大阪の冬の朝。
桜田◯◯ 16歳。
学校には通ってないけど、毎日きっちり起きて部屋でダンスの練習をするのが日課だった。
狭めの部屋。防音マットの上。
スマホから流れるビートに合わせて◯◯の動きはしなやかでキレがある。
足先の使い方、重心の抜き方、指先まで流れるように動く__独学とは思えない完成度。
けど◯◯本人は自分がとんでもないレベルだなんて少しも思っていない。
「ん〜、まだここのアイソレ硬いわ、、
くそ、もういっかいや。」
イヤホンで爆音。
母親の声は聞こえない。
「◯◯ー!ちょっときてー!」
もちろん無反応。
しびれを切らした母親がトントンと階段を上がってくる。
ノックしても返事がないので、そっとドアを開けた
瞬間__
◯◯が回転の途中で止まった。
「、、、ビビらすなや!!いきなり入ってきてどうしたん。」
イヤホンを外しながら、息が上がったまま眉毛を寄せる。
母はちょっと興奮した声で言う。
「◯◯、ちょっと話あるんよ,,,すごい話」
「えなに。どうしたん。何があったん。」
母は一枚の紙を差し出した。
__timelesz新メンバーオーディション__
元SexyZoneの菊池風磨・佐藤勝利・松島聡
その3人が立ち上げた新プロジェクト
◯◯は一瞬で顔をしかめた。
「,,,は、なにこれ。」
「これ応募してみない?!」
「は無理に決まってんだけど。」
◯◯の大阪弁がバチバチに尖る
「あんたのTikTokみて。やってほしいの」
「むりむり笑」
そう言って◯◯はトイレに行った。
__次の日__
「◯◯timelesz応募してたからねー」
「は?まじ何言ってんの?」
「何勝手にしてんの?」
「てかtimeleszって誰?女?男?まじアイドルとか興味ねーし。」
「◯◯!!!そんなこというな!」
「興味がなくても。一旦受けてほしい。」
母も負けていない。
母に説得され。
「はぁもういいや。どうせ落ちるからいいっか。」
なんかお母さんの顔が明るくなった気がした。
__そして数日後__
ピロンッ
一通のメールが届く。
__書類審査のお知らせ__
お母さんは飛び跳ねる勢いで喜ぶ。
「みて!!◯◯!受かったで!」
「は?まじで言ってる?」
◯◯は一気に現実味が増して、ソファに沈み込んだ。
そのまま1週間。
◯◯は行く気ゼロ
母が声をかけるたび
「うるっさい!行かんって!」
と言い続けていた。
けど___
対面前日
「◯◯、あんた、逃げるんやなくて、“確認だけ”しに行っておいで。落ちてもええ。でも、あんたの全力を見てほしい。後悔のないように。」
◯◯は黙ったまま布団に入った。
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