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あくまで個人の趣味であり、現実の事象とは一切無関係です。スクショ、無断転載、晒し行為等はおやめください。
未成年の喫煙表現がありますが、喫煙を助長するものではありません。
2:00 p.m.
轟々と鳴る換気扇に一本の紫煙が吸い込まれていく。
「喫煙者はっけーん」
その様子をボーッと眺めていると声をかけられた。
寝起きでちょっと鼻にかかった声。
でも、凛とした声。
タバコに蝕まれていない、きれいな声。
「…やめんよ」
深い時間のせいもあってか、よく回らない頭では気の利いた言葉は出てこないらしい。
「肺癌になるよ」
「その時はその時でしょ」
ぶっきらぼうに返すが「そっか」とりぃちょは笑うだけで、俺の胸ポケットに入ったボックスに手を伸ばした。
「いっぽんちょーだい」
「え、は?吸うの?てか、吸えんの?」
「煙草はハタチでやめたので」
「ああ。…ん?ハタチ?」
「友達に煙草吸う女はフラれるって言われたのを鵜呑みにして禁煙した」
「なにそれ、てかお前男じゃん」
「そうなんだけどさぁ」と言いながら丸い爪の指先が器用にタバコを一本取り出す。俺の吸ってるソレから火をつけた。シガレットキスってやつ。一息吸うと長く白い息を吐き出した。ガッツリ肺に入れてる姿を見て、本当に吸ってたんだなぁとぼんやり認識した。
「そういえば俺もマルボロ吸ってたよ。これじゃないけど」
「甘いのじゃないんだ。なんか意外」
「あれ美味しくないじゃん」
「肺癌になるぜ」
さっきのお返しとばかりに言ってやるとりぃちょはまた紫煙を吐き出しながら笑った。
「大好きな彼氏様と一緒に肺癌になって死ぬのも粋じゃない?」
「ははっ、なにそれ最高じゃん。このご時世、揃ってタバコ吸ってる奴らなんて稀有だろうね」
「払うもん払ってんだからいいの」
「税金とか?」
「嫌々ね」
俺が一本目を吸い終わりニ本目に手を出すと今度はりぃちょが火を分けてくれた。
「まぁ、子供ができたら別の話だけどね。もちろん相手の男にもやめさせるけど。でもそれは来世の話じゃん?」
性別に負い目を感じているとか、そんなんじゃなくりぃちょが笑う。
「じゃあ今世は肺癌で死んで、来世はさっさと子供作ろうな」
「んー、でも肺癌で死ぬより子供作るより前に婚姻届が足りないなぁ」
「明日明後日にでも用意します」
「煙草と一緒に渡してくれたら考えるね」
それじゃあ明日役所に婚姻届を取りに行って、一番良いタバコを買って…渡すのは次の日か。
「早急に用意するから、タバコでも吸って待っててよ」
「楽しみにしとく」
二人の人差し指と中指に挟まれたタバコをよそに、メンソールのキツいタバコ味の口づけを交わした。
2:10 p.m.
轟々と鳴る換気扇に二本の紫煙が吸い込まれていく。