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「こんなもんかぁ…?」
文字列を並べた紙と睨めっこして数時間。
普段から自分の字を見慣れている彼奴に悟られないように細部まで注意深く確認する。
まぁ平気だろう。
彼奴はきっと内容に衝撃を受けてまともな判断が出来なくなるはずだ。
それ をテーブルの上に置き一息つく。
マグカップが並んでいる棚を見つめる。その中に一つだけ明らかに安っぽい物が紛れている。この為だけに買ってきた代物だ。
次の日からの恋人の行動を想像し思わず口角が上がってしまう。嫉妬に狂ってくれたらいいな。と欲が全面に出た願望を抱きながら冷めた紅茶を啜った。
次の日からはドットの想像通りだった。
ずっと背中に張り付いて牽制している。固有魔法だって一日に何回も見る事になった。
マッシュ達には悪いと思っているが、もっと続けて欲しいという気持ちが強かった。
完璧なランス・クラウンが俺の事で躍起になっている。
これが優越感やら独占欲やらの醜くどす黒い感情が渦巻くドットの胸を満たしていく。
会話も減らすと尚の事必死になるランスが見れて嬉しさと興奮を覚えた。
とある日、ランスに呼び出され久々に言葉を交わす場が設けられている。
だがそこは和気藹々とした穏やかな雰囲気ではなく眠っている虎が起きたかの様な緊張感に包まれていた。
「これは何だ?」
目の前に紙が置かれる。力み過ぎていて机にヒビが入ったかと思った。
低い声で問うてくるその青い瞳には怒りが溢れていた。
「ああ〜、それは〜」
目を泳がせる演技をする。自分で言うのもなんだがかなり上手いと思う。
「どこの女だ」
「俺だよ。女じゃねぇ、お前の恋人。」
「…は?」
豆鉄砲を喰らった鳩…まではいかないがかなり驚いている。そりゃあそうだろう。浮気を疑い問い詰めてみたら恋人の自作自演でしたなんて何処かのドッキリ企画でしか聞かない様な事が現実で起こっているなんて誰が想像出来るだろう?
はぁ。これで終わりかぁ。
今日まで本当に楽しかった。あのランスが感情を露わにして俺を囲んでいる。
そんな状況が死ぬ程愛おしかった。
でも、答え合わせをしてしまえばもう終わりだ。これからはもうあの優越感を味わうことは出来ない。
「なんでそんな事を…」
「なんでって…そりゃあ、確認したかったんだよ。」
拍動が大きくなり始める。
「…確認?」
お互いにうっすらと汗が滲み、頬が紅潮する。零れる吐息は薄く短い。
「お前には俺がいないといけないって」
歪んだ愛。
「っはは、そうか」
傍から見れば異常なそれは
「確認しなくてもいい様にしてやる」
二人の中では通常なのだろう。