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今日は休日だがダンジョンに出かけることもなく、一日勉強をする日だと決めて、勉強に邁進している。一通りの赤本を解いて、ネットで取り寄せた他の地方にあるダンジョン学部の入学試験問題なども手に入れ、どのぐらいの学力が必要なのかを感じ取りつつ、これならなんとかいけそうだ、という確実な手ごたえを感じ始めた。
今日は彩花もまじめに勉強をしにやってきているので、俺が解き終わった赤本を渡して試しに解いてもらっている。静かに、いつも通りのものすごい集中力によって、話しかけたらそのまま噛みつきそうなぐらいの勢いで問題を解いている。横から見てちょっと休憩がてら、真剣な表情に見惚れているが、例によって彩花はこちらの視線に気づいていない。
先日購入した保温ポットに満たされたコーヒーを徐々に消費しつつ、俺のほうも試験範囲の復習と細かいところの詰めの作業、そして出そうな問題の予測などをしながらのびのびと問題を解いている。
「華がないわね。受験生にそれを期待しても無駄だろうけど、せっかく二人きりなんだから全力でイチャイチャすればいいのに。その方が色んな意味でスッキリして勉強に身が入るかもしれないわよ? 」
二人があまりに静かに勉強をしているのを見て、アカネが横から茶々を入れに来ている。
「今日はそういうのは要らない日なんだよ。せめてテストが明けてからにしてくれ。そのほうが気が抜けてちょうどいい。ただでさえ今回は結構危ないライバルが一人多いんだ、ギリギリまで勉強して詰め込んで、自分のポジションはキープしておきたいんでな」
「それは残念ね。私の幹也が勉強ばかりしていて心配だわ。このままじゃガリ勉になってしまいそう」
「あと三カ月の辛抱だ。それが終わったら全力でフィーバーするから期待しててくれ」
「入学即妊娠が発覚するようなことだけは止めてあげなさいよね。結城さんのことを本条さんと呼ばなくちゃいけなくなっちゃうわ」
「そこはちゃんとするつもりだからいいんだよ。さて、そろそろ集中に戻るからいつも通りアカネは日課でもこなしておいてやってくれ」
「最近はこの辺の生き物全部の道案内をしたから暇気味なのよね。まあ、人でも時々は私が見えるようになっているから良いんだけれど」
そうぶつくさいいつつ、アカネは出かけていった。暇なのはわかるが、こちらを常に標的にして話しかけるのは脳の負荷が余分にかかるので分散処理が苦手な俺としては勘弁してほしいところだが。その点、この会話を完全に無視できる彩花の耳は便利で良い……耳が赤くなっている。エアコンが壊れて寒いわけではないので、もしかすると……
「彩花、話普通に聞いてた? 」
そのまま、顔をこちらに向けないままコクコクと頷く。
「丁度詰まって、問題を聞こうとしたところで、集中が切れてたから、その……完全に聞いてしまったわ」
そうか、聞こえてしまったか。ならまあ、丁度いいし伝えておこうかな。
「【精力絶倫】は二枚あるから、二人で獣になれるぞ」
「それは……すごく楽しみね」
彩花も本性を隠さなくなってきた。相当たまっているのだろうな。俺がうっかり受験までは、なんて期限を定めてしまったおかげで余計に無理をさせているのかもしれないが、俺も俺で彩花の真っ赤になる様子や部屋に入ってきて上着を脱いだ時のフワッと香る彩花特有の匂いなんかで反応してしまうので、仕方がないとはいえ俺も相当無理をしている自覚はある。
「後三カ月、頑張るか。そいでもって、一杯楽しもう。それまでは……な」
「うん」
赤くなって俯いてしまう彩花が可愛くてついキスをしようとしたくなってしまうが、本当に盛り上がってそれ以上になってしまう前に止めておく必要がある。今日のところは言葉だけで確かめ合う……本当はそれなりに必要な行為が色々とあるんだろうけど、けど! 今はやめとこう。勉強どころじゃなくなってしまう。
しばらく勉強に集中しようと試みてはいるものの、下半身のざわつきが収まらない。これもアカネのせいである。触れるなら後で一発殴ってスッキリすることができるものの、そういうわけにもいかないから困る。
「そういえば、アカネさんもずいぶん大きくなったわね」
同じく集中できないであろう彩花が急にアカネの話をする。
「そうだな。最初はもっと小さかったんだけどな。こっちで色々したりお供えしたり、そうやってる間に段々大きくなってきたな」
「私の中一ぐらいの大きさがちょうどあの位ね。もうちょっと育てばいろんなところが……成長してくるはず……どうなるんだろう、アカネさんの場合」
アカネが中学生ぐらいに成長したら胸や足もスラッと伸びてモデル体型になるのか、それとも一般的な日本人的なところまでで止まるのか。どうなるんだろうな。ちょっと興味ある。現代人風に成長していくのか、少し昭和な感じで足は短く胴は長く成長していくのか……これからの成長が楽しみだな。
「そうだな、どっちにしてもアカネはアカネだし、その内成長が追い抜かれてお姉さん風になる可能性もあるってわけか。中身と見た目が一致するって意味ではそっちの方がいいのかもしれないな。まあ、鬱陶しさが余計に上がるようになるかもしれないし、もしかしたら一定以上には成長しなくて、それ以外の機能が追加されていくのかもしれないし……その辺はよくわからないな」
「それ以外の機能が追加されていくって具体的には? 」
「例えばお供え物を食べられるようになるとか、信者である俺や彩花なら触れることができるようになる、とか? どっちにしてもアカネ本人が成長して現実に侵食していくという意味では同じかな。どうなるのかはアカネ次第だから楽しみではあるな。どうなるんだろう」
「アカネさんに触れる様になったらどうするつもりなの? 今までのお礼のキスでもするつもり? 」
「そうだな、とりあえずなでなでしてその後でアイアンクローするかな、よくも散々セクハラかましてくれたなって」
「ふふっ、そうね。そのぐらいは許されるかも」
それから……どうせセクハラが許されるなら彩花の許可込みで盛大に乳を揉んでやるのも有りかもしれないな。今までさんざんやってくれたなという意味を込めて、彩花とタッグを組んで二人で攻めるのもありだろう。なんか楽しみになってきたと同時に、気が晴れてきて今なら勉強を再開するのにちょうどいいような気がしてきた。
「よし、気がまぎれた。今のうちに勉強に再集中して次でも隆介や薬師寺君に負けないように頑張らないとな」
「薬師寺君に何か言われたの? 前回中間テストの時に一悶着はあったけれど、あれ以来何も話を聞かないから諦めたのか、それともこっそりものすごい話の伝えられ方をされたりするのかなって」
「あれ以来は何も。ただ、彼も今回は立派なライバルだから負けていられないなって思ってさ。隆介ほど直接的に言ってきては居ないものの、あのひと悶着があって諦めるってことはないだろうからさ。今回は凄い努力でもってテストに挑んでくると思うんだよ。だからその分負けたり手を抜いたりできないなって思ってさ」
「頑張ってね、学年2位様。私は今の成績を維持できればそれでいいわ。元々二桁と三桁の間を行ったり来たりしてた人間が一桁順位ギリギリまで上がってこれただけでも充分よ。精々外から結果の出来のほどを見せてもらうようにするわね」
彩花が自分は関係ないというポーズを取りつつ、応援はしてくれている。
「まあ、手を抜いたらすぐばれるだろうしな。その分勉強頑張ってやらないとっと……」
俺も集中して勉強に励むか。しばらくすると彩花も息抜きが出来たのか、また集中モードに入り始めた。コーヒーを一口飲んで口を湿らせ、脳にカフェインを作用させると目がカッと開き、しっかり冴えた頭が情報を吸収していき、方程式を自然に紐解いていく。さあ、この調子で今日も暗くなってくるまで頑張るか。
◇◆◇◆◇◆◇
「幹也、起きなさい、寝てないけど私の可愛い幹也。後結城さん……は幹也が直接話しかけないとダメっぽいわね。幹也、とにかく気づきなさい」
アカネの声で気が付く。ふと顔を上げると、外はもう暗くなっていた。おおう……三時間ほどみっちり集中していたらしい。気が付くと保温ポットの中のコーヒーは既に中身が無くなっていて、がぶ飲みしたわけではないが、しっかり無意識のうちに水分を取っていた形跡がある。おかげで……トイレが近いぞ。
「ちょっとまて、先にトイレに行かせてくれ」
トイレで用を済ませた後、きちんと手を洗ってから彩花を揺り動かして周りの変化に気づかせる。流石に肉体的に揺さぶりをかけられたら彩花も気づくらしく、俺が触れるとビクッと体を一瞬硬直させてその後こっちを眺める。
「どうしたの、幹也」
「気が付いたらこんな時間になっている。二人そろって集中しすぎたみたいだ」
「どれ……あ、もう帰る時間だわ。そういえばお腹もすいてきたし」
空腹を忘れるほど集中できるのは羨ましい反面危険でもあるな。これ以上集中力を増し過ぎて地震が来ても気が付かないとか、そんな体にならないように注意してほしいものだ。
「じゃあ帰るわね。遅くまでごめんなさい、試験が終わったら、またゆっくりしましょう」
慌てて帰る準備をしていく彩花に赤本を一冊持たせ、これは俺はもう解いたから同じダンジョン学部関係の過去問集としては対策になるかも、として持たせておく。
「いいの? 幹也が使うべきなんだと思うけど」
「一通り解いて問題なかったからな。彩花も使ってみて、実際に出るかどうかはともかくとしてこのぐらいの学力が要求されるんだ、っていう目安にはなると思うから」
「わかったわ。じゃあ借りておく。解いたらすぐ返すから」
去り際に軽くキスを交わし、お互い少し体温を上げたところでもう肌寒い外へ送っていく。
「もうすぐ冬なのね」
「冬休みは休みを取ってる場合じゃなさそうだな。お互い勉強に集中して、共通テスト向けの課題に取り組んでいかないと」
「冬休み直前にも模試が一つ入ってたわよね。共通テストギリギリに答案が返ってくるからあんまり役に立たないんじゃないかって言われてるけど」
「何もしないよりましってことなんだろうさ。まあ、落ち着いて取り掛かれば大丈夫なんじゃないかな。じゃあ、また学校で」
「うんっ」
コメント
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第175話、読み終わりました〜!今回は期末テスト前の静かな勉強回だけど、アカネの茶々入れから始まる会話のリズムが絶妙で、読んでいてすごく心地よかったです。「後三カ月の辛抱だ」という幹也のセリフに、二人の関係がちゃんと先を見据えて進んでいるのがわかって、じんわりきました。それにしても彩花の耳が赤くなるシーン、可愛すぎますね。試験終わった後のフィーバー、私も楽しみにしてます!(笑)