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「トリックオアトリート!」
「とりっく…おあ…とりーと…?」
「お菓子をくれなきゃイタズラするよってことだよ、楓ちゃん。」
体育祭での一騒動も終わり、楓ちゃんと暮らすようになって1ヶ月がたつ今日は10月31日、ハロウィンです。
「本当にくだらないイベントだよなー。ガキの遊びかよ。」
「ハロウィンは立派な季節イベントだよ。かぼちゃのランタンをつくったり、可愛い洋服着たりして収穫を祝う行事だからね。」
「…コスプレ……するのか…?」
「……こすぷれ…?」
「最近、若者の間で流行しているコスチュームプレイのことです。普段着ないような服を着るのが、娯楽の一つのようです。」
「花月チャンと楓チャンには今日のために特別な衣装を用意したわ。花月チャンは白を基調とした天使の衣装、楓チャンは黒がメインのデビルの衣装よ。」
「私が悪魔だって言いたいわけですか…。」
相変わらず楓ちゃんは甘えるのも会話も苦手みたいだけど、皆の配慮もありなんとかコミュニケーションをとれるようになってきた。
「あら、そんなことないわよ。楓チャンは大人びた顔しているし、甘々系の天使よりクールビューティな悪魔の方が似合うと思ったのよ。」
「クール…ビューティー……ま、着てあげてもいいけど。」
「…楓、ありがとう、だろ。」
「別に私頼んでないもの。黄之竹先輩が勝手に用意したんでしょう。」
「黄之竹先輩だなんて固いのはなしって言ってるでしょ。泰揮クンって呼んでほしいわ。」
「別に貴方たちと仲良くするつもりなんかないし、そういうの好きじゃない。私が信じているのは花月だけ。それ以外は要らないから。」
そう言って大広間を出て行ってしまう楓ちゃん。私のことを信じてくれているのは嬉しいけど、皆との溝はなかなか埋まらない。
「姫ってあんなに生意気だったんだね。年相応といえばそうだけど、少しは僕たちにも心を開いてほしいよ。」
「……人を信じるって難しいよね…。それが初めてのことなら尚更。信じたいって気持ちがあっても、どうすればいいのか分からない。失敗して自分を否定されるなら最初から要らない。望んでいるのに逃げてしまう、逃げているようで本当は強く望んでいる。」
「まあ、あの親なら仕方ねえか。家族の愛とかなさそうだったし。」
「愛…か。」
「お前も…最初はそう思ったのか…?俺らのこと…嫌いだった…?」
「嫌いって言うより、分からなかったって言うほうが正確かな。自分が本当に望んでいることが分からなくて…。でも…1人になってしまうことへの恐怖はあって…。だけど、私にとって皆さんは家族だから…だから抵抗は少しずつ無くなった。でも、楓ちゃんの場合は少し違う気がする……そもそも、人との付き合いとかが分からないんじゃないかな。」
「そうね……。家族や友達のぬくもりって誰もが当たり前にあるわけじゃないものね。」