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「――あの、理人さん何処へ行くんですか? 方向、逆なんじゃ……」
「……」
理人は答えず、ただ真っ直ぐ前だけを見て運転を続ける。その様子に不安を覚えた瀬名は恐る恐る尋ねた。
何処かへ連れて行こうとしているのは間違いない。けれど、行き先がわからない以上迂闊に口を挟めない。
何時しか車はどんどん人気も車の通りも少ない道へと入り込んでいく。
一体何処まで行くつもりなのだろうか? 不安は募るが、黙っているしかない。瀬名はキュッと唇を引き結ぶと、膝の上で拳を握った。
(大丈夫だ……。きっと目的地はあるはず)
自分に言い聞かせるように心の中で呟いたその時、車が急停車した事でガクンっと大きく車体が揺れ、瀬名は前の座席に頭をぶつけそうになった。
「――はぁ、やっぱ無理……」
「え。なに?」
ぼそりと理人が何か言った気がしたが、上手く聞き取れなかった。車のギアをパーキングに入れ、ハンドルに頭を擦り付けて盛大な溜息を吐いたかと思えば、突然シートベルトを外し理人が身を乗り出してくる。
「退院祝いに美味い寿司屋にでも連れて行ってやろうと思ったけど……もう、我慢できない」
「えっ、あ……ぅわっ!?」
レバーを引いて助手席のシートを倒し、驚いて目を丸くしている瀬名の上に跨るようにして覆いかぶさった。
咄嵯に身を引こうとした瀬名の身体を抑えつけ、理人の指先が頬に触れた。ずっと、触れ合いたいと思っていた体温がすぐ目の前にある。
ズボンの布越しにでもわかるくらいガチガチになった瀬名のソコに自分の腰を押し付けながら、理人半ば強引に唇を重ねた。
「ん……っ、ちょ、理人さ……っ」
舌先で歯列を割られ、ぬるりと侵入してきた熱い塊に瀬名は一瞬怯んだものの、すぐに理人に身を委ねて自らも積極的に舌を絡め始めた。
お互い貪るような激しいキスを交わしながら、理人は瀬名のシャツの中に手を忍ばせると素肌の上を滑らせるようにして胸元に触れる。
ビクリと身体を強張らせた瀬名だが、嫌がる事はなくむしろ誘うように足を絡ませて来た。
理人も応えるようにして更に深く口づけ、瀬名もそれを受け入れる。やがてどちらからともなく顔を離すと、互いの唾液が混じり合ったものが糸を引き、ぷつりと切れた。
「すっげ……ガチガチじゃねぇか。ゴリゴリ当たってんぞ」
「そりゃ、運転中も散々煽られて、焦らされて……こんな熱烈なキスされたら誰だってガン勃ちするでしょ」
言いながら瀬名の熱い手の平が理人の尻を撫でる。
「―――ッ、ふ……、そうか。なら、責任取らないとな……」
いうが早いかダッシュボードからローションを取り出すと瀬名のズボンと下着をずらし露になったそこにローションを垂らして塗り付けた。
ハッチバックを開けた車の荷室に腰を下ろし、背後にいる瀬名に身体を預けながら眼下に広がる景色を眺める。真っ赤な夕日と夕映えに輝く海と雲、そしてその奥に浮かび上がる高層ビル群のシルエットが辺り一面に幻想的な風景を作り出していた。 オレンジ色から濃い紫へと変化していく空を彩るのは、夜の始まりを告げる星々の煌めきだ。
「へぇ、凄いですね……」
普段目にしているものとは全く違う光景に瀬名は感嘆の声を上げ何処か嬉しそうに理人の肩に顎を乗せた。
あの後、ずっと行ってみたかったちょっとお高めの高級寿司屋で昼食を済ませ、海に向かって車を走らせ、この海沿いの街の名所でもある美しい公園へとたどり着いた。
海岸を見渡せる絶景のロケーション故に、夏休み前後には多くの若者で賑わっているこの場所も、流石にオフシーズンともなれば人もまばらでほぼ貸し切りのような状態になっている。
「僕、こういう景色嫌いじゃないです」
「そうか、良かった。俺、此処から見える景色が好きなんだ……。お前も海が好きだって言うし、いつかお前を連れてきたいと思ってたんだ」
「ん? 僕、理人さんに海が好きだって言った事ありましたっけ?」
不思議そうに首を傾げる瀬名に理人は一瞬言葉に詰まる。しまった、うっかりしていた。まさか東雲に頼んで身辺調査で得た情報だとは言えない。
「……っ、言ったじゃねぇか……忘れたのか?」
「んー? そうでしたっけ? でも、まぁ……嬉しいです。理人さんと一緒にこんな素敵な景色が見れて」
瀬名は少し考える素振りを見せたものの、特に不審に思った様子もなく、再び海の方を向いて眩しそうに目を細めた。
「……それにしても、理人さんダッシュボードの中にまでアダルトグッズ入れてるとかどんだけなんですか。夏場は暑くなっちゃうからローションが爆発しちゃわないですか?」
「べ、別に……っいつもあんなものを入れてる訳じゃない! 今日はたまたま……」
「たまたま? へぇ~? ふぅん? じゃぁやっぱり、最初から僕を襲う気だったんじゃないですか。理人さんのえっち」
「ち、違っ……そんなんじゃねぇっ」
慌てて否定するが、瀬名はニヤリと笑って理人を覗き込んだ。
「違う? じゃあなんであんなもの準備してたんですか?」
「そ、それは……その……っ襲う気なんて無かったんだ。全く期待していなかったと言えば、嘘になるが……」
瀬名の視線に耐えきれず、理人は顔を赤く染めて俯く。
恥ずかしい。穴があったら入りたい。
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