめる。抱きしめた体は前よりも細くて、何かに怯えているのか小刻みに震えていた。先程の集団のリンチが怖かったのか、それとも俺のことが怖いのか。それは俺には分からなかった。もし俺が理由なら…申し訳ない気持ちで押し潰されそうだ。こんなにも大切な人を精神的に傷つけて、俺は恋人失格だ。そう思いながら春千夜を温めるように抱いていると春千夜の方から啜り泣く音が聞こえた。
「は、春千夜…?」
「ほんとに…まだ好き、なの…?俺、あんなに…酷い、事やったのに…好きでいてくれる、の?」
まるで春千夜は自分のせいでこんな事になったのに、蘭は俺の事を…と自分を責めてるような言葉を言ってきた。違うんだよ春千夜。確かに鶴蝶の件についてはもしかしたら春千夜が悪いかもだけど…でも、春千夜なりの事情があったかもしれないのにそれを耳に入れようとしなかった俺が悪いんだよ。ただ一方的に自分の気持ちを春千夜に吐いて、傷つけて、少し気持ちが落ち着いたら春千夜を放置する。幸せにするって言ったのに直ぐに破って。なんなら数年くらい一人にしちゃってたよね。なにもかも俺が悪いのに。なのに、春千夜は自分で「悪人」という荷物を背負ってる。
「あの時事情も知らずに自分の気持ちをぶつけたのは俺が悪いよ。本当にごめんね。
ねぇ、春千夜。」
「…なに?」
「自分の事責めてる?」
「だって…俺がわる、ぃ…」
「…全部が全部春千夜のせいじゃないよ。なんなら大半俺の方が悪い…。一人ぼっちにして、幸せにするって約束破って…ダメダメだよなぁ、俺。」
「そんな事なぃ‼︎俺だってお前の大切な奴…その、殺しちゃって…こんな関係になったのは全部俺が悪いのに 」
春千夜は自分を責め続ける。春千夜の癖は「無理に重い荷を自分に乗せる事」だ。マイキーの為なら、こうなる為ならと思ったら手段なんて選ばないプライドの持ち主。今回のも同じような感じだろう。「蘭が悪いんじゃない、俺がそもそも◯◯だから悪いんだ。」と到底この歳で背負うものじゃない事を抱えてしまう。そんな性格の事を俺は知っている。たくさん知って、見てきたから。
「ねぇ、春千夜。」
「……」
「春千夜は抱え込みすぎだよ…全部一人で抱えないで?
せめて半分だけ、その抱え込んでる事全て頂戴よ。」
「……え?」
「全部俺のせいって言うと春千夜はもっと抱え込むでしょ?ならさ、半分春千夜のせいで半分俺のせい…これじゃだめ? 」
「俺ら“恋人”でしょ?少しは俺に背負わせても良いんだよ。」
ポタッ…ポタッ
春千夜の瞳から透明で綺麗な涙が重力に従って落ちていく。まるで何かに解放されたかのように俺に身を委ねてくる。俺はそれに答えるかのように抱き寄せて、優しく頭を撫でてやった。
「ありが、と……ありがとっ…」
「こっちも有難う、春千夜…」
互いに感謝して、互いに幸せを感じる。今の時間だけ世界で一番幸せなカップルになった気分だ。
後日
「お前がここで告白したのめっちゃ覚えてるわ。」
「蘭ちゃんも覚えてるー。」
春千夜と俺は寒い中二人で手を繋ぎながら、二人が恋人となった場所に来ていた。春千夜は前よりも俺にひっついてきて、甘えてくるようになった。俺からしたら頼られたり、恋人らしく甘えてくれるのは嬉しい限りだ。俺も春千夜に対して挽回するかのように毎日愛を伝えている。
近くの海に行くと寒さが強くなり、春千夜は俺の腕に手を回してきた。
「さみぃ…」
「寒いねー、カイロいる?」
「ん、いる。」
俺がカイロを取り出すと素早く俺から奪う。しかし、離れる気配は一切なく、それに対して俺は可愛さを感じてしまう。海と春千夜は絵になる。春千夜の横顔を見ながらそう思っていた。
あー、やばい。クソほど幸せを感じてる。
「ねぇ、春千夜。」
「ん?」
「新居どうしよっか。」
Happy end
コメント
3件
幸せそうで嬉しい😭💗 ハッピーエンドもバットエンド も好きです~っ!
ぁぁぁ😭😭ほんと幸せそうでよかったぁ……🫶🫶🥲🥲モブはしっかり後処理しときますんでおふたりとも幸せにッッッッッ💥💥💥