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「四季」
前を歩く無陀野がむっくんを抱えて歩く四季に背を向けたまま声をかけた。
ゆっくりと目線を上げて四季は無陀野を見る。
「お前は俺と同室だ」
どうしつ、同質、銅室…?意図を理解しようと考えたけれども、すぐさまどうでも良くなりコクリと頷いた。
本当に理解できているのかと言いたげに無陀野は四季に目線を向けるが、見えたのは紺色の髪だけだった。
今日の授業は終わっている為に四季を部屋に案内しようとローラースケートの向きを変えた。
ガチャと寮の部屋を開けて無陀野が先に入る。
教室の時もそうだったが四季には全てを恐れているように見える。誰かの先に行くことも、人の目も。
それに『一ノ瀬』という名前にも。
皇后崎達にも様々な過去が存在して、苦痛やトラウマを抱えながらも生を選択してきた。けれども四季は目覚めた瞬間に死を選択した。
喜怒哀楽を移さない表情、人も景色も同化している瞳。人と目を合わせようとしない。
未だ四季のことは調べが付いていない、今夜あたり真澄に調査を依頼しておこうと決断し四季についての思考を止めた。
「二段ベットの好きな方を使え」
「四季の荷物は翌日から運び込む」
四季にそれだけを伝えたのちに無陀野は部屋から出て行ってしまった。
1人綺麗に整頓されて無駄な物がない部屋に残された。これ程までに整理された部屋に居れば、突っ立っている己が余計に無意味で価値のない存在に思えてくる。
「むぅ…?」
顔を青ざめてさせている四季の腕で少し身じろぎをして伺うように小さくむっくんが鳴いた。
なんかあったかと四季が棒立ちのまま顔を近付ければ頬に柔らかい感覚が触れた。
「…ぇ」
四季が開かないと決めたはずの口から、短く短音が溢れた。頬の温かさの正体はむっくんだった、小さなその口が四季の頬に触れていた。
慰めの為か、意図をせずか、理由はわからないけれどもむっくんは四季にキスをした。
むっくん…?なに…?なんで……?わかんない、キス…?え………?
空白によって四季の頭が埋められる、わからないが占領し一転して僅かな恐怖を生む。その感情に気を取られてしまい嫌と思っていない事を四季は気付いてはいない。
何をすれば良いのか分からなくなってしまった四季はただただ部屋の主である無陀野の帰りを待ち、判断を仰ぐ事に決めた。
『…あ゛…?』
『お前の方から電話かけてくる、なんざ珍しいじゃねぇかよ』
『無陀野ぉ』
電話の向こうから聞こえてくる真澄の声を聞きながら書類を片手に四季のことを聞く。
「羅刹に転入生が入ってきた」
『…だったらなんだよ』
「素性が一切わからない」
『で…?』
「手間が開いて入れば調査してほしい」
和平協定が決議したとは言え偵察隊も戦闘部隊も解体された訳ではない。逆に憤りを覚えている桃太郎を抑えたり今までの歪みを整えたりしている。
以前に比べれば仕事量は随分と減った方らしい。
「一ノ瀬四季という名前だ」
コメント
8件
四季くんが戸惑ってるのほんとに好きだっ(( むっくん慰めようとしとったんかな?可愛いかよっ!!!!💓

まってむくしき尊い!ヤバい!好きすぎる!次回も待ってます!