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こちらはirxsのnmmn作品(青桃)となります
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ご本人様方とは一切関係ありません
桃さんバースデー作品になります
自分の誕生日に、前に別れた青さんのことを思い出す桃さんのお話
誕生日と言えど、カウントダウンの配信と当日夜の配信を除けば普通の平日と何ら変わりない。
いつも通り事務所に出勤するため、朝から身支度を整える。
オーバーサイズのニットに袖を通し、ピアスとリングを着けた。
それから「あぁ今日の服に合うネックレスあったな」なんて思って、アクセサリーをしまいこんでいる引き出しを開ける。
長めのシルバーのネックレス。
それを手に取ろうとしたとき、その奥にある何かに指先が触れた。
硬く冷たい感触がひやりと伝わる。
過去の自分がその最奥に何をしまいこんだのかを思い出しながら、そっとそれを引きずり出した。
「…なつかし」
2年前だかの誕生日に、まろからもらったプレゼントだ。
ケースを開くと、記憶通りチョーカーが顔を出す。
特に飾り気のない、黒いだけのシンプルなデザイン。
控えめなまろらしい選択だと、当時も思った覚えがある。
だけどこれを渡されたとき、俺の首にそれを着けながら、あいつは目を細めて「控えめ・謙虚」と評するには程遠い笑みを浮かべた。
「ビジュいいからないこはやっぱり何でも似合うなぁ」なんて褒め言葉を口にしたかと思うと、満足そうに次の言葉を継いだ。
「首輪みたいでかわいい」
ぴたりと首に沿うように、弛みのないチョーカー。
それをまろの長い指がなぞる。
「俺のもの、って証みたい」
嬉しそうにそう言ってそこに唇を這わせるものだから、「ばか」も「あほ」も、いつもの軽口は出てこなかった。
ただまろがそのチョーカーを『所有権の証』だと思うように、俺にとってはそれはまろに愛されているという『存在証明』のように思えた。
だから、だ。
言い合わせたわけでもないのに、いつしかチョーカーが合図になった。
疲れているとき、寂しいとき、病みそうになったとき…まろに抱かれたくなったらそのチョーカーを身につける。
もちろん、それ以外のときにそういう行為をしないという取り決めはなかったけれど、チョーカーを着けたときは俺からの意思表示のようなものだった。
事務所でチョーカーをつけている俺に気づいたら、まろはどんなに次の日の朝が早くても最後まで仕事を手伝ってくれた。
そして遅くまで…体の隅々まで余すところなく愛してくれる。…そんな日が、確かにあった。
そんな関係性が終わったのがちょうど1年前、それもまた俺の誕生日だった。
チョーカーをもらった2年前の誕生日から、ぴったり1年が経過していた。
別れた理由なんて一口には言えない。
まろが悪かったわけでも、まろに不満があったわけでもなかった。
ただ、その愛を抱えていくには自分にはキャパオーバーを迎えていたというだけの話だ。
仕事が忙しくて、自分のためにすら時間を割くことができない。
まろのことを顧みることもできなくなって、まろには俺のために時間を使わせるのに、自分は同じように返していないことに気づいた。
…そんな関係はフェアじゃないだろ。
そう思って別れを告げた俺に、まろは抗いもしなかった。
「ん、ないこがそれでいいならいいよ」
…知ってたよ。
お前は自分の希望があれど、他人を優先するやつだって。
俺が付き合いたいなら付き合うし、別れたいなら別れる。
俺のことなんて全部分かった顔して理解した顔して、総てを受け入れる。
…だけどな、まろ。
お前だって気づいてないことはあるんだよ。
俺が、別れを口にしたその瞬間からもう後悔してるなんてこと、お前は絶対知らないんだろうな。
ケースの中から、指先でチョーカーを拾い上げる。
1年も放置されたその手触りは、記憶にあるものと違いなかった。
「…なつかし」
もう一度同じ呟きが漏れる。
持ち上げたそれを首元に当ててみた。
最後に着けたのは1年も前だし、その間に体重増減もあった。
もうサイズが合わないなんて可能性もあんのかな。
…そんなほんの少しの興味本位だった。
かちりと金具部分を外して、自分の首に回す。
ぴたりと収まったそれは、何の違和感もなかった。
サイズが緩くなったりきつくなったりした様子もない。
さっき言葉にした通り、懐かしさと共にきゅっと胸を締め付けるような切なさまで感じたのは気のせいじゃないだろう。
それをごまかすように首を横に振り、金具の部分に手をかけた。
外して、今度こそ捨ててしまおう。
もう二度と懐かしさと一緒に、何かを期待してしまうことがないように。
「……は…!?」
そう思ったはずなのに、金具部分を取ろうとしてもうまくいかない。
それから思い出した。
…そうだ、これは少し特殊な仕様になっていて、つけた瞬間にロックがかかる。
金具部分には小さな穴が開いていて、そこに付属の鍵を入れなくては錠は外れない。
このチョーカーは、俺からの「寂しい」「好き」「抱いてほしい」の合図だった。
だからこの鍵を開けるのはまろの役目だった。
激しいキスをして下から突き上げながら、チョーカーのロックを外す。
それがお決まりのパターンだったから、つまり今ここにこの鍵はない。
「やば…!!」
信じられない思いで首元に手をやる。
どうする…まろがこの鍵を今でも持っているかなんて分からない。
…いやそれ以前に、別れた後にこれを身に着けてるところなんて見せられないだろ。
外れなくなった指輪なんかは、消防署に頼めば切ってもらえるんだっけ。
その場合チョーカーも可能なんだろうか。
…なんて、結論の出ない考えがぐるぐる回る中、見上げた時計はもう出社時間が迫っていることを示していた。
出勤予定時間ぎりぎりに滑りこんだ俺は、タートルネックのニットに着替え、マフラーをぐるぐる巻くという1月とは言え暑苦しい姿だった。
タートルネックでとりあえずチョーカーは隠れると言っても、角度によってはちらりと見えてしまうかもしれない。
それを防ぐべくその上に巻いたマフラーは室内でも外さなかったせいか、他のメンバーに指摘されてしまった。
「今日やけに寒いんだよね。マフラー外したくないくらい」
苦し紛れの言い訳に、初兎ちゃん辺りは心配そうに眉を寄せる。
「え…大丈夫? それ寒気とかちゃう? 風邪ひいてないといいけど。ないちゃん今日誕生日やし、夜配信もあるしさ」
「大丈夫大丈夫。冷えて寒いってだけだから」
配信は絶対大丈夫、と続けて笑ってみせる。
それに安堵したメンバーたちが打ち合わせや作業の続きに戻っていくのを見やって、ほっと胸を撫で下ろした。
…まろが…まろだけが、射抜くような目でこちらを見ていることにも気づかずに。
「ないこ、ちょっといい?」
昼休憩にと他メンバーやスタッフが部屋を出て行ってすぐ、まろがこちらへ近寄ってきた。
「…な、なに?俺この後大事なミーティングが…」
「それ俺も参加のやつやん。しかも1時間後。ちょっと話したいだけやから、そんなに時間は取らせんよ」
そう言ったまろが、もうすぐ目の前まで来ている。
…しまった。立ち上がったばかりの態勢で、デスクと椅子に挟まれて逃げ場がない。
じり、と一歩退こうにも退路はない。
まろはそんな俺にはお構いなしに距離を詰めてくる。
真正面から対峙したとき、あいつは俺のマフラーを指差した。
「それ、外してみて」
「は!? なん…」
「寒いなんて嘘やろ?」
もう一歩、まろがじりと歩み寄る。
これ以上後ろに下がることもできず、俺はごくりと息を飲んだ。
それから「…や、だ」と何とか声を絞り出す。
「何で?」
「『何で』って、そっちこそ何でだよ…! 何でこれ外さなきゃなんないんだよ…!」
「『見られたくないもの』が、あるんやろ?」
容赦なく図星を突かれ、ぐ、と返事に詰まった。
その俺の様子に、まろがぎらと青い瞳を瞠るように光らせる。
初めてみる顔だった。
もう何年もの付き合いだ。
怒っている姿はもちろん見たことがあるのに、それとも違う…もっと激しい感情を剥き出しにしたような表情だった。
そう思った瞬間、まろが動く方が早かった。
乱暴にマフラーをぐいと掴む。
「やめ…」
ぱさりと床に落とされたマフラーには気にも留めず、まろはそのまま俺のニットに手を伸ばした。
顎の辺りまで覆う襟部分を引っ張るようにして下へ下げる。
あー、終わった…。外せなくなった黒いチョーカーが露わになる。
「…え…?」
声を発したのは、まろが先だった。
ただ予想外だったのは、その声音が戸惑い気味だったことだ。
チョーカーを見て、大きく目を見開いている。
…はっず。
別れた男にあの時の意味深なアイテムを身に着けてるとこ見られるなんて。
未練がましいにもほどがあるだろ。
そう自覚すればするほど、自分の顔が羞恥で真っ赤に染まって行くのが分かる。
「ない、こ…それ…」
「うるさいうるさい! 違うって、これはたまたま…」
「たまたまで鍵付きチョーカー着けへんよな」
「違うって…!」
声を荒げ返そうとしたけれど、それすら飲み込むように、まろが大きな腕を広げて俺の体を包み込んだ。
ぎゅっと痛いくらいに抱き寄せながら、大きなため息を吐き出す。
「なんや…必死で首元隠そうとしとるから、てっきり…」
そこで言葉を飲み込んだまろは、俺の肩口に額を押しつけてきた。
本気で安堵したように、「はぁぁぁ」とクソバカでかい吐息を漏らす。
「『てっきり』??」
まろの言葉を繰り返すと、あいつはそこでようやく俺の肩から顔を上げた。
すぐ目の前で青い目が苦笑をたたえる。
「キスマーク、かと思った。首元隠すなんてそれくらいしかないやん」
「は!?誰のだよ!」
「それが分からんから腹立ったんやん」
さらりと言ってのけてから、まろはもう一度俺の肩を抱き直した。
ただし今度はきつくではなく、優しくそっと。
そして「なぁないこ」と耳元で囁いた。
「一年前にないこに振られたときさ、俺は『ないこが俺を隣に選んでくれないならそれも仕方ない』って思ったんやけどさ」
右耳の縁に唇が触れそうな距離。
ぐわりと熱を帯びた衝動が腹の底辺りから沸き上がる。
「それでも、その隣の位置を誰かに取られるんは嫌なんよ」
「…な、んだよそれ」
「ないこが俺と別れて独り身でおる分には我慢できるけど、誰かと付き合うなら黙ってないよ、ってこと」
「は…勝手すぎじゃんそんなん…」
…いや、違う。
そもそも身勝手だったのは俺の方だ。
自分のキャパで収めきれないからとその手を離し、今度はそれを後悔している。
本当はずっとずっと、一緒にいてほしかったくせに。
「でもないこも、これ着けるくらいにはまだ俺のこと好きやろ?」
囁きながら、まろは再び俺の襟に指をかけた。
ぐい と下に下ろしたそこから、覗いているだろう黒いチョーカー。
あの時の俺たちの「寂しい」「好き」「抱いてほしい」の合図。
「〜っ」
『チョーカーを着けるくらいには』なんかじゃない。
今でもどうしようもないくらい、俺はまろだけが好きだよ。
そう伝えるには俺の口は素直になりきれなくて、代わりにまろの首に両腕を回した。
それが嬉しかったのか、まろがまた耳元で「ふふ」と笑う。
「ないこ、今日仕事終わったらうち来て。チョーカーの鍵外したるから」
「……俺今日バースデー配信あるし」
「終わってからでいいよ」
「おいで」と無駄にいい声で囁かれる。
チョーカーの鍵を外すこと以外の展開を想像した俺は、期待と快感に似た何かがぞくりと全身を駆け巡るのを自覚した。
コメント
4件
チョーカーを「首輪みたいで可愛い」は少しばかり驚いてしまいました…、! あおば様の青さんは桃さん第一に考えてるのが堪らなく好きなんです…!! 読んでいて舞い上がっておりました…✨✨あおば様なら投稿されると思っていたんです😖💘 おいで が優しすぎて…毎回言葉選びのセンスに尊敬してます😭😭💕好みにドストライクの青桃さんで幸せ気分で読んでおります!ෆ 投稿ありがとうございました…!!✨
このお話に限った話じゃなく、あおばさんの作品全ての言い回しが本当に大好きです。 いつもたくさんの幸せをありがとうございます🫶🏻✨️