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その日の朝、明はいつもより早めに登校した、持ち物や机に何かされてたら、授業が始まる前に片付けなければいけない
ドキドキしながら下駄箱の上履きを見る。薄汚れているけど明の上履きは、ちゃんとそこにあった
ホッと第一関門はクリアだ、教室に入ると机に落書きされていないかチェックする
第二関門クリアだ机は綺麗だった
引き出しの中もチェックする、以前に土が入っていた、そのままノートや教科書を入れると汚れてしまう
明はホッと胸を撫でおろす、よかった今日は何もされていない
教室の隅でたむろっている、数人の男子生徒を意識する、とても居心地が悪い
レオ君は上履きを隠したのは自分じゃないと言った
本当だろうか?・・・
でももうそんなことはどうでもよかった、明は小さくため息をつき、チャイムが鳴るまで石のようにそこにうずくまるだけ・・・・
机に落書きされなくなっただけで・・・・
仲間はずれには変わりない・・・
..:。:.
「よぉ・・・・ 」
その声に明がハッと顔を上げた、すると目の前の席にレオが座っていた
レオは明を見ないで体を横にして座っている。一時停止したように明がレオを凝視する
・・・いじめられるのだろうか?
一瞬警戒にこぶしを握り締めた、殴られたら絶対殴り返す
「・・・俺達の担任って・・・男?女? 」
レオが照れくさそうに明に言った、明はまだレオが言った言葉が脳に到達していないようで、ポカンとした顔で当惑げにレオを見る
どうやら本当に友達を作ったことがなさそうだ
ちっ!「あのさぁ~・・こういうのってノリだろ?せっかく人が初めからやり直そうとしてやってるんだぞ!聞こえたのか?男か?女か?どっちだ!」
「おっ・・・おおお男・・・ 」
ようやく明が答えたが、どもってしまったことにうろたえている
わかった、とレオがコクリと頷いた
「それで?次はなんだ?冗談を言えよ・・・笑ってやっから」
「え・・えっと・・・えっと・・・考えて・・・ない・・・ 」
ブハッ
「なんだ?それ」
信じられないことにレオが自分の前で、喉を詰まらせて笑いだす
じわりと明の目に涙がにじむ
それは明が何度も・・・何度も、夢見ていたことだ
カッコいいレオと一緒に、自分もカッコよく話している
..:。:.::.*゜:.
そしてレオはノートを明に差し出した
「ほらっ・・・名前書いてくれんだろ?」
明はレオのノートに「桐谷レオ」と書いた
レオの名前はカタカナだ、いつかこの名前の由来も聞きたいと思っていた、震える手で書き終えたノートをレオに渡す。レオはふ~んとマジマジ、明が書いた名前を見つめている
にっこり
「お前すっげぇ字綺麗だな、ありがとう」
明はもう命綱のように両手でぎゅっと握りしめている、ペンが折れそうなぐらい力を入れていた
それぐらいレオの笑顔がとても嬉しかった。嬉しいどころではなかった
「あーーー(怒)ちょっとレオ!何アキ君にサイン書いてもらってるのよ!」
「順番守りなさいよ!」
アッキーズの野々村さん達6年生が、ズカズカと二人の所にやって来た
「うっせーーー!サインも何もあるかっ!」
「アキ君は私達の推しなのよ!なんなのよ!レオ!」
とレオが明の首元を掴んで引き寄せる、明がレオにされるがままにブンブン振り回される
「俺はコイツの友達だ!ファンだからって無遠慮に何をしてもいいってことないだろ!」
友達?
..:。:.:
明の呼吸は急に浅く速くなる、今彼は何て言った?
「年増女!自分達の教室に帰れ」
「なによー!このサル!サインぐらいいいじゃない」
「そういうヤツ一人許すと、どんどんエスカレートするんだ!」
カシャカシャ言い争っているアッキーズとその間に入っている明を、写真部部長永原さんが撮影する、するとレオが永原さんのカメラを取り上げた
「無断撮影禁止だ!これは俺が放課後まで預かる!」
永原さんがサーッと青ざめた
「何すんのよ――――!!」
「キーーー!!ムカつくーーー」
「生意気ーーーーー!!」
「帰れ!帰れ!お前ら!推しも人間なのがわからないのか!プライバシーを尊重しろ!」
レオがアッキーズから明を引き離す、明の肩はなんとレオに庇うように守られている
ギャーギャー耳元で、明を取り合って、レオとアッキーズの攻防戦が続く
「あっ・・・あはははははは」
途端に明が大声で笑い出した
「あはははははははは」
もう明の笑いが止まらなかった
「なんだ?発作か?」
キャーッ
「アキ君が笑ってるわ?」
「かわいーーーーー 」
「おっお願いっっ!カメラ返してーーー
シャッターチャンスなのよーーー」
「ダメだっっ!」
レオと永原さんが明を挟んでもみ合っている
明は笑った
笑い続けた
ああ・・・楽しい・・・楽しくて仕方がない
自分の世界に彼がいる・・・・彼の世界に自分がいる・・・・
とても深くて越えられないと思っていた溝は・・・
こんなにも簡単に彼が飛び越えてきてくれた
..:。:.::.*゜:.
この日をきっかけに
..:。:.::.*゜:.
明の上履きは、二度と隠されることはなくなった
..:。:.::.*゜:.