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「寒いですねぇ…」


ふう、とため息まじりに息を吐くと               息は白くなり夜空へ消えていく。         

赤くなった指先を擦るが、寒さのせいか、    ぴりぴりとしびれるような感覚を覚えた。


『ノボリー!早く帰ろ!』

少し遠くから手を振りながら近づいてくる弟の姿が雪に少し隠れる。

「急かさないでくださいまし、今行きますから」

朝、家を出た時は少し寒い位だと思っていたが、 夜になると朝と比べ物にならないほど冷え込んだ。

そのせいで、今日は手袋を持ってきていなかった。

ギアステーションは暖房があり温かいのだが、  逆に寒暖の差が激しくあり、一層外が寒く感じる。

「寒いですね…」

手を擦り摩擦熱で少しだけ寒さを和らげる。     すると、突然クダリが右手を取り、繋いできた。 

『ノボリ手冷たっ!?氷みたい!』

クダリの手の暖かさに少し驚きながらも安心する。だがこのままでは、クダリのでも冷えてしまう。「クダリ、手が冷えますよ」

そう言ったがクダリは握った手を離さない。

『ノボリ、手つめたい!

だからぼくあっためてあげる!』

そう言って無邪気に笑うクダリ。              夜なのにまるでクダリが太陽のように温かく、眩しく見えた。

「…クダリの手は温かいですね」

『いや、ノボリの手が冷たいだけ』


二人で白い息を吐きながら、ちらちらと降る雪の中を歩く。

不思議とさっきより、温かく感じた。


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽


「…」


ヒスイ地方テンガン山。

頂上付近は冬で無くとも雪が降っており、酷い時は吹雪にもなり得る。

今日は比較的優しい雪で、まるで舞うように軽い雪が風に乗ってふわふわと散る。

ぼうっとその情景を眺めていると何故か心が安らぐ。


『おい!なにしてるんだよぅ!?』


後ろから強く手を引かれ、尻餅をつく。

するとさっきまで立っていた場所で、      野生のレントラーがスパークを纏い突進してきていた。

レントラーはこっちを少し睨んだ跡、群れの方へと帰って行った。


『危なかったじゃないか!ツバキに助けてもらえて運が良かったな、ノボリ!』

後ろを振り向くと、息を荒げたコンゴウ団キャプテン、ツバキが居た。

きっとあのままだったら、レントラーに勢いのままタックルされ大怪我を追っていただろう。

「ツバキ様…ありがとうございます」

『本当だよ!もっと危機感を持って行動するのがキャプテンというものだよ全く!』

珍しく正論を言われぐうの音も出ない。

相変わらず賑やかな方だ、と心の中で思う。

『それにしてもお前、手冷たくてビックリしたよぅ!

雪に手でも入れたりでもしてたのかい!?』

そう言われ、ふと手を自分の頬に当ててみる。  頬も冷えているせいなのか、手が冷たいのかどうかよく分からない。


でも、たしか

この手を温めてくれる人がいた気がする。


『…どうしたんだよぅ、今日はやけにボーッとしてるな』


赤くなった指先を見つめる。


「いえ、なんでもありません」


きっとこれが前の記憶ならば、きっとそれはそれは暖かいものだったのだろう。

不思議と胸のあたりが暖かくなった気がした。


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