【成宮牧場】
ふ~んふん♪「世界中のだれ~よ~り~♪きっとぉ~~♪」
朝の6時、北斗が鼻歌を歌いながら母屋のキッチンに立ち、煮炊きをしながら忙しくしている
季節感の無い黒のTシャツに、アリスからプレゼントしてもらった、ROUND HOUSE(ラウンドハウス)のメンズワークエプロンを身に着けて
胸には特注の金色で「PERFECT HUMAN」(パーフェクトヒューマン)と刺繍がされている
母屋のキッチンには柑橘系類の果物が入った盛り籠と、スパイスラックにいくつもの香辛料とハーブ類、その横の籠には丸々としたトマトと、粘土のようなアボガド、北斗はこのセットのストックを欠かさない
銀行の金庫ほどある観音開きの業務用冷蔵庫から、夕べ一晩漬けこんでおいた鶏モモ肉を取り出す
バットに入れた片栗粉をまんべんなく絡ませると、パンパン余分な粉をはたき、180度の揚げ油の中に落とし、「鶏もも肉の竜田揚げ」を作る
北斗はどんどん揚げた竜田揚げを、天ぷらフライバットに移す
揚げ終わったら、ホットコーヒーを片手に、キッチンスタンドに立ててある、タブレッドをスクロールする
タブレッドのページには「小学生の男の子弁当100選」のサイトだった
う~ん・・「からあげ・・・ウィンナーに・・・この・・花の形のはなんだ?・・ 」
北斗が人差し指と親指で顎を挟み、タブレットを睨み考え込んでいる
「ああ!ハムか!なるほど!やってみよう!」
「おはよう~北斗さん~」
アリスが水玉パジャマを来てボサボサ頭で、キッチンに入ってくると、北斗の背中にすり寄った、コンタクトをしていないので眼鏡をかけている
「悪い」
北斗が応じる
「とても美人で、優しくて、天然で、背が低くて、午前6時には絶対起きてこない天使を探してるんだけど見なかったかな?」
「ここよ」
「ほんとだ!わからなかった」
「まあ!ひどい」
アリスが丸太につかまる様に北斗の首に抱き着き、ひょいと北斗がアリスのお尻を持ち上げる
チュッチュッ・・チュッ
「ん~~~~歯磨きしてない」
「ん~~~~かまわない」
優しく北斗に揺らされ、アリスが北斗の肩に顎を置いてぐったりともたれる
「アキ君のお弁当・・・私も手伝おうかなと思って~・・」
まだ寝ぼけ眼のアリスを見て北斗が笑う
「もうほとんど出来たよ、まだ寝てていいぞ、俺はアキ達の弁当を作った後牧、場に行くからアキをサッカー場に送って行ってやってくれ」
「わかったぁ~・・・・」
アリスを降ろしてポンッとお尻を叩くと、むにゃむにゃ言いながら、アリスが北斗の家に帰って行った
クス・・・「一応気を使ってるんだな・・・」
そして北斗は冷蔵庫の一番下から、2ℓの大きな保存瓶を取り出した
その中にはたっぷりの蜂蜜に浸かった、レモンの輪切りがぎっしり詰め込まれていた。数日間にアキに言われて作り置きをしていたものだ
北斗は長い菜箸でスライスレモンを一枚つまみ、口の中へ放りこんだ、味見は作る者の特権だ
もぐもぐ・・・「ふぅ~~~ん♪ 」
酸っぱい酸味の後から地元の佐藤養蜂所の、蜂蜜の甘さが上品に追いかけてくる
一気に唾液が口の中に溢れ、そして鼻からはレモンの爽やかな香りが抜けていく、これなら疲れが取れるだろう
「やっぱりスポーツ少年には、レモンの蜂蜜漬けだよなぁ~」
きっとアキと二人で食べるだろうと、正方形のジップロックコンテナーに沢山詰めてあげた
トトロの弁当箱とトーマスの弁当箱に、同じ柄の箸もつける
そうだこれを忘れていた!と
北斗はカチカチに冷やしたレトルトパウチのスポーツドリンクを、ランチバックに二つ入れた、これが保冷剤代わりになるだろうし、喉が渇いた頃にはいい感じに溶けているはずだ
北斗は数日前の嬉しそうな明を思い出す
::.*゜:.
「ね・・ねぇ北斗!日曜日僕のと・・と・・友達のサッカー試合、観に行くって言ったよね?お弁当二人分・・・作れる?」
ソファーに寝っ転がりタブレットを見ながら、くつろいでいた北斗に明が詰め寄る
にこ・・・「一つ作るのも二つ作るのも手間は一緒だ、かまわないよ、アキのお友達の分かい?」
えへへへ・・・「う・・うん・・・レオ君・・僕の・・・友達」
頬を染めて明が照れながら言う
「へぇ~・・・アキは・・その子が好きなんだな?」
「うん!好き・・・レオ君」
明は両手の甲をお尻に敷き、体を前後に揺すり幸せそうに言う
「そうか・・・じゃぁレオ君の分も作らないとな!とびっきりの作ってやるよ」
わぁ~~い「北斗!大好き!」
明はとても喜んで北斗に抱き着いた、自分の友達が家族に影響を与えている
自分には友達がいる
家族に紹介できる友達がいることを、明はこの歳でやっと経験出来ているのだ
大きなダイニングテーブルに、明とレオの弁当を詰めたランチバックと、明のメッシュのナイキの帽子を置く
「あっ!そうだ!あれも・・・消費するの手伝ってもらおう」
北斗がキッチンカウンターのアリスが作った、チョコチップクッキーが山のように積まれた皿から、ジップロック(大)にクッキーを詰める、それでも大きなクッキーの山が、少し小さくなっただけだった
ブツブツ・・・「そろそろこればっかり、作るのをやめさせなければ・・・・」
二人のランチバックにチョコチップクッキーの、詰まったジップロックをなんとか詰めこむと、ランチバックはパンパンになった
そして北斗は小さなメモに走り書きをして、ランチバックの上にペタッと張り付けた
「サッカー観戦を楽しんできなさい 」
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